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第十四章
Let's go
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しばらくの時間が過ぎて、眠る頃になった。昨日と同じようにボクは先に寝室に行って、眠るフリをして。ボクは寝室を抜け出した。
小さなダクトがあった。ホコリまみれのそこを抜けると、研究所の廊下に出て。ボクは人目を気にしながら、あの二人を探した。
色々なお部屋があった。ガラス越しに、お部屋の様子が見えたんだけど。よくわからなかった。たくさんの機械や、たくさんの薬品。それに防護服を着た、何人もの研究員の人が居た。
「そう言えば、あの実験体はどうしたんだ? ホラ。今朝のマスターの」
誰かが話してた。だからボクは、こっそり聞き耳を立ててみる。
「シエラが持って行ったよ。何に使うのかは知らんが、物好きなものだ」
……シエラ。きっとあの女の子のことだ。
「ふーん……。せっかくなら俺が欲しかったな、動かないって丁度いいだろ」
「なんだ。お前もそういう趣味か?」
「好みなんだよあの顔。へへ……また滅茶苦茶にしてやりたいんだ」
男の人は、ヨダレを垂らしていた。それを見た瞬間、全身に鳥肌が立っていって。ボクはすぐにその場から離れた。少し離れて、人目につかない所で思い切り咳き込んだ。
「おえっ……かっ……」
なんとなく察していた。きっとここは、あの大人たちが居る場所なんだ。……ボクが牢屋に居た時に、ボクを虐めてきた奴。
こんな所に居たら駄目だ。あのシエラって子も、ボクにそっくりな子も。早く見つけなきゃ。
ボクは胃液を喉の奥に押し戻して、何とか踏ん張った。そのまま壁に手をつきながら進んで、お部屋を探してく。第二実験室、培養室、素体保管庫……。でもどのお部屋もあの二人が居そうにはない。全部嫌な感じがする。
「もしかして今は、寝てるかな……」
それでよく考えたら、今は夜時間だってことに気が付いて。ボクはここじゃなくて居住区を探してみることにした。
「シエラ……。シエラ……」
居住区に行ってみると、それぞれのお部屋にネームプレートがあった。ボクはそれを頼りにして探しているんだけど、中々見つからない。
「君、そこで何をしている」
「っ……!」
見つかったのはボクだった。曲がり道で、研究員の人と出くわしてしまった。
「子供……? 実験体か? 君、ナンバーは」
「な、ナンバー……?」
「……言えないのか? なるほど、ということは……」
そのメガネの人は、ジロジロとボクを見ている。あごに手を当てて、首を傾けながら。
「ここで何をしているんだ。誰かを探しているのか?」
「……。あの、その……。し、シエラっていう子を……」
「ああ彼か。彼ならこの先に居るよ。G-31地区だ」
「あ、ありがとうございます……」
ボクは身をすくめながら、その場を離れた。研究員の人はボクを捕まえたり、追ってくることはしなかったんだけど。何か妙に嫌な視線を感じた。
「……えっと、起きてますか……?」
そして数分後、ボクはシエラと書かれたネームプレートを発見した。息を整えて、ボクは扉をノックする。
「お前か。何か用か?」
意外なことに、扉は早く開いた。中からあの女の子が出て来て、ボクに声をかけた。……それで驚いちゃって、少し間が空いてから返事をする。
「あ、あの。……二人が、大丈夫か気になって……」
「あいつなら今は寝てるぞ。まあ、朝からずっとだけどな」
「そ、そうなんだ……」
……そのまましばらくは無言が続いた。もう会話が出てこなかった。
シエラは少し退屈そうに、壁にもたれかかってる。それで何かを言わなきゃと思って、ボクは何とか話題を探す。
「えっと。……君って、もしかして……。レオ、なの?」
「そうだぜ。まあちょっとばかしイメチェンしたけどな」
「……ちょっとどころじゃないと思うけど……」
あの時から気になってた。なんでかはわからないけど、もしかしてこの子はレオなんじゃないかって。なんというかこう、喋り方が似てる。見た目は全然違うんだけど。
「どうして、そうなったの?」
「怪我したんだよ。あの戦いでな。全身重症、全治数ヶ月さ。……まあ治療のついでってことで、整形してもらったのさ」
「あの戦い……?」
「ああ。……出来たらこの身体には、戻りたくなかったんだがな。まあ仕方ないさ」
ボクはシエラ、というか……レオの言ってることがわからなかった。あの戦いとか、怪我とか。いまいちよく理解出来ない。
「あんだ、その顔。俺になんかついてるか?」
「……」
「……もしかしてお前……。記憶が無いのか?」
ボクは首を傾げた。記憶が無いのかどうかすら、わからなかったから。
「なるほどな。シュバルツなりの気の使い方ってわけか。……どうせすぐに戻るってのに」
ずっと気になってたことがある。ずっと、あまり考えないようにしてたこと。それは、その……。ボクがどれくらい”眠ってた”のかってことだ。
ボクは確か、予知の頭痛で気絶したんだ。それで目を覚ましたら、マスターの治療を受けてた。……その間のことが、ずっと気がかりだった。
「ねえ。レオは……何か、知ってるの?」
考えるのが嫌だった。何か、嫌な気持ちがしていたから。……でももう、知らなきゃいけない。知らなきゃ、駄目な気がする。
「……なあ、世の中には知らなくて良い事もあるぜ。だからもし今から言うことを、受け止め切れねえなら。シュバルツに頼むといい。忘れさせてくれるからよ」
「……?」
「忘れるってのはいいもんさ。恨みも、悲しみも。全部洗い流してくれる。……時には、辛い現実なんかもな」
「ねえ、もったいぶらないでよ……。君は、何を知ってるの……?」
ボクはレオの腕を握った。するとレオは、少し苦々しそうにして。ため息をついて……。
「――お前、死んでんだよ。もうとっくの昔にな」
小さなダクトがあった。ホコリまみれのそこを抜けると、研究所の廊下に出て。ボクは人目を気にしながら、あの二人を探した。
色々なお部屋があった。ガラス越しに、お部屋の様子が見えたんだけど。よくわからなかった。たくさんの機械や、たくさんの薬品。それに防護服を着た、何人もの研究員の人が居た。
「そう言えば、あの実験体はどうしたんだ? ホラ。今朝のマスターの」
誰かが話してた。だからボクは、こっそり聞き耳を立ててみる。
「シエラが持って行ったよ。何に使うのかは知らんが、物好きなものだ」
……シエラ。きっとあの女の子のことだ。
「ふーん……。せっかくなら俺が欲しかったな、動かないって丁度いいだろ」
「なんだ。お前もそういう趣味か?」
「好みなんだよあの顔。へへ……また滅茶苦茶にしてやりたいんだ」
男の人は、ヨダレを垂らしていた。それを見た瞬間、全身に鳥肌が立っていって。ボクはすぐにその場から離れた。少し離れて、人目につかない所で思い切り咳き込んだ。
「おえっ……かっ……」
なんとなく察していた。きっとここは、あの大人たちが居る場所なんだ。……ボクが牢屋に居た時に、ボクを虐めてきた奴。
こんな所に居たら駄目だ。あのシエラって子も、ボクにそっくりな子も。早く見つけなきゃ。
ボクは胃液を喉の奥に押し戻して、何とか踏ん張った。そのまま壁に手をつきながら進んで、お部屋を探してく。第二実験室、培養室、素体保管庫……。でもどのお部屋もあの二人が居そうにはない。全部嫌な感じがする。
「もしかして今は、寝てるかな……」
それでよく考えたら、今は夜時間だってことに気が付いて。ボクはここじゃなくて居住区を探してみることにした。
「シエラ……。シエラ……」
居住区に行ってみると、それぞれのお部屋にネームプレートがあった。ボクはそれを頼りにして探しているんだけど、中々見つからない。
「君、そこで何をしている」
「っ……!」
見つかったのはボクだった。曲がり道で、研究員の人と出くわしてしまった。
「子供……? 実験体か? 君、ナンバーは」
「な、ナンバー……?」
「……言えないのか? なるほど、ということは……」
そのメガネの人は、ジロジロとボクを見ている。あごに手を当てて、首を傾けながら。
「ここで何をしているんだ。誰かを探しているのか?」
「……。あの、その……。し、シエラっていう子を……」
「ああ彼か。彼ならこの先に居るよ。G-31地区だ」
「あ、ありがとうございます……」
ボクは身をすくめながら、その場を離れた。研究員の人はボクを捕まえたり、追ってくることはしなかったんだけど。何か妙に嫌な視線を感じた。
「……えっと、起きてますか……?」
そして数分後、ボクはシエラと書かれたネームプレートを発見した。息を整えて、ボクは扉をノックする。
「お前か。何か用か?」
意外なことに、扉は早く開いた。中からあの女の子が出て来て、ボクに声をかけた。……それで驚いちゃって、少し間が空いてから返事をする。
「あ、あの。……二人が、大丈夫か気になって……」
「あいつなら今は寝てるぞ。まあ、朝からずっとだけどな」
「そ、そうなんだ……」
……そのまましばらくは無言が続いた。もう会話が出てこなかった。
シエラは少し退屈そうに、壁にもたれかかってる。それで何かを言わなきゃと思って、ボクは何とか話題を探す。
「えっと。……君って、もしかして……。レオ、なの?」
「そうだぜ。まあちょっとばかしイメチェンしたけどな」
「……ちょっとどころじゃないと思うけど……」
あの時から気になってた。なんでかはわからないけど、もしかしてこの子はレオなんじゃないかって。なんというかこう、喋り方が似てる。見た目は全然違うんだけど。
「どうして、そうなったの?」
「怪我したんだよ。あの戦いでな。全身重症、全治数ヶ月さ。……まあ治療のついでってことで、整形してもらったのさ」
「あの戦い……?」
「ああ。……出来たらこの身体には、戻りたくなかったんだがな。まあ仕方ないさ」
ボクはシエラ、というか……レオの言ってることがわからなかった。あの戦いとか、怪我とか。いまいちよく理解出来ない。
「あんだ、その顔。俺になんかついてるか?」
「……」
「……もしかしてお前……。記憶が無いのか?」
ボクは首を傾げた。記憶が無いのかどうかすら、わからなかったから。
「なるほどな。シュバルツなりの気の使い方ってわけか。……どうせすぐに戻るってのに」
ずっと気になってたことがある。ずっと、あまり考えないようにしてたこと。それは、その……。ボクがどれくらい”眠ってた”のかってことだ。
ボクは確か、予知の頭痛で気絶したんだ。それで目を覚ましたら、マスターの治療を受けてた。……その間のことが、ずっと気がかりだった。
「ねえ。レオは……何か、知ってるの?」
考えるのが嫌だった。何か、嫌な気持ちがしていたから。……でももう、知らなきゃいけない。知らなきゃ、駄目な気がする。
「……なあ、世の中には知らなくて良い事もあるぜ。だからもし今から言うことを、受け止め切れねえなら。シュバルツに頼むといい。忘れさせてくれるからよ」
「……?」
「忘れるってのはいいもんさ。恨みも、悲しみも。全部洗い流してくれる。……時には、辛い現実なんかもな」
「ねえ、もったいぶらないでよ……。君は、何を知ってるの……?」
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