118 / 139
第十六章
A New house
しおりを挟む
そこからはアッサリしていた。中に乗り込んでいくと、箱舟は動き出して。空を飛んだ。それだけだった。
窓から外を見た。……ボロボロになった庭園に、傷ついた人たちが倒れてて。その中心にマスターが立っているのが見えた。
ボクは椅子に座った。少し揺れる中、ボクはずっとシロの手を握ってて。――ふと気が付いた。ボクはマスターとだけじゃなく、皆とお別れしたんだって。
悲しくなった。……でも、受け入れるしかなかった。だってそれが、ボクの選んだ道なんだから。ボクの、選んだ道……。
「あ……」
シロが涙を拭ってくれた。シロの優しい笑顔が、ボクの心を和らげてくれてる気がして。……ボクたちは、もう一度キスをした。
ここは部屋だった。よくわからないけど、ボクたちのために用意されたみたいで。ベッドが一つと、椅子が二つ。窓が一つに、扉が一つ。少し狭いけど、あの牢屋よりは快適なのは間違いない。
「……これから、どうするの?」
ボクはシロに聞いた。箱舟はどこかに向かって飛んでるらしいから、それが気になって。
「基地を作るんだよ。あいつらが外に住めるように」
「……外」
確か外の世界は、汚染が進んでるから普通の人は住めない。住めるのはボクたちみたいな生き物や、特殊な装備が必要になるはず。
……そうか。この箱舟には、その装備があるんだ。だからこんなに大きい。外の世界で生きるために、必要……。
「お邪魔するわよ、クロ」
すると、部屋にメアが入ってきた。……ノックも無しに、ずかずかと。
「ちょっと一緒に来てもらえるかしら? やってもらいたいことがあるのよね」
「……」
ボクは目を背けていた。メアの所には来たけど、それはメアのためじゃなかったから。……でも。
「クロ、行こう」
「え……?」
「大丈夫。……ほら」
シロが手を握っていた。優しい目で、ボクを見てて。だからボクはシロについていくことにした。
廊下に出ると何人かの兵隊が居た。全員が武装してて、とても怖くて。……それでもどこか、弱さが感じ取れる人たちばかり。きっとこの人たちは、ボクよりも弱い。
「っ……」
嫌だった。贅沢だけど、嫌だった。……”あの日”以来、ずっとボクは、自分の中にある力が怖くて。それに怯え続けてる。
「へへ。メアさんよ、そいつが例の子供かい」
すると、ボクたちの前に誰かが出てきた。ナイフを持った、髪の長い男の人。その人はナイフを手で遊ばせながら、話しかけてきた。
「へー。意外と可愛い顔してるじゃねえの。どう? 今晩オレと」
「……。それって、ボク……?」
「そうそう。オレァ可愛い子には差別しないよ? 飯もおごっからよ」
誰も何も言わなかった。メアも、シロも。……多分知っていたからだと思う。もうボクを守る必要が、ないってことを。
「へへ……。あ、ああ? ――ああ!?」
「……こんなボクでも、受け入れてくれるの?」
ボクはその人から、ナイフを取り上げた。取り上げて、曲げて、へし折った。――手も触れずに。きっとその人からしたら、急にナイフが宙に浮いて、勝手に折れたように見えただろう。
ボクは力を使えるようになっていた。繊細なコントロールも出来る。……だからボクたちを見ていた兵隊の人たちから、銃を奪うことも。簡単なことだった。
「……ま、マジかよ」
ボクは奪った銃を、その人に向けた。今この場の空中には、沢山の銃が浮いていて。そしてその銃口は全て、その人に向かっている。
自信があった。例えこの場に居る人たちが、全員ボクの敵だとしても。……きっとボクは、負けることが出来ない。
「……ごめんね」
ボクは銃を捨てた。そして皆の目を見た。……好奇心とか、恐怖とか。色々な目があったけど、やっぱり大半は……化け物を見る目で。
……これでもう、誰もボクに近づかないだろう。ボクは視線を背中に感じながら、メアの後を追いかけ続けた。
窓から外を見た。……ボロボロになった庭園に、傷ついた人たちが倒れてて。その中心にマスターが立っているのが見えた。
ボクは椅子に座った。少し揺れる中、ボクはずっとシロの手を握ってて。――ふと気が付いた。ボクはマスターとだけじゃなく、皆とお別れしたんだって。
悲しくなった。……でも、受け入れるしかなかった。だってそれが、ボクの選んだ道なんだから。ボクの、選んだ道……。
「あ……」
シロが涙を拭ってくれた。シロの優しい笑顔が、ボクの心を和らげてくれてる気がして。……ボクたちは、もう一度キスをした。
ここは部屋だった。よくわからないけど、ボクたちのために用意されたみたいで。ベッドが一つと、椅子が二つ。窓が一つに、扉が一つ。少し狭いけど、あの牢屋よりは快適なのは間違いない。
「……これから、どうするの?」
ボクはシロに聞いた。箱舟はどこかに向かって飛んでるらしいから、それが気になって。
「基地を作るんだよ。あいつらが外に住めるように」
「……外」
確か外の世界は、汚染が進んでるから普通の人は住めない。住めるのはボクたちみたいな生き物や、特殊な装備が必要になるはず。
……そうか。この箱舟には、その装備があるんだ。だからこんなに大きい。外の世界で生きるために、必要……。
「お邪魔するわよ、クロ」
すると、部屋にメアが入ってきた。……ノックも無しに、ずかずかと。
「ちょっと一緒に来てもらえるかしら? やってもらいたいことがあるのよね」
「……」
ボクは目を背けていた。メアの所には来たけど、それはメアのためじゃなかったから。……でも。
「クロ、行こう」
「え……?」
「大丈夫。……ほら」
シロが手を握っていた。優しい目で、ボクを見てて。だからボクはシロについていくことにした。
廊下に出ると何人かの兵隊が居た。全員が武装してて、とても怖くて。……それでもどこか、弱さが感じ取れる人たちばかり。きっとこの人たちは、ボクよりも弱い。
「っ……」
嫌だった。贅沢だけど、嫌だった。……”あの日”以来、ずっとボクは、自分の中にある力が怖くて。それに怯え続けてる。
「へへ。メアさんよ、そいつが例の子供かい」
すると、ボクたちの前に誰かが出てきた。ナイフを持った、髪の長い男の人。その人はナイフを手で遊ばせながら、話しかけてきた。
「へー。意外と可愛い顔してるじゃねえの。どう? 今晩オレと」
「……。それって、ボク……?」
「そうそう。オレァ可愛い子には差別しないよ? 飯もおごっからよ」
誰も何も言わなかった。メアも、シロも。……多分知っていたからだと思う。もうボクを守る必要が、ないってことを。
「へへ……。あ、ああ? ――ああ!?」
「……こんなボクでも、受け入れてくれるの?」
ボクはその人から、ナイフを取り上げた。取り上げて、曲げて、へし折った。――手も触れずに。きっとその人からしたら、急にナイフが宙に浮いて、勝手に折れたように見えただろう。
ボクは力を使えるようになっていた。繊細なコントロールも出来る。……だからボクたちを見ていた兵隊の人たちから、銃を奪うことも。簡単なことだった。
「……ま、マジかよ」
ボクは奪った銃を、その人に向けた。今この場の空中には、沢山の銃が浮いていて。そしてその銃口は全て、その人に向かっている。
自信があった。例えこの場に居る人たちが、全員ボクの敵だとしても。……きっとボクは、負けることが出来ない。
「……ごめんね」
ボクは銃を捨てた。そして皆の目を見た。……好奇心とか、恐怖とか。色々な目があったけど、やっぱり大半は……化け物を見る目で。
……これでもう、誰もボクに近づかないだろう。ボクは視線を背中に感じながら、メアの後を追いかけ続けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる