崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十六章

arrival

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 よくわからなかった。でもボクは、間違ったことをしてしまったとは思えない。直観的というかなんというか、そういうあれで。
 シロが怖がっている。だからボクは、シロを少し無理矢理にでも抱きしめて。なんとか落ち着いてもらおうとしていた。
『ゴウウゥ……ン……』
 その時だった。船全体が大きく揺れて、振動音が響いた。多分どこかに着陸したんだろう、辺りに居た人たちが慌ただしくしてる。
「着いたみたいね。さあ、ついてきて。案内するわ」
 先生はまたボクたちを連れてどこかへ行こうとした。でももう、そんな気にはなれなくて。ボクたちは一緒に自分のお部屋に向かって走り出す。
「あっ、待って!」
 振り返らなかった。ボクたちは一心に走った。……もう誰にも会いたくない。少なくとも今日だけは。きっとその気持ちは、シロも一緒だったんだと思う。
 お部屋に戻ると、ボクは鍵をかけて閉じこもった。外から扉を叩く音がしたけど、無視して。ボクたちはお部屋の隅で小さく抱き合った。
「……誰も信用できない。あのドクターも、他の人間も。本当ならこんな所、来るべきじゃなかった」
「シロ……」
「でも外に出るには、これしか方法が無かった。ごめん、クロ……」
 シロはずっと、あの施設から逃げたがっていた。ボクに出会うずっと、ずっと前から。……でも逃げるための方法が、これしかなかったなんて。
 でももう関係ない。なんにせよ、とにかく逃げられたんだ。これからはずっと、ボクがシロを……。
『ゲギャアーーーーッッッ!!!!』
「わああっ!?」
 瞬間、窓に何かが張り付いた。何か黒い影みたいなのが、窓枠いっぱいにべったりと。
『ゲゲゲギャゴガギガ!!! ゲガ!!』
「な、何……!? カエル!?」
 それはカエルだった。とても大きなカエルが、窓を割って入ってこようとしている。かなり狂暴になっているみたいで、何度も窓を攻撃していた。
「……大丈夫。この船はこれくらいじゃ壊れないから」
 ボクはカエルの隙間から、窓の外を見た。そこには同じようなカエルが、何百匹も居て。この船を襲っているみたいだった。
 ……ボクは理解した。これが、人間が外で生きられない理由。今の生態系の頂点は、人間じゃない。この大量の生き物たちだから。
「きっと今頃、保安隊が戦ってる頃だよ。……こいつらはそっちに任せたらいい。それから外に出よう」
「……うん。でも、本当に大丈夫なの? シロはまだ……」
「大丈夫だから。さあ、準備しよう」
 シロはそう言うと、お部屋にある使えそうな物をかき集めた。コップとかの日用品や、水筒代わりになりそうなもの。それからテーブルに置いてあった缶詰。
 もうここに居る必要は無い。ボクが居れば、シロも外で生きていける。ようやく嫌な人たちから離れられるんだ。
『待って二人とも! まだ外は早い! 予防接種も完璧なものじゃないの!』
「うるさい! お前の言うことなんて誰が聞くか!」
『さっきはあの方法しかなかったの! 怪しまれずに薬を飲ませるなんて、それしかなかった!』
「……薬?」
 ふと、ボクは思い出した。さっき飲んだ精液に混ざってた、妙な苦み。……あれは確か、何かの薬特有の苦みだった。マスターと居た時に何度か飲んだことがある。
「待ってシロ、もしかして先生は……」
「行こう! あんな奴無視だ!」
 でもシロは聞いてくれなくて、扉を蹴飛ばすように廊下に出た。扉が開くときに先生に当たったみたいで、先生は床に倒れていたけれど。ボクはそれを介抱する間もないままシロに手を引っ張られていた。
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