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第十六章
Escape
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ボクは走りながら後ろを見た。ボクたちに気が付いた警備の人が、何人も追いかけて来てる。その中には見覚えのある人たちも居て、少し気まずくて。
それでも、もう止まれなかった。ボクにはシロを止めることが出来なかった。シロが今日までに受けた仕打ちを考えたら、今すぐにでも逃げ出したいはずだから。
「外に行けば隠れる場所は幾らでもある。あいつらだって、そう簡単に見つけられないよ」
「……うん。そうだね」
ボクは腹をくくった。あの力を使ってでも、シロと逃げると決めた。――その覚悟の現れとして、ボクは久しぶりに……未来を見た。
「左に逃げよう、シロ」
「わかった!」
ボクたちは十字路に差し掛かった。予知によると、正面と右から何人かが来るらしかったので。ボクは左に逃げた。
もう頭痛はしない。きっとマスターに何かされたんだろう、前よりも扱うのが上手になっている。……あまり良い事ではないんだろうけど。
とにかくそれからは簡単だった。どこから人が来るかが手に取るようにわかるので、一度も捕まることはなくて。あっという間にボクたちは非常用の出口に辿り着いた。
「ちょっと待って、これを開けるには……」
シロが扉を開けている間、ボクは背後の通路を見張っていた。どんな人が来ようと、誰が襲おうと。全力でシロを守る。
「う……」
でもそう上手くはいかないみたい。今ボクは、新しい予知を見た。それによるとボクたちは、数秒後……。死んでいた。
「駄目、シロ。ここは罠……」
「え?」
ボクはシロを手を掴んで、扉の上の方を見た。……陰になっているけど、小さなセンサーみたいなものが取り付けられている。そしてそのセンサーが繋がっているのは、”爆弾”だった。
「きっとメアの仕業だ。ボクたちが逃げれないように、仕掛けてるんだよ」
「クソッ、あのアバズレ……。仕方ない。他の場所を探そう」
「無理だよ。きっと他の場所も同じだ。……逃げるなら、ボクの力を使わないと」
ボクがその言葉を言った時、シロは悲しそうな顔をした。きっと”あの時”のことを思い出したんだろう、とても不安そうで。
でもその必要はない。なぜかわからないけど、ボクには妙な確信があった。ボクはもうあの時のように、自分を見失ったりしない。もう自分の力を暴走させる心配もない。
「ボクに任せて。シロ」
ボクはシロを離れさせて、近くにあった壁に手をついた。そして大きく息を吸って、集中して。手のひらの先に思い切り力を籠める。
マスターがドラゴンを、殺した時みたいに。ボクがあの時殺した、人たちみたいに。この目の前の壁も壊せばいい。ボクにはそれが出来る。
「……」
頑丈なはずの壁が、メキメキと音を立てていく。ゆっくりと押し潰されるように、歪んでいく。……やがて壁に亀裂が入って、大きな音と共に砕け散った。
壁に穴が開いた。まるで爆弾で壊したみたいな、破壊の痕。外の生臭い空気が入ってきて、思わずボクたちはむせ返ったけど。ボクは嬉しかった。
「さあ、行こう。シロ。これでもうボクたちは……」
「そうはいかないわ」
その時だった。聞き覚えのある声で、ボクは思わず後ろを向く。
「……メア」
「忘れたのかしら? そのシロの首にある、チョーカー。貴方が船を離れればどうなるか、わかるわよね」
ボクはシロの首を見た。メアの言う通り、シロの首にはチョーカーがある。やっぱりこれはそういうやつだったんだ。
「戻りなさい。クロ。今ならその壁のことは、怒らないであげる」
「……嫌だ。メアの所に居たら、シロはもう……」
ボクはメアの前に立った。こうなればボクは、もう手段を選べなかった。メアを脅して、なんとかチョーカーを外させる。そう思っていた。
「大丈夫だよ。クロ」
「え?」
でもシロは、なぜか平気そうな顔をしていた。……何か作戦があるみたい。
「このチョーカーは親機から一定距離離れることによって、爆発する。そうなんだろ?」
「ええ」
「だったらその親機を持って行けばいい話じゃないか。簡単な話だ」
するとメアは、少しキョトンとして。思い切り笑う。
「面白いわね! じゃああなたにはそれの場所がわかるのかしら!? この広い船の中のどこにあるのか、わかるのかしら!」
「お前だろ」
「はは……。え?」
「お前が持ってんだろ。そんな大切なもの、お前がどっかに放置しとくわけがないよな」
「……チッ。面白くないわ。で、どうするつもり? アタシをバラバラに解剖して、持っていくのかしら?」
メアは不満そうに壁に背をついている。ボクはシロがメアをどうするつもりなのか、予知で察していた。でもそれはあまりいい選択だとは思えなくて。
「僕たちと来い。メア」
それでも、もう止まれなかった。ボクにはシロを止めることが出来なかった。シロが今日までに受けた仕打ちを考えたら、今すぐにでも逃げ出したいはずだから。
「外に行けば隠れる場所は幾らでもある。あいつらだって、そう簡単に見つけられないよ」
「……うん。そうだね」
ボクは腹をくくった。あの力を使ってでも、シロと逃げると決めた。――その覚悟の現れとして、ボクは久しぶりに……未来を見た。
「左に逃げよう、シロ」
「わかった!」
ボクたちは十字路に差し掛かった。予知によると、正面と右から何人かが来るらしかったので。ボクは左に逃げた。
もう頭痛はしない。きっとマスターに何かされたんだろう、前よりも扱うのが上手になっている。……あまり良い事ではないんだろうけど。
とにかくそれからは簡単だった。どこから人が来るかが手に取るようにわかるので、一度も捕まることはなくて。あっという間にボクたちは非常用の出口に辿り着いた。
「ちょっと待って、これを開けるには……」
シロが扉を開けている間、ボクは背後の通路を見張っていた。どんな人が来ようと、誰が襲おうと。全力でシロを守る。
「う……」
でもそう上手くはいかないみたい。今ボクは、新しい予知を見た。それによるとボクたちは、数秒後……。死んでいた。
「駄目、シロ。ここは罠……」
「え?」
ボクはシロを手を掴んで、扉の上の方を見た。……陰になっているけど、小さなセンサーみたいなものが取り付けられている。そしてそのセンサーが繋がっているのは、”爆弾”だった。
「きっとメアの仕業だ。ボクたちが逃げれないように、仕掛けてるんだよ」
「クソッ、あのアバズレ……。仕方ない。他の場所を探そう」
「無理だよ。きっと他の場所も同じだ。……逃げるなら、ボクの力を使わないと」
ボクがその言葉を言った時、シロは悲しそうな顔をした。きっと”あの時”のことを思い出したんだろう、とても不安そうで。
でもその必要はない。なぜかわからないけど、ボクには妙な確信があった。ボクはもうあの時のように、自分を見失ったりしない。もう自分の力を暴走させる心配もない。
「ボクに任せて。シロ」
ボクはシロを離れさせて、近くにあった壁に手をついた。そして大きく息を吸って、集中して。手のひらの先に思い切り力を籠める。
マスターがドラゴンを、殺した時みたいに。ボクがあの時殺した、人たちみたいに。この目の前の壁も壊せばいい。ボクにはそれが出来る。
「……」
頑丈なはずの壁が、メキメキと音を立てていく。ゆっくりと押し潰されるように、歪んでいく。……やがて壁に亀裂が入って、大きな音と共に砕け散った。
壁に穴が開いた。まるで爆弾で壊したみたいな、破壊の痕。外の生臭い空気が入ってきて、思わずボクたちはむせ返ったけど。ボクは嬉しかった。
「さあ、行こう。シロ。これでもうボクたちは……」
「そうはいかないわ」
その時だった。聞き覚えのある声で、ボクは思わず後ろを向く。
「……メア」
「忘れたのかしら? そのシロの首にある、チョーカー。貴方が船を離れればどうなるか、わかるわよね」
ボクはシロの首を見た。メアの言う通り、シロの首にはチョーカーがある。やっぱりこれはそういうやつだったんだ。
「戻りなさい。クロ。今ならその壁のことは、怒らないであげる」
「……嫌だ。メアの所に居たら、シロはもう……」
ボクはメアの前に立った。こうなればボクは、もう手段を選べなかった。メアを脅して、なんとかチョーカーを外させる。そう思っていた。
「大丈夫だよ。クロ」
「え?」
でもシロは、なぜか平気そうな顔をしていた。……何か作戦があるみたい。
「このチョーカーは親機から一定距離離れることによって、爆発する。そうなんだろ?」
「ええ」
「だったらその親機を持って行けばいい話じゃないか。簡単な話だ」
するとメアは、少しキョトンとして。思い切り笑う。
「面白いわね! じゃああなたにはそれの場所がわかるのかしら!? この広い船の中のどこにあるのか、わかるのかしら!」
「お前だろ」
「はは……。え?」
「お前が持ってんだろ。そんな大切なもの、お前がどっかに放置しとくわけがないよな」
「……チッ。面白くないわ。で、どうするつもり? アタシをバラバラに解剖して、持っていくのかしら?」
メアは不満そうに壁に背をついている。ボクはシロがメアをどうするつもりなのか、予知で察していた。でもそれはあまりいい選択だとは思えなくて。
「僕たちと来い。メア」
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