崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十六章

New companion

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 あまり驚きはなかった。なぜかはわからないけど、ボクはこの出来事のことを知っている気がした。無意識に予知を使っていたのか、ただのデジャヴなのかはわからないけど。とにかく今この場で驚いていたのは、メアだけだった。
「……何を言っているのかわからないわ。アタシを連れて行く? そんなバカな話、ありえないわね」
 冷や汗が出ている。メアの腕が少し震えている。冷静を装っているけど、間違いない。
「いいから来い。お前が居ないと爆発するんなら、連れて行くしかないじゃないか」
 でもわからない。どうしてシロは、メアを連れて行くなんて言えるんだろう。もちろんそれしか無いのはわかるけど、シロはメアに嫌なことをされてきたはずなのに。
 ……きっと多分、ボクの知らない何かがあったんだ。シロとメアの間に、何かが。仲が良くなったっていうわけではなさそうだけど、きっと何かが。
「こんな時まで冗談はやめてよ。何のためにアタシが、ここまで準備してきたと思ってるの? ここまで時間をかけて、ようやく箱舟を手に入れたってのに」
「そんなのどうでもいいだろ。……僕はただ、お前が近くに居ないと死ぬから言ってるだけだ。僕たちについてくる理由なんて、お前が勝手に決めたらいいじゃないか」
「……」
「隊長!」
 その時だった。駆け付けた警備兵が、ボクたちを取り囲む。
「遅くなりました。拘束具の準備は整っています」
「……そうか」
 警備兵は全員、何か妙な武器を持っている。今までに見たことがないものだけど、何だかすごく嫌な感じで。
「……シロ。どうするの? このままじゃ……」
「クロ」
「え?」
「……シロを、死なせたくない?」
 それは当たり前の質問だった。答えは最初から決まっていたけど、何か怖くて。ボクは少し間を開けてから頷く。
「そう。わかった」
 ボクの返事を見たメアは、ポケットから小さな銃を取り出した。ゆっくりと腕を伸ばして、銃口を……仲間の方に向けた。
「隊長!? 何を――」
 そこからはあまりにも呆気なかった。まるでハエを叩き落とすように、仲間達を殺していって。その場に何人もの死体が積み重なっていく。
 ……そして最後の一人を殺すと、メアは銃を捨てた。仲間達を踏みつけながら、ボクの前に来て。ボクの目をじっと見つめる。
「綺麗な瞳だわ。まだ希望を夢見ている、幼い眼。……それもどうせ、いつか汚れていく」
「メア……?」
「なら、それなら。せめてアタシが汚したい。ドロドロになるまで、ぐちゃぐちゃになるまで。一つ残らず……」
「う……」
 近い。メアの顔をこんなに近くで見たのは初めてだ。……綺麗な顔だけど、どこか暗くて。まるで闇の底のような目をしてる。
 どうしてだろう。今まで考えたことなかったけど、なんでメアはボクに固執するんだろう。出会ったのは数ヶ月前なのに……。
「いいわ。一緒に行きましょ。あなたと一緒ならどこでも構わない。地の底だって、地獄だってね」
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