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第十七章
Break time
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数日前。ボクたちが箱舟から逃げる時、メアはお姉さんと会っていた。それはボクからしたら、とても意外で。でもなぜかはわからないけど、妙に納得がいく人だった。
「……マカ先生」
「全く。精液に薬を混ぜて、それを飲ませるなんて。姉さんらしいけど他にやり方なかったのかしら」
――病気。外の世界で一番怖いのは、それらしい。いくら肉体が強くても、病気には誰も敵わない。
先生があの時ボクたちに飲ませたのは、それを予防するための薬だった。なんでも、”あの方法しかなかった”らしいけど……。
『あなたたちが外へ行くというなら、もう止めはしない。でもこれだけは覚えておいて。……絶対に、強く生きるのよ』
箱舟から逃げる時、ボクたちは追手に追われていた。その追手に対してマカ先生が立ちはだかって、ボクたちを逃がしてくれた。
その時に先生が言った言葉。それがずっと頭の中で響いている。確かにボクたちは、外で生きることを選んだ。でもそれが正しかったのかは、まだわからない。
「上層部の連中はきっと、まだ追跡を続けてる。あなたたちが切り札だから、絶対に手放したくないはずよ」
「……上層部?」
「シュバルツの地位を狙ってるクソ共よ。アタシの前の上司。って、それはどうでもいいのよ。それよりこれからどこへ行くか、当てはあるの?」
ボクはシロを見た。今日までの道のりは、シロが決めてくれていたから。今回もそうだと思って、油断していた。
「クロの行きたい所に行こう。クロは、どこが気になる?」
「え……」
「僕達ならどこへでも行ける。海でも、山でも。どこに行きたい?」
ボクは焦ってしまった。今までどこかに行きたいなんて、あまり思ったことが無かったから。
それにボクは、シロの隣であればどこでもよかった。皆も居て欲しいけど、それだけは間違いなくて。だから答えるのに、しばらく時間がかかってしまった。
「じゃあ、あそこに行きたい」
「あそこ?」
ボクは目の前を指さした。……視界いっぱいに広がる、荒廃した街並み。それらをずっとずっと奥に行った先にある、地平線の向こうを。
「きっとあの先には、何かがあると思う。わかんないけど、きっと……。きっとここより良い場所が、どこかにある」
ボクは少しだけ怖かった。この先に何があるのか、わからないから。でもそれよりももっと大きな、探求心みたいなのが出て来ていることがわかった。
シロに言われて、ボクはようやく何がしたいのかを考えた。それで出てきたのは、皆を幸せにしたいことだった。だとすれば最初にしてみることは……。皆が住める場所だと思って。
「フフ、素敵じゃない? 地平線の向こうに行こうだなんて。今時のクソみたいな男はそういうこと言わないわ」
するとメアは、ボクの左腕にギュッと抱きつく。
「いいわ、賛成。こんな寒い所じゃあすることも出来ないし、とっとと行きましょうよ」
「……メア」
それはボクが見た、初めての笑顔だったかもしれない。余計な感情が混ざってない、純粋な笑顔。こんな顔メアでも出来るんだと思って、ボクは少し恥ずかしくなって。それを誤魔化そうとして、無理にスープを飲み込んだ。
「クロをからかうなよ。そういうのは違うんだから」
「何も違わないわ。アタシとシロの勝負は、まだ終わってないんだし」
「……。はあ。まあいいや。じゃあ太陽が昇ったら、向こうに行ってみよう。向こうに希望があることを祈ってね」
「……マカ先生」
「全く。精液に薬を混ぜて、それを飲ませるなんて。姉さんらしいけど他にやり方なかったのかしら」
――病気。外の世界で一番怖いのは、それらしい。いくら肉体が強くても、病気には誰も敵わない。
先生があの時ボクたちに飲ませたのは、それを予防するための薬だった。なんでも、”あの方法しかなかった”らしいけど……。
『あなたたちが外へ行くというなら、もう止めはしない。でもこれだけは覚えておいて。……絶対に、強く生きるのよ』
箱舟から逃げる時、ボクたちは追手に追われていた。その追手に対してマカ先生が立ちはだかって、ボクたちを逃がしてくれた。
その時に先生が言った言葉。それがずっと頭の中で響いている。確かにボクたちは、外で生きることを選んだ。でもそれが正しかったのかは、まだわからない。
「上層部の連中はきっと、まだ追跡を続けてる。あなたたちが切り札だから、絶対に手放したくないはずよ」
「……上層部?」
「シュバルツの地位を狙ってるクソ共よ。アタシの前の上司。って、それはどうでもいいのよ。それよりこれからどこへ行くか、当てはあるの?」
ボクはシロを見た。今日までの道のりは、シロが決めてくれていたから。今回もそうだと思って、油断していた。
「クロの行きたい所に行こう。クロは、どこが気になる?」
「え……」
「僕達ならどこへでも行ける。海でも、山でも。どこに行きたい?」
ボクは焦ってしまった。今までどこかに行きたいなんて、あまり思ったことが無かったから。
それにボクは、シロの隣であればどこでもよかった。皆も居て欲しいけど、それだけは間違いなくて。だから答えるのに、しばらく時間がかかってしまった。
「じゃあ、あそこに行きたい」
「あそこ?」
ボクは目の前を指さした。……視界いっぱいに広がる、荒廃した街並み。それらをずっとずっと奥に行った先にある、地平線の向こうを。
「きっとあの先には、何かがあると思う。わかんないけど、きっと……。きっとここより良い場所が、どこかにある」
ボクは少しだけ怖かった。この先に何があるのか、わからないから。でもそれよりももっと大きな、探求心みたいなのが出て来ていることがわかった。
シロに言われて、ボクはようやく何がしたいのかを考えた。それで出てきたのは、皆を幸せにしたいことだった。だとすれば最初にしてみることは……。皆が住める場所だと思って。
「フフ、素敵じゃない? 地平線の向こうに行こうだなんて。今時のクソみたいな男はそういうこと言わないわ」
するとメアは、ボクの左腕にギュッと抱きつく。
「いいわ、賛成。こんな寒い所じゃあすることも出来ないし、とっとと行きましょうよ」
「……メア」
それはボクが見た、初めての笑顔だったかもしれない。余計な感情が混ざってない、純粋な笑顔。こんな顔メアでも出来るんだと思って、ボクは少し恥ずかしくなって。それを誤魔化そうとして、無理にスープを飲み込んだ。
「クロをからかうなよ。そういうのは違うんだから」
「何も違わないわ。アタシとシロの勝負は、まだ終わってないんだし」
「……。はあ。まあいいや。じゃあ太陽が昇ったら、向こうに行ってみよう。向こうに希望があることを祈ってね」
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