崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

文字の大きさ
126 / 139
第十七章

A small step.

しおりを挟む
 数時間後、朝日が出た。東からゆっくりと昇ってくる、大きな電球みたいなもの。ボクは最初にこれを見た瞬間、思わず世界が終わるのかと思ってしまったことがある。
 でも気が付いてみると、今はもうこの暖かさに身をゆだねていて。恐怖みたいなのは無くなっていた。……機械の光じゃ味わえない、自然の暖かみ。ボクはこれだけでも、外に住む十分な理由があると思う。
「さあ、出発だ! 行こうクロ!」
「うん……!」
 ボクたちは廃墟の屋上から、隣の建物に飛び移る。雪がクッションになってくれるから、怖くなくて。思い切り心地よくジャンプした。
 楽しい。少なくとも今は、その気持ちでいっぱいだ。雪に自分たちの足跡がつくのが、息が白くなるのが。そしてこの気持ちを、共有できるのが。
 ボクは太陽の登る方に向かって走っている。あの太陽の向こうに、何があるのか。それも知りたかったし、見てみたい。きっとこの世界のどこかに、希望はあるはずだから。
「あ、ねえ。アレは何かな?」
 ふとボクは、建物同士の隙間からとあるモノを見つけた。それはとても高い塔で、でもなんだか脆そうで。
「ああ。あれは電波塔よ。昔はあれでテレビなんかの電波を送っていたの」
「へえー……。じゃあ、アレは?」
「あれはミサイルね。あんな地面に突き刺さったまま残ってるなんて、滅多にないわ」
 最近思った。メアはボクよりも色々なことを知っている。シロも沢山のことを知っているけど、メアには敵いそうになくて。
「フン。クロ、あっちに行こう! あっちの方が景色が綺麗だから!」
 そうしてボクがメアのことを考えていると、シロが止めてくる。その様子がとても嬉しいような、可愛いような。複雑な気持ち。
 幸せだ。後悔が無いわけじゃないけど、やっぱりどうしても幸せで。夜になるとどうしても考え込んでしまうから、ボクはずっと朝がいい。
 ボクたちは歩き続けた。お昼になってお腹が空いた頃、少し休憩して。また歩き続けた。見るもの全てが新鮮なもので溢れてて。歩けば歩くほど知らないものに出会えた。
「……あ」
 そしてこれも、そのうちの一つ。外に出て見てきたものの中で、一番変で珍しかったもの。これは、まるで。あの箱舟のような。
「――宇宙船よ。まあ簡単に言ってしまえばね。かつての人類は、これでこの星から逃げようとしたの」
 お墓みたいだった。すごく広い大地の上に、無数に転がる宇宙船。そしてシロはこの様子を、”船の墓場”って例えた。
 沢山あった。でもそのどれもがボロボロで。横に穴が開いていたり、攻撃を受けた跡が残ってたり。何かがあったことは見るだけでわかる。
「シュバルツの箱舟は、永住可能な船として作られているわ。人類の英知を集めて作られた、最高の船。人類に残された、最後の希望……」
「まだそんなことを。忘れろよ、もうどうでもいいじゃないか」
「そうでもない。あいつらにはあの船がある。あれがある限り、奴らは私たちをどこまでも追って来られるわ。ジリ貧なのは私たちの方よ」
 メアとシロは真剣な顔をしている。だから不思議だった。この状況を簡単に考えていたのは、ボクだけみたいだったから。
「対抗策が居る。この先に進むにしても、何かが必要よ。いつまでもクロの能力に頼ってはいられないわ」
「……対抗策?」
「考えがある。ちょっと、寄り道しましょ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...