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第十七章
After that
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雪が、止んでいる。その事に気が付いたのは、全てが終わってからしばらくしてからだった。
……星空が綺麗だ。珍しく雲が一つもなくて、空気も澄み切っている。こんな日が来るのは、すごく珍しいことだ。
ボクは空を見ながら、お腹をさすった。それで濡れた感触がしたから、手を見てみると。血と精液が混ざった何かが、ボクの手のひらについていた。
「シロ……」
ボクは横目で、シロを見てみる。気持ちよさそうに寝ているけど、お洋服がはだけているから、寒そうで。ボクはそれを整えてから、シーツを着せてあげた。
「う……」
その時だった。ボクのお尻の辺りに、激痛が走る。それで自分のお洋服をめくってみると、アザでいっぱいの下半身が見えた。
シロの手の痕。それに、噛み痕。殴られたとかじゃないけど、シロの想いが、ボクの身体に傷として残ってる。それは嬉しいんだけど、やっぱり少し複雑で。
「もう、戻らないのかな……?」
もしかしたら、今ボクが耐えられてるのは、いつかそれが来ると信じているからかもしれない。いつかまた、二人で優しく抱き合える日が。来るのかもって。
……でも、きっと来ない。シロはもう、前のようにはなれない。多分色々なことを知っちゃったから。だってそれは、ボクも同じだから。
「そう言えば、メアはどうしたんだろう」
ボクはふと立ち上がって、辺りの様子を見た。でも辺りにあるのは、やっぱり船の瓦礫とかだけで。誰も居ない。ドローンとかももう居ないみたいだけど、メアはどこに行ったんだろう。
ボクは少しだけシロの元を離れて、メアを探すために辺りを歩いてみた。その途中でお洋服の汚れに気が付いて、雪を被せて誤魔化して。瓦礫の海を抜けていく。
――足跡があった。雪で少し埋まってるけど、多分メアのもの。ボクはその足跡を辿っていって、やがてある場所に辿り着いた。
「……?」
それはトタンとかで作られた、ハリボテの小屋。ちょっとした物置にも見えるけど、これは何だろう。
足跡はこの中に続いてる。ちょっと悪いかなって気もしたけど、ボクは近づいて。中を覗いてみた。
「わあ……」
どうやらここは、誰かのお家みたい。古びた椅子に、古いカーペット。天井には糸が通してあって、そこには洗濯物が干してあった。
なんだろう。なぜかここは、知ってる気がする。来たことは無いんだけど、似た場所を知っているような。
……ああ、そうだ。マスターのお家なんだ。前に連れて行ってもらった、あの場所。ここはあの場所に、よく似ている。
「いらっしゃい、クロ」
その時だった。部屋の隅っこから、突然声がして。思わずボクがそっちを見てみると、そこにはシーツにくるまっているメアが居た。
「メア? ここは、メアのお家なの?」
「まあね。狩りに行ったはいいけど、ろくなのが居なくて。それで寒くなってきたから、休憩してたの」
するとメアは少し横に動いて、床をポンポンと叩く。
「座って。少し話しましょ」
「……」
不思議な感覚だった。この当てのない旅が始まってから、ずっと思っていたこと。なんというかこれは、恋とかそういうのじゃなくて。もっと何か、別のものを、ボクはメアに抱いてるみたいで。
「シロとは、楽しんだ?」
「えっ……」
「気にしないで。アタシだって空気が読めるんだから。邪魔はしないわ」
メアは少し目を細めて、ボクを見つめている。体育座りで、膝にほっぺを乗せながら。
「また随分激しかったみたいね」
「あ、こ、これは……」
ボクは自分の足首から、血が出ていることに気が付いた。急いでズボンの裾で隠すけど、メアに見られたみたいで。
「おいで、クロ」
「あ……」
するとメアは、ボクを抱き寄せた。両腕をボクの肩に回して、ぎゅって。
「大丈夫。あなたは悪くない。悪いのは全部、あいつらなんだから」
「あいつら……?」
「前も言ったでしょ。上の連中よ。あいつらはいつも、シロを傷つけてばかり」
「……」
そのメアの言葉を聞いた瞬間、ボクの身体に虫唾が走った。だからボクはメアの手を振り払って、少し離れる。
「メアも、そうだったくせに」
ボクは忘れてない。メアがシロに、酷い事をしてたのを。それでボクを脅してきたことだって、ハッキリ覚えてる。
「……そうね。その通り。でも、聞いて。私は……」
『ガタッ』
……星空が綺麗だ。珍しく雲が一つもなくて、空気も澄み切っている。こんな日が来るのは、すごく珍しいことだ。
ボクは空を見ながら、お腹をさすった。それで濡れた感触がしたから、手を見てみると。血と精液が混ざった何かが、ボクの手のひらについていた。
「シロ……」
ボクは横目で、シロを見てみる。気持ちよさそうに寝ているけど、お洋服がはだけているから、寒そうで。ボクはそれを整えてから、シーツを着せてあげた。
「う……」
その時だった。ボクのお尻の辺りに、激痛が走る。それで自分のお洋服をめくってみると、アザでいっぱいの下半身が見えた。
シロの手の痕。それに、噛み痕。殴られたとかじゃないけど、シロの想いが、ボクの身体に傷として残ってる。それは嬉しいんだけど、やっぱり少し複雑で。
「もう、戻らないのかな……?」
もしかしたら、今ボクが耐えられてるのは、いつかそれが来ると信じているからかもしれない。いつかまた、二人で優しく抱き合える日が。来るのかもって。
……でも、きっと来ない。シロはもう、前のようにはなれない。多分色々なことを知っちゃったから。だってそれは、ボクも同じだから。
「そう言えば、メアはどうしたんだろう」
ボクはふと立ち上がって、辺りの様子を見た。でも辺りにあるのは、やっぱり船の瓦礫とかだけで。誰も居ない。ドローンとかももう居ないみたいだけど、メアはどこに行ったんだろう。
ボクは少しだけシロの元を離れて、メアを探すために辺りを歩いてみた。その途中でお洋服の汚れに気が付いて、雪を被せて誤魔化して。瓦礫の海を抜けていく。
――足跡があった。雪で少し埋まってるけど、多分メアのもの。ボクはその足跡を辿っていって、やがてある場所に辿り着いた。
「……?」
それはトタンとかで作られた、ハリボテの小屋。ちょっとした物置にも見えるけど、これは何だろう。
足跡はこの中に続いてる。ちょっと悪いかなって気もしたけど、ボクは近づいて。中を覗いてみた。
「わあ……」
どうやらここは、誰かのお家みたい。古びた椅子に、古いカーペット。天井には糸が通してあって、そこには洗濯物が干してあった。
なんだろう。なぜかここは、知ってる気がする。来たことは無いんだけど、似た場所を知っているような。
……ああ、そうだ。マスターのお家なんだ。前に連れて行ってもらった、あの場所。ここはあの場所に、よく似ている。
「いらっしゃい、クロ」
その時だった。部屋の隅っこから、突然声がして。思わずボクがそっちを見てみると、そこにはシーツにくるまっているメアが居た。
「メア? ここは、メアのお家なの?」
「まあね。狩りに行ったはいいけど、ろくなのが居なくて。それで寒くなってきたから、休憩してたの」
するとメアは少し横に動いて、床をポンポンと叩く。
「座って。少し話しましょ」
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不思議な感覚だった。この当てのない旅が始まってから、ずっと思っていたこと。なんというかこれは、恋とかそういうのじゃなくて。もっと何か、別のものを、ボクはメアに抱いてるみたいで。
「シロとは、楽しんだ?」
「えっ……」
「気にしないで。アタシだって空気が読めるんだから。邪魔はしないわ」
メアは少し目を細めて、ボクを見つめている。体育座りで、膝にほっぺを乗せながら。
「また随分激しかったみたいね」
「あ、こ、これは……」
ボクは自分の足首から、血が出ていることに気が付いた。急いでズボンの裾で隠すけど、メアに見られたみたいで。
「おいで、クロ」
「あ……」
するとメアは、ボクを抱き寄せた。両腕をボクの肩に回して、ぎゅって。
「大丈夫。あなたは悪くない。悪いのは全部、あいつらなんだから」
「あいつら……?」
「前も言ったでしょ。上の連中よ。あいつらはいつも、シロを傷つけてばかり」
「……」
そのメアの言葉を聞いた瞬間、ボクの身体に虫唾が走った。だからボクはメアの手を振り払って、少し離れる。
「メアも、そうだったくせに」
ボクは忘れてない。メアがシロに、酷い事をしてたのを。それでボクを脅してきたことだって、ハッキリ覚えてる。
「……そうね。その通り。でも、聞いて。私は……」
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