崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十八章

Nursing

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 ――そして、数日が過ぎた。それでもクロの容態は、よくならない。力を使い過ぎたっていうのもあるんだろうけど、栄養のあるものを食べさせられて無いからだと思う。
 施設に居た頃は、味はともかく栄養のある食べ物があった。そういう意味で言えば、やっぱり出るべきじゃなかったのかもって、今更後悔してきている。
 でも戻った所で良い事はない。あそこに居たって外に居たって、結局は同じ。外の方がいい、中の方がいいって。ないものねだりをするだけ。
「じゃあ採ってくるから。アンタ、変な事考えんじゃないわよ」
 ここでの役割は、メアが食料調達で、僕がクロの看病になっている。メアはいつもこの辺の海に潜って、魚を捕まえているらしいけど。汚染のせいでろくな魚は採れないらしい。
 その間僕は、クロにつきっきりで看病している。汗をふいたり、スープを飲ませたり。と、トイレに付き添ったり。とにかく色々なことを手伝っている。
「……シロ……」
 でも僕は次第に、自分が最低な人間なんだと自覚していった。なぜなら、クロが胸を押さえながら、僕の手を弱々しく握る瞬間。僕はどうしようもない幸せを感じるからで。
 きっとあの時、僕がしっかりしてさえいれば。クロはテレポートをせずにすんだ。……でもそれはつまり、クロは僕のために、無理をしてくれたってことで。そのことに幸せを感じない人間なんて、人間じゃない。
「大丈夫。僕は、ここに居るから。……今は眠ってね」
 僕がそう言うと、クロは顔を赤らめながら笑顔を向けた。そしてクロは目を閉じて、また寝息を立てて眠る。
 幸せだ。出来る事なら、いつまでもこの幸せに浸っていたい。でもそれはクロがずっと苦しむってことだから、無理なんだけど。思うだけなら自由だから。
『コンコンッ』
 ……ああ。どうやら、また来たようだ。僕は扉のノックを受けて、しぶしぶ部屋の入り口に向かう。
「誰ですか」
「ワシだ。爺だ。開けておくれ」
「……」
 聞いたことのある、しわがれた声。僕は扉を開けて、老人を中に入れた。
「やあ。今日は、良いものを持って来たんだ。ほら」
 老人は部屋に入るや否や、僕に何かを押し付けてくる。……なんだ、これ。
「ワシが持っていたものだ。君に似合うと思っての」
 老人が渡してきたのは、ピアスにネックレス、それに指輪。なんというか、手あたり次第の貴金属を集めたという感じのものだった。随分古いから多分、戦前に作られたものだろう。……いや、そんなことは問題じゃない。
「……どういう意味ですか」
「別に意味なんてないさ。ただ君が頑張っているから、プレゼントだよ」
「……」
 気持ちが悪い。本当なら今すぐにでも、こんなもの海に投げ捨てたい。でも、出来ない。せめてこの老人が、この町で一番の権力を握っている奴じゃなかったら。叩き返していたのに。
 この町に居る限り、この老人の影響下にある。せめてクロの容態が回復するまでは、我慢しないといけない。
「……ありがとう」
「いいんだ。ほら、後ろを向いて。ワシがつけてあげよう」
 老人は僕の後ろに回ると、僕の後ろ髪を少し上げて、ネックレスをつけた。……その時にシワの多い手が、首筋にあたって。鳥肌が立ってしまう。
「ああ。やっぱり似合うなあ。……本当に、可愛いよ」
 気味が悪い。この老人は僕の身体を見て、ニヤニヤしている。
「ワシはずっと、子供が欲しくてね。しかし家内との間には、子供は出来なかった」
 それがなんなんだ。早く、どこかに行ってくれ。
「だから嬉しいんだ。君達みたいな子供が……来てくれて」
「ッ……」
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