崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十八章

Waste

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 老人は了承を得ることなく、僕の腰に手を添えた。そのまま手を滑らせて、お尻を触ってくる。
「ワシは子供が大好きでね。君のその、白い肌。適度な肉質。とてもいい」
「……」
「特にいいのは、君が傷物ってことだ。ワシはそういうのが、好物なんだよ」
 反吐が出る。結局、中の人間も外の人間も変わらない。こっちの弱みにつけこんで、好き勝手利用するクズ。
 殺してしまいたい。しかしここでそれをすれば、他の人間が襲い掛かってくるだろう。……クロを抱えて逃げようにも、地の利は向こうにある。それに、メアも。
 僕は昨日、少しだけ辺りを散歩してみた。そうしてわかったのは、ここの警備はそれなりに堅いということだ。
 ここの人間が全て敵に回れば、さすがにクロを守り切れる自信がない。逃げようにも橋を渡る必要があるから、難しい。……せめて船があれば、夜中のうちに逃げれるかもだけど。
「なあ。ワシの部屋に来ないか? まだ余ってる場所はある。食事も出してあげよう。悪いようにはしない」
 行きたくない。触らないで欲しい。……でも僕は、こういうのが無駄だって知ってる。こういうクズの常套句は、いつもアレだから。

「――あの子を、傷つけたくないだろう?」

 老人はクロを指さしながら、耳元で囁いた。生暖かい息が、耳に当たって。全身をおびただしいほどの嫌悪感が、包み込む。
 頭にべっとりとまとわりつく、嫌な記憶。今でもわかる、あの時のあいつらの、嫌な手の感覚。……このジジイも、それ同じ。
「あの女の子ともしたんだが、彼女には愛嬌がない。それにどちらかと言えばワシは、君の方が好みなんだ」
「……」
「さあ、おいで。楽しもうじゃないか。二人っきりで……」
 僕は一瞬、クロを見た。そうして湧き上がってきたのは、クロを守りたいという感情と。どうしようもない虚しさ。
 何も変わらない。結局どこに行っても、こういうことばかり。外に出ても、自由なんてない。……ずっと。永遠に。
「――あぐあッ!?」
 その時だった。僕がジジイについていくために、部屋を出ようとした瞬間。老人が奇妙な声をあげた。
「き、貴様……」
 僕はジジイの後ろを見た。するとそこには、……いつの間にか、クロが立っていた。どこからか持って来たナイフを、握って。それを老人の背中に突き刺している。
「ク、クロ……?」
「渡さない。誰にも、渡さない。シロは、ボクが……!」
 深々と刺されたジジイは、うめき声を上げながらその場に倒れ込んだ。するとクロは、一度ナイフを引き抜き。ジジイに馬乗りになって、そのままめった刺しにしていく。
「死んじゃえ、死んじゃえ! シロを傷つける奴は、全部!! 生きてたら駄目なんだ!!」
 血しぶきが上がる。クロの身体が、血で塗られていく。既にジジイは死んでしまったのか、次第に声が聞こえなくなって。それでもクロは止まらなかった。
「はあっ……はあっ……」
 やがて、ナイフが骨に当たる音が響き。ナイフの刃が折れた頃。ようやくクロは、手の動きを止めた。呼吸を荒くしながら、心を落ち着けようとしているみたいで。ゆっくりと僕の方に、顔を向ける。
「大丈夫? シロ……」
 ……何も言えなかった。何も、行動に移せなかった。だって僕は、今にも泣き出してしまいそうで。それをこらえるので、必死だったから。
 恐怖とかじゃない。もう僕には、恐怖を感じる余裕なんて残っていない。だからあったのは……。
「……ボク、シロを守れたかな? シロを、支えられてるかな?」
「!」
 するとクロは、血の付いた手で僕の頬に触れる。
「シロはずっと、ボクのために傷ついてきてくれたんだ。ずっとずっと、我慢してきてくれたんだ。だから今度は、ボクの番……なん……だ……」
『バタッ』
「クロ!!」
 その時だった。僕の身体から、クロが滑り落ちた。……クロの額から、凄い量の汗が噴き出している。顔が真っ赤になっていって、今にも死んでしまいそうな勢いで。
「おいお前ら、そこで何をしてる!?」
 さらに最悪なことに、見張りにジジイの死体を見られてしまった。見張りは鉄パイプを持ちながら、こっちに向かって走ってきている。きっと僕とクロを、殺す気だ。
 ……。もういい。こんな所に居たって、クロは助けられないってよくわかった。だったらもう、こっちだって遠慮はしない。クロと一緒に、逃げてやる。
「邪魔をするなクソが!!」
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