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第十八章
RUN.
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僕はその場に落ちていた瓦礫を拾い、警備の男に向かって投げつけた。そして瓦礫が男の眼球に食い込み、よろめいた瞬間。僕は鉄パイプを奪い捕り、全力で男の腹を貫いた。
「がっ……」
鉄パイプを伝って、男の血が手を濡らす。それでも僕は力を抜かず、パイプが壁にめり込むぐらいに押し込み。駄目押しに男のもう一つの眼球を、指で潰した。
「ぎゃああっ!!!!」
僕はクロをおぶって走り出した。わき目も降らず一目散に、ビルを降りていき。その間にいくつかの警備共とすれ違い、追手がさらに増えたけど。今更気にしなかった。
「っ、メア!?」
すると、六つ目の階段を降りようとした時。僕は偶然にもメアと鉢合わせた。メアの顔にはいくらかの精液と、そして口周りには吸血鬼のような血がついているあたり。また身体を売っていたらしい。
「チッ。どうやらそっちも、我慢の限界みたいね」
「……ああ。どうやって逃げる?」
「まだ使える釣り船があるわ。地下室から逃げましょう」
僕とメアはただひたすら、階段を降りていく。警備共をなぎ倒し、蹴飛ばし。何人かを突き落とした。
そして数分後、僕達は地下室に辿り着いた。そこは既に浸水しきっているが、壁には大きな穴が開いているので。どうやらここは簡易的な港として使われているらしい。
「アタシが時間をかせぐ、さっさと船を出しなさい!」
僕は小舟に乗り込み、クロを船底に寝かせる。そして慣れない動きで帆を張り、勢いよく壁を蹴って、船を出した。
「メア!」
船が地下室から出る頃、メアは走り出した。何人もの追手が勢いよく地下室に飛び込み、メアを捕まえようとする……けども、それは叶うことはなかった。
メアが船に飛び乗ったことで、勢いよく船がたゆたう。それでいくらかの水が船に入ったけども、特に問題はなく。とりあえず僕達は、あのビルから脱出することが出来た。
幸いにも、今日は風が強い日だった。ひとたびビルから出てみれば、追い風が船を突き動かし。グングンと追手を引き離していく。でも問題は、それだけじゃない。
「これからどうするんだ、こんな船じゃそう遠くへは……」
「とりあえず沖に向かって進みましょう。周りは断崖に囲まれてるから、そこから出るしかないわ」
「沖に、こんな船で行けるのか……?」
「っと、そう簡単にはいかないみたいね。来るわ!」
すると上空から、何本かの矢が飛んできた。どうやらこの上には吊り橋があるようで、そこから警備共が弓矢で狙っているらしい。
でも銃やロボットなどと戦ってきた僕達からすれば、矢ぐらいのものは見切って叩き落とせた。なので最低限の防御だけして、そのまま船を進める。
「うぐっ……ああ……あ……」
「クロ! だ、大丈夫……!?」
だが、やっぱり事はそう簡単じゃない。クロの容態が、さらに悪くなってきている。血流も良くないみたいで、クロの肌は少しずつ黒ずんできていて。僕は次第に冷静さを失っていった。
「落ち着きなさい、とにかく今は逃げることが先決よ。じゃなきゃ治療も出来ないわ」
気が付けば僕は、ただただ必死にクロを抱きしめていた。痙攣するクロの身体を、抑えたくて。
でも止まらない。クロの声がおかしくなっている。……このままじゃ駄目だ。このままじゃ、また、あの時みたいに。……死んじゃう。
「駄目だ。そんなの駄目だ。そんなの、嫌だ。嫌だ。嫌だ」
僕はクロの手を握った。強く握りしめて、クロの顔を見つめた。
「クロ、起きて。死なないで。またいつもみたいに笑ってよ、ねえ。ねえ」
何も答えない。反応しない。どうにかしなきゃ。なんとかしなきゃ。でも、どうしたらいいのかわからなくて。僕はずっと、何も出来ない。
「……!」
そんな時だった。僕の中に、一つの気づきがあって。僕はすぐにそれを実践しようとする。
「ね、ねえ。クロ。ほら。い、いいの? 僕、また腕、切っちゃうよ?」
僕は自分の手首に、ナイフを添えた。そしてクロに見せるようにして、訴えかける。クロはいつも、僕が危険な時には目覚めてくれた。だからきっと、こうすれば……。
『パンッッ』
「あ……」
その大きなビンタの音は、僕の思考を一瞬で停止させた。まるで猫だましをくらったみたいに、頭が真っ白になって。頬の痛みを感じることが出来たのは、数秒ほどしてからだった。
「……落ち着いた?」
メアのその一言で、僕は自分の心に問いかけた。そうして、僕はゆっくりと頷いて。持っていたナイフを落とす。
「とにかく。もう奴らは追って来れないみたいね。風向きはこちらにあるわ」
「……」
「昨日のうちに、この場所の大まかな座標を掴んだの。ここから少し行った先に、病院がある。……とりあえず、そこを目指しましょ」
「がっ……」
鉄パイプを伝って、男の血が手を濡らす。それでも僕は力を抜かず、パイプが壁にめり込むぐらいに押し込み。駄目押しに男のもう一つの眼球を、指で潰した。
「ぎゃああっ!!!!」
僕はクロをおぶって走り出した。わき目も降らず一目散に、ビルを降りていき。その間にいくつかの警備共とすれ違い、追手がさらに増えたけど。今更気にしなかった。
「っ、メア!?」
すると、六つ目の階段を降りようとした時。僕は偶然にもメアと鉢合わせた。メアの顔にはいくらかの精液と、そして口周りには吸血鬼のような血がついているあたり。また身体を売っていたらしい。
「チッ。どうやらそっちも、我慢の限界みたいね」
「……ああ。どうやって逃げる?」
「まだ使える釣り船があるわ。地下室から逃げましょう」
僕とメアはただひたすら、階段を降りていく。警備共をなぎ倒し、蹴飛ばし。何人かを突き落とした。
そして数分後、僕達は地下室に辿り着いた。そこは既に浸水しきっているが、壁には大きな穴が開いているので。どうやらここは簡易的な港として使われているらしい。
「アタシが時間をかせぐ、さっさと船を出しなさい!」
僕は小舟に乗り込み、クロを船底に寝かせる。そして慣れない動きで帆を張り、勢いよく壁を蹴って、船を出した。
「メア!」
船が地下室から出る頃、メアは走り出した。何人もの追手が勢いよく地下室に飛び込み、メアを捕まえようとする……けども、それは叶うことはなかった。
メアが船に飛び乗ったことで、勢いよく船がたゆたう。それでいくらかの水が船に入ったけども、特に問題はなく。とりあえず僕達は、あのビルから脱出することが出来た。
幸いにも、今日は風が強い日だった。ひとたびビルから出てみれば、追い風が船を突き動かし。グングンと追手を引き離していく。でも問題は、それだけじゃない。
「これからどうするんだ、こんな船じゃそう遠くへは……」
「とりあえず沖に向かって進みましょう。周りは断崖に囲まれてるから、そこから出るしかないわ」
「沖に、こんな船で行けるのか……?」
「っと、そう簡単にはいかないみたいね。来るわ!」
すると上空から、何本かの矢が飛んできた。どうやらこの上には吊り橋があるようで、そこから警備共が弓矢で狙っているらしい。
でも銃やロボットなどと戦ってきた僕達からすれば、矢ぐらいのものは見切って叩き落とせた。なので最低限の防御だけして、そのまま船を進める。
「うぐっ……ああ……あ……」
「クロ! だ、大丈夫……!?」
だが、やっぱり事はそう簡単じゃない。クロの容態が、さらに悪くなってきている。血流も良くないみたいで、クロの肌は少しずつ黒ずんできていて。僕は次第に冷静さを失っていった。
「落ち着きなさい、とにかく今は逃げることが先決よ。じゃなきゃ治療も出来ないわ」
気が付けば僕は、ただただ必死にクロを抱きしめていた。痙攣するクロの身体を、抑えたくて。
でも止まらない。クロの声がおかしくなっている。……このままじゃ駄目だ。このままじゃ、また、あの時みたいに。……死んじゃう。
「駄目だ。そんなの駄目だ。そんなの、嫌だ。嫌だ。嫌だ」
僕はクロの手を握った。強く握りしめて、クロの顔を見つめた。
「クロ、起きて。死なないで。またいつもみたいに笑ってよ、ねえ。ねえ」
何も答えない。反応しない。どうにかしなきゃ。なんとかしなきゃ。でも、どうしたらいいのかわからなくて。僕はずっと、何も出来ない。
「……!」
そんな時だった。僕の中に、一つの気づきがあって。僕はすぐにそれを実践しようとする。
「ね、ねえ。クロ。ほら。い、いいの? 僕、また腕、切っちゃうよ?」
僕は自分の手首に、ナイフを添えた。そしてクロに見せるようにして、訴えかける。クロはいつも、僕が危険な時には目覚めてくれた。だからきっと、こうすれば……。
『パンッッ』
「あ……」
その大きなビンタの音は、僕の思考を一瞬で停止させた。まるで猫だましをくらったみたいに、頭が真っ白になって。頬の痛みを感じることが出来たのは、数秒ほどしてからだった。
「……落ち着いた?」
メアのその一言で、僕は自分の心に問いかけた。そうして、僕はゆっくりと頷いて。持っていたナイフを落とす。
「とにかく。もう奴らは追って来れないみたいね。風向きはこちらにあるわ」
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