無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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69 新種の作物

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 村の農地拡大計画が進行している。

 こう聞くと、「おお、それは良いことだ」と頷く者もいるだろう。しかし、実際にやるのは簡単な話ではない。なにせここは異世界であり、俺が知っている常識など何の役にも立たないのである。

 そもそも、異世界の土は気まぐれすぎる。ある場所では栄養たっぷりの黒土が広がっているかと思えば、少し離れた場所では紫色に光る砂が舞い、さらに進めば地面が脈打っていることすらある。農業において「土壌の安定」は重要な要素のはずだが、この世界の土はどうにも落ち着きがない。

 さらに、俺たちが持ち込んだ作物もまた気難しい。現代農業の知識を総動員し、畑を整え、種を蒔いたのだが、発芽はするものの、そこからまったく成長しない。水をやっても、肥料を混ぜても、一向に伸びる気配がない。

 「うーん、ダメだな」

 俺は腕を組み、畑の前で唸った。

 「ダメなの?」

 リュナが心配そうに耳をぴくりと動かす。彼女はもともと六本足ウサギの進化個体だったが、今や完全に人の姿をしており、言葉も話せるし、道具も使える。だが、根本的な思考はやはり獣人のそれで、「食べられるものが少ない=危機」というシンプルな判断基準を持っている。

 「ダメだ。土のせいか、作物のせいか……とにかく、まともに育たない」

 「うーん、それは困るね」

 リュナは尻尾を揺らしながら、足元の土をぽふぽふと踏む。そして、不意にぽつりと呟いた。

 「じゃあ……土がダメなら、育つやつを探せばいいんじゃない?」

 ――なるほど。

 俺はハッとした。確かに、普通の作物が育たないならば、育つ作物を探せばいい。それが異世界流の適応というものだろう。

 「よし、それじゃあ村の周辺を探索して、何か使えそうな植物を探そう」

 「了解」

 フィオナが静かに頷く。

 こうして、俺たちは新種の作物を探すために、村の近くの森を調査することになった。

 そして――俺たちは見つけたのだ。

 「……なんだこれ?」

 地面に広がる奇妙な植物を発見したとき、俺は思わず声を上げた。

 「根っこ……?」

 俺たちの目の前には、一面に広がる根のような植物があった。普通、植物の根は土の中に隠れているものだが、こいつは堂々と地表を這い回り、まるで大地そのものを支配しようとしているかのようだった。

 「これは……動いている?」

 リュナが不思議そうに呟く。

 俺たちは試しに根を掘り返してみた。すると、驚くべきことが判明した。

 「おい、こいつ、どこまで伸びてるんだ?」

 掘っても掘っても、根は続いている。どこまでも伸び、まるで地中全体を覆っているかのようだった。

 「これは……水を求めて広がっているのか?」

 フィオナが冷静に分析する。

 「この根は、乾燥した場所ではほとんど見かけないが、湿った土地では異様に繁殖している。つまり、水がある場所へ向かって伸びているのだろう」

 俺はハッとした。

 そうか、こいつは自分で根を広げ、地下から養分を吸収するタイプの作物なのかもしれない。つまり――これを畑に導入すれば、勝手に水を求めて成長してくれるのではないか?

 「……試してみる価値はあるな」

 俺たちはさっそく、この根を少しだけ村の畑に移植してみることにした。

 そして、数日後――

 「……なんだこれ」

 俺は驚愕した。

 根が、動いている。

 村の畑に植えた根は、まるで意思を持っているかのように伸び、土の中を這い回り、水場へと向かっているのがはっきりと分かる。まるで生き物のように、自ら水を求め、広がっているのだ。

 「これはすごいな」

 フィオナも珍しく感心している。

 「でも、食べられるの?」

 リュナが興味津々といった様子で、根の一部をちぎって口に入れようとした。

 「おい待て、それは危険かもしれない」

 俺が止めたが、すでに彼女はもぐもぐと噛んでいた。

 「……ほんのり甘い」

 リュナは満足げに尻尾を揺らす。

 俺たちはこの植物を「地走り根(じばしりね)」と名付けることにした。地面を走るように広がり、勝手に養分を吸収してくれるのだから、まさに理想的な作物と言える。

 さらに、この根の一部を焼いてみると――

 「うまい!」

 表面はパリッと香ばしく、中はほくほくと甘みがある。まるでサツマイモのような味わいだった。

 「これなら主食になりそうだな」

 「保存もできるし、加工もしやすい。悪くない」

 こうして俺たちは、異世界特有の「根を自ら広げる作物」を発見し、村の食糧事情を大きく改善することに成功したのだった。

 ――だが、ここで一つ問題が発生した。

 「なあ、こいつ……広がりすぎてないか?」

 最初は畑にだけ植えていたはずの地走り根が、気がつけば村の至るところに伸び始めていた。井戸のそば、倉庫の下、家の裏手……どこを掘っても、この根が顔を出すのだ。

 「ふむ、繁殖力が強すぎるのかもしれないな」

 フィオナは冷静に分析する。

 「このまま放っておくと、村全体が根に覆われるぞ」

 「……いや、それは困る」

 異世界農業は、やはり一筋縄ではいかないらしい。

 こうして俺たちは、地走り根の制御方法を探るべく、新たな試行錯誤を始めることになったのだった。
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