無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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76 街の広場

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 村が発展してくると、次に現れるのは秩序の問題である。

 俺が異世界に来た当初、この場所はただの拠点だった。だが、いつの間にか住民が増え、家が増え、畑が広がり、道ができ、そして、気がつけば村の中心部に市場のようなものができていた。

 この「市場のようなもの」は、俺が意図して作ったわけではない。狩人が獲った獲物を毛皮に加工し、それを農民の作った作物と交換する。鍛冶職人が槍や包丁を作り、それを食料と引き換える。そんな自然発生的な取引が繰り返されるうちに、人々は「物と物の価値」を測り始め、結果として市場が生まれた。

 しかし、この市場は無秩序だった。

 「ちょっと! ここ、私が店を広げてた場所なのよ!」
 「昨日は空いてたから使わせてもらったんだ!」
 「その角は俺の場所だぞ! いや、俺のゴーレムが言ってた!」
 「ゴーレムは喋らないだろ!」

 こんなやりとりが、村の中心部で頻発していた。

 俺はしばらくそれを見ていたが、やがて悟った。ああ、そろそろ市場を整備しないとダメだなと。

 「というわけで、広場を作るぞ」

 俺がそう宣言すると、ゴロウは腕を組んで唸った。

 「広場ねぇ……」

 「市場が無秩序になってきたから、ちゃんと取引できる場所を整備するんだ」

 「なるほど、だが市場を作るだけなら、取引所のような施設を建てるほうが効率がいいんじゃないか?」

 「違うんだ、ゴロウ。これはただの市場じゃない。広場なんだ」

 「……?」

 「人が集まり、取引をし、交流し、何かが生まれる場所。それが広場だ。単なる商売の場ではなく、ここに来れば新しいものが見つかる、そんな場所にするんだよ」

 ゴロウはしばらく考えていたが、やがて口の端を上げた。

 「なるほど、そういうのも悪くないな」

 職人気質の男が「悪くない」と言うのなら、それはつまり「めちゃくちゃ良い」という意味である。

 広場を作るにあたって、まず考えなければならなかったのは「どこに作るか」だった。

 「市場がすでにある場所をそのまま使うべきだな」

 「でも、そこって通行の邪魔になってるって不満も多いわよ?」

 口を挟んできたのは、商人の女性だった。彼女は異世界に漂流してきたばかりの頃から冷静沈着で、俺たちの経済基盤を根本から見直した人物である。

 「市場を広場にするなら、通路の動線を考えないといけないわ。流通が滞ると、物の動きが悪くなる」

 「確かに……」

 市場は、ただ取引するだけの場所ではない。物資の流れがスムーズでなければ意味がない。

 「なら、通りを広くして、市場の中心部を円形の広場にするのはどうだ?」

 俺の提案に、ゴロウと商人の女性が頷いた。

 「その形なら、店を並べやすいし、道も塞がれにくいな」

 「取引所も併設すれば、価格の安定にもつながるかもしれないわね」

 こうして、広場の設計が決まった。

 建設が始まると、次なる問題が発生した。

 「おいおい、地面がボコボコじゃねえか!」

 ゴロウが指差したのは、地面にできた無数の穴だった。

 「……ああ、たぶん六本足ウサギ(仮)の仕業だな」

 彼らは最近、村の住民のように振る舞い始め、勝手に農業をし、勝手に狩りをし、そして勝手に地面に穴を掘っていた。

 「ウサギたちに広場の意義を説明して、穴掘りを控えさせないといけないな……」

 俺は説得を試みたが、彼らは「取引とは物を交換することである」という概念は理解できても、「公共の場を荒らしてはいけない」という意識はまだ希薄なようだった。

 結局、穴の上に石畳を敷くことで解決した。

 数週間後。

 広場はついに完成し、村の中心部はすっかり様変わりした。

 石畳の中央には、簡単な舞台を設置し、周囲には整然とした店が並んでいる。

 「……すごいな」

 俺は出来上がった広場を眺めながら呟いた。

 人々が行き交い、商談が交わされ、笑い声が響いている。取引だけでなく、情報が飛び交い、文化が生まれつつある。

 「これはもう、村じゃないわね」

 商人の女性が微笑む。

 「……確かに、これはもう街かもしれないな」

 ゴロウも腕を組んで頷く。

 かつては小さな拠点だったこの場所が、今や異世界の経済の中心へと進化しつつあった。

 「さあ、ここからが本番だ」

 俺は広場を眺めながら、新たな未来を見据えた。

 交易の拠点となり、異世界の文化が交わる広場。

 異世界の街の中心が、今ここに誕生したのだった。
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