6 / 32
5
しおりを挟む
5●
ユートが着てきたヨレヨレの服は、入浴中に成吾に捨てられていた。代わりの服を渡されたが、長身の成吾のものなので当然ぶかぶか。ズボンはどうやっても腰が脱げるのであきらめて脱いだ。少し屈めばパンツが見えそうで、これで出ていくのはまずいかな、と少し悩んだが、他にやりようがなかった。
内股ぎみでリビングに戻る。振り向いた成吾はユートの生足姿について、一瞥しただけで何も言わなかった。
「おかえり。さぁ早く席について」
いい匂い。
成吾に促されるまま、席に着く。白いテーブルクロスの上に前菜からデザートまで、ずらりと料理が並んでいた。マンションの2階にレストランが入っていて、住民なら電話一つで済むので、成吾はほとんど毎日頼んでいるらしい。
「味はそこそこだけどね。俺は外食って面倒で好きじゃないんだ。たまになら美味しい店に連れて行ってあげてもいいけど、普段はこれで我慢して」
金色のシャンパンも横で冷えていた。成吾が慣れた手つきで栓を抜いて、2人のグラスに注ぐ。勢いよく泡が上り弾けていった。
乾杯。あまりお酒に慣れていない、どちらかといえば苦手なユートは恐る恐る口をつける。まるで天国の飲み物だった。料理だって、成吾はそんなに気に入っていないそうだが、ユートには信じられないくらいおいしい。少なくとも今まで食べてきた、お腹を満たすためだけの菓子パンやインスタントラーメンなんかとは比べ物にならない。自分は少食だと思っていたのに、いくら食べても止められず次から次に口に運んだ。
「口にあったなら良かったね。俺が仕事で留守の時は自分で電話して頼んで。他に欲しいものや困ったときは、一階にいるコンシェルジュに言えばいい。すぐに部屋まで届けてくれるよ。ユートには留守番の時間が長くて、寂しい思いをさせるけど、それ以外はきっと快適だ」
メインディッシュまで終えて、やっとユートの食欲が少し落ち着いたところで、成吾はユートにここでの過ごし方をレクチャーした。成吾は医者の仕事が忙しくて、何日も留守にすることもある。その間ユートはここで一人で留守番をしなくてはいけない。
「分かったか?」
「はい。でも買い物くらい自分で行きます。そのほうが安く済むと思うし……」
いくらでもおつかいしますよ! 意気揚々で申し出たユートに、成吾は鼻で笑い返した。
「分かってないな。ユートは外に出るな」
「……外に出たらだめですか?」
きょとんと聞き返したユートを、成吾が軽く睨む。
「俺の許可があればいい。でなければダメ。俺に飼われるんだから当たり前だろ。先に言っておくけど、言いつけを破ったらお仕置きだからな」
「……お、お仕置き……?」
成吾は当然だと言い切った。
「俺はユートをいじめたりしないけど、ユートが悪い子だったらお仕置きはするよ。ムチで背中や尻を痛めつけてやる。分かったな」
「……はい」
成吾に叱られ叩かれる。ほんの少し想像しただけでもユートは悲しくなった。しかしすぐに気を取り直す。ペットとして拾ってもらったんだから留守番とお出迎えが大事な仕事なのは当たり前だし、自分は絶対に約束を守る。だから大丈夫。お仕置きなんて絶対に受けない。
そう自分に言い聞かせて、残っていたデザートに手をつけた。
ユートが着てきたヨレヨレの服は、入浴中に成吾に捨てられていた。代わりの服を渡されたが、長身の成吾のものなので当然ぶかぶか。ズボンはどうやっても腰が脱げるのであきらめて脱いだ。少し屈めばパンツが見えそうで、これで出ていくのはまずいかな、と少し悩んだが、他にやりようがなかった。
内股ぎみでリビングに戻る。振り向いた成吾はユートの生足姿について、一瞥しただけで何も言わなかった。
「おかえり。さぁ早く席について」
いい匂い。
成吾に促されるまま、席に着く。白いテーブルクロスの上に前菜からデザートまで、ずらりと料理が並んでいた。マンションの2階にレストランが入っていて、住民なら電話一つで済むので、成吾はほとんど毎日頼んでいるらしい。
「味はそこそこだけどね。俺は外食って面倒で好きじゃないんだ。たまになら美味しい店に連れて行ってあげてもいいけど、普段はこれで我慢して」
金色のシャンパンも横で冷えていた。成吾が慣れた手つきで栓を抜いて、2人のグラスに注ぐ。勢いよく泡が上り弾けていった。
乾杯。あまりお酒に慣れていない、どちらかといえば苦手なユートは恐る恐る口をつける。まるで天国の飲み物だった。料理だって、成吾はそんなに気に入っていないそうだが、ユートには信じられないくらいおいしい。少なくとも今まで食べてきた、お腹を満たすためだけの菓子パンやインスタントラーメンなんかとは比べ物にならない。自分は少食だと思っていたのに、いくら食べても止められず次から次に口に運んだ。
「口にあったなら良かったね。俺が仕事で留守の時は自分で電話して頼んで。他に欲しいものや困ったときは、一階にいるコンシェルジュに言えばいい。すぐに部屋まで届けてくれるよ。ユートには留守番の時間が長くて、寂しい思いをさせるけど、それ以外はきっと快適だ」
メインディッシュまで終えて、やっとユートの食欲が少し落ち着いたところで、成吾はユートにここでの過ごし方をレクチャーした。成吾は医者の仕事が忙しくて、何日も留守にすることもある。その間ユートはここで一人で留守番をしなくてはいけない。
「分かったか?」
「はい。でも買い物くらい自分で行きます。そのほうが安く済むと思うし……」
いくらでもおつかいしますよ! 意気揚々で申し出たユートに、成吾は鼻で笑い返した。
「分かってないな。ユートは外に出るな」
「……外に出たらだめですか?」
きょとんと聞き返したユートを、成吾が軽く睨む。
「俺の許可があればいい。でなければダメ。俺に飼われるんだから当たり前だろ。先に言っておくけど、言いつけを破ったらお仕置きだからな」
「……お、お仕置き……?」
成吾は当然だと言い切った。
「俺はユートをいじめたりしないけど、ユートが悪い子だったらお仕置きはするよ。ムチで背中や尻を痛めつけてやる。分かったな」
「……はい」
成吾に叱られ叩かれる。ほんの少し想像しただけでもユートは悲しくなった。しかしすぐに気を取り直す。ペットとして拾ってもらったんだから留守番とお出迎えが大事な仕事なのは当たり前だし、自分は絶対に約束を守る。だから大丈夫。お仕置きなんて絶対に受けない。
そう自分に言い聞かせて、残っていたデザートに手をつけた。
56
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる