Infinity night

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見つけてくれなかった普通じゃないところ

5.確信

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「それはそうだろうな」

日向美の部屋である4番室は鍵がかかっていた
よって、真部と輝人は中に入ることができていなかった

「どうするんですか?」

「こじ開ける」

真部が部屋のドアから距離を取り十分な勢いをつけてからドアへ突進した

元々、古かったおかげで簡単にドアの鍵を外すことに成功することができた

「な、なんて強引な…」

「どうとでも言え」

2人は開かれたドアをそのまま部屋に入り込み、電子カイロや殺害に使われたものの調査を始めた

お母さんが…
そんなことするわけがない…

真部と母親の部屋を調査している輝人は母が人を殺すなんてありえないと小机の引き出しを引く

「え、」

目の前にあったものが衝撃的で声も出なかった
しかし、同時に受け止めたくなかった輝人はそっと引き出しを元に戻す

「何かあったか」

ベッドの下を体制を低くして覗いていた真部が立ち上がりながら聞いた

真部の質問にいつもの輝人らしく「いいえ」と返した

「ちっ 的外れか」と不満そうに口にして次の行動に移る

「母親を探しに行くぞ 俺は2階、お前は1階だ」

「分かりました」

そう言って部屋から出た

輝人はやりきれない表情で階段を降り始めた
真部と横に並んで一段一段正確に踏む

木製の階段が軋む音を小さく鳴らし、緊張感を底上げする

隣にいるのは捜査一課で多くの殺人事件を取り扱ってきたいわばプロである
そのプロが自分の母親を警戒し、怪しんでいる

飄々としていた輝人という調子のいい子供も億劫になっていた

3階から2階までの階段の段数はそんなに多くないはずなのに輝人は何百の段を下った気分に陥る

その精神的に長い時間で輝人の中で思い出されたのはMr.クリスマスの

『5年前…』

という発言だった

輝人が小学1年生の年だ
そんな忘れてしまっていてもおかしくない幼少期でもあの光景だけは鮮明に覚えている


多くの人が逃げ回る大通りで日向美と輝人、1人の男はナイフを持った何者かに追いかけられている

3人は息を切らしながらもナイフを持った人物から逃げる
しかし、輝人の走り幅は足が短いあまりかなり狭い

もう追いつかれてしまいそうになった時、右足で左足を蹴ってしまい前から転倒する

そこで人生の終わりを感じ、大量の涙が溢れた

すぐ後ろにはナイフを持った人物がいることがわかっていたから振り向いたり立ち上がろうとは思わなかった

明らかにナイフが自信に向けて振り下ろされたと感じ、目を瞑った

しかし、刺された感覚も流れる血液の冷たさも感じなかった

ゆっくりと頭を後ろに向けると男性が自分とナイフを持った人物の間に入り込み、腹を刺されていた

「お父さん!!」

父が自分を庇ったと分かり、涙がさらに溢れそうになる

父がナイフを持っている腕を力強く握る

日向美が輝人を持ち抱えてその場から夫を置いて逃げた

抱えられた輝人は泣きじゃくんだ

「お母さん!!お父さんが!!」

日向美はそんな声を聞こえないフリで全速力でそこから遠ざかる

母親の肩から出る頭は父親の姿をしっかり向いている

ナイフを強引に引き抜かれた父親がばたりと後ろに倒れて刺した男に股がられる

「お母さん!!お父さんが死んじゃう!!」

母親を止めようと声をあげるが日向美はそれがわかっていると言わんばかりに子供を強く抱き締めてかけ逃げた


あの時、お父さんが僕を庇って、お母さんがあの場から逃げさせてくれた
2人とも僕を守ったんだ
そんなお母さんを疑うことなんてできない

大通りの出来事があってからすぐに交わした約束があった

「お母さんと普通の生活を送ろうね」

日向美のその言葉にはなんの嘘も虚像も無いはずだと輝人は信じている

2階に到着し、真部が階段から離れた瞬間に輝人は背後から声をかけた

「お母さんは人殺しなんてできないと思います」

そんな強い確信を持った発言を真部は「そうか」と冷ややかに返した

輝人は冷たい真部が武器庫の方へ曲がるのを見た後に階段をまた降り、1階につく

1階にはホールと食堂以外に運動部屋のような場所がある

そこにはダンベルや柔軟に使うシートと天井から床まである1枚の鏡がある
バーベルもそれなりの重さのものがある

しかし、そんなところに母が行く訳がないと考えた輝人はすぐに食堂に向かった

僕たちはここで眠らされたのか…

とため息をつき、視線を下に向けると不自然なものが映った

コンセントから伸びている線が断絶され、そこから先が無くなっている

「あ、、」

となにか気づいたが、見て見ぬふりをするように眠らされた時に座っていた大きな机の方へ歩く

そこの床には血液を拭き取ったような跡が残っていた

これ…血かな…

参加者は酒村が拳銃で自殺したことを知らないため輝人もこの跡が血であるという確信は持てなかった

しかし、母親の姿はなく、念の為にキッチンルームに入った

調理台にかなり大きい冷蔵庫、調理台の下に付属したオーブントースターと、まさに食堂のキッチンといった感じだ

キッチンルームの入口から見渡すと調理台の下から2本の脚が見えた

「は!?」

慌ててそこまで行き、視線をすぐに落とすと目を瞑って倒れた黒木がいた
手元から転がったコップから少量の炭酸飲料がこぼれている

「黒木さん!!」

目を仰天させて黒木を揺らす

しかし、全く反応はなく目覚める気配は無い

なんで…!なんで!?
死んでないよね!なんで倒れてんの!
誰が!いつ!

思考が散漫として全く冷静になれない

僕と真部さん以外は室外に出ることを許されてない……

冷静になった
自分と真部以外?
もう1人の可能性が浮かんだが、呑み込みたくなかった

倉宮 日向美の可能性を

そんなわけ…ない…

その可能性から渋々、目を逸らし黒木の対処を考える

とりあえず、、真部さんを呼ぼう、、


一方、真部は2階の武器庫を調べていた

4つ並べられた棚、段数はそれぞれ5段、高さは天井まである

真部でも1番上の段は踏み台を使わなければ届かない

左から2つ目の棚に違和感を覚えた

なんだこれは…

ちょうど目に入る下から2段目、電化製品である電球や、基板、電圧サージ防護用の手袋と合羽かっぱが雑に置かれている中、もう1つなにか置けるスペースが空けてある

電気系用具が並べられている段に最も武器として扱いやすいであろうものがなかった

スタンガンか…!

扱いになれていなくとも相手に当てれば簡単に電流が流れ、気を失わせることができるもの
それをこんなゲームを企てる者が置かないわけがなかった

明らかに言えること
それは誰かがここにあったスタンガンを回収し、身につけている

誰が手にしているかは真部の中で明白だった

やはり、倉宮 日向美 か…

当の本人を捜し出すために武器庫から出ようと振り返った時、バタンと武器庫のドアが開き、「はぁはぁ」と疲れた輝人がこちらを見た

「どうした」

焦りと疲れを含んだ言葉で返す

「しょ、食堂の、、キッチンルームで…!はぁ…黒木さんが…!倒れてました、、」

「なんだと…!」


真部は武器庫から輝人をのけて飛び出した
階段へ向かい、走りおりる
食堂の中に入り、輝人が開けたままにしてあるキッチンルームの入り口をくぐり、足が見えた調理台の前で足を止めた

「はぁはぁ…」

確かにそこには輝人が見た時と同じように黒木は倒れていた

しかし、

「なんてことだ…!」

真部が見たのはそれだけではなく、、

「こいつもかよ…!」

倉宮日向美も気を失って倒れている光景だった

黒木と向かい合うように倒れて目を瞑る主婦は目覚める気配がない

真部がそれに驚いて固まっていると「真部さん…!」と追ってきた輝人が追いついた

輝人も母親が倒れていることに驚き、声が出る間もなく、母親の元へしゃがみ体を揺らす

「お母さん!?」

息子が激しく揺さぶっても起きる気配はない

「倒れているのは黒木だけじゃなかったのか…」

「いや…!僕がさっき見た時には黒木さんだけでした!」

小学生と捜査一課の一員の被ることのないはずの思考がこの瞬間は重なった


       ""なにが起こっている…!?""


2人の思考が被った瞬間、あの不気味な声が館内に響いた


『死体発見から45分が経過した のこり15分以内に会議が発令されない場合、、、』

Mr.クリスマスの悪魔のような声に参加者ヒツジ達は耳を澄ます

罪人ヒツジの中から無差別に選ばれた人物を殺す』


部屋に留まっていた者、調査を進めていた2人は"無差別"という言葉に仰天し、困惑し、恐怖し、驚愕した


真部の頭は戸惑いに埋まった

目の前の光景、無差別の殺害、隆明を殺した人物、武器庫から消えたはずのスタンガン、ゲーム開始前から紛失した電子カイロ、被害者の死因、2人は誰に気絶させられたのか

脳内はこんがらがった
繋がることのない線が乱雑に配置され、強引に繋げようとしている

なにか…!なにかないか…
核心的な要素が!なにか…!

下を向いてふと目に入ったのは調理台の下に付属された大きなオーブントースターだった

「あ、」

その瞬間、真部の頭の中の線は繋がれた

「どけ!」

唖然としていた輝人を押しのけて日向美の体を横にゆっくりと転がした

そこには確かめたかった事実があった

「やっぱりか」

うつ伏せに倒れていた日向美の腹があったところにスタンガンが置かれていた

そして日向美の上着を腹まで下からめくった
そこには黒い小さな点が2つ、横に並んでいた

「ちょ!何するんですか!!」

冷静に戻った輝人が母親の腹をすぐに服を下ろして隠した

「すまん 確認したいことがあったんだ ほぼ確信したが、念の為に調べたいことがもう1つある 着いてこい」

「2人は、」

「置いていけ すぐに話せるようになる」

そう言われて倒れた2人を放置して食堂から出て階段を上る

真部さんはなにがわかって

Mr.クリスマスの放送とは違う戸惑いと不安が輝人を襲った

3階まで上がった真部はすぐに9番室へ向かった

輝人は部屋の前で足を止めた

「死体は見たくないです」

「そうか ならそこで待っておけ」

と真部が言うと部屋の戸をノックする

すると、ゆっくりとドアが開いた
まだ開ききっていないドアの隙間から詩音が顔を覗かせた

「何の用ですか…」

「遺体の状態を確認したい」

「あなたに見せたくありません」

キッパリと断られてしまった
父親の遺体をそう簡単に他人に触られたくないのだろう

「なら確認して欲しいことがある」

真部は詩音に確認したいことを頼むことにした

「遺体の上半身のどこかに黒い点が2つ並んでいるようなものがないかを調べて欲しい」

「それが黒い点?それが何に」

「早くしろ 無実な人間が無差別に殺されるのが嫌だったらな」

「わ、わかりました」

Mr.クリスマスからの報告を利用して詩音を動かす

詩音は部屋の中に戻り、父親が着用している上着を脱がせた

まず目に入ったのはやはり、、

「左胸の辺りに黒い点が2つ並んでいます…」

ギリギリ部屋の外にも聞こえる声で言った

「それは以前からあったものじゃないよな」

「はい、私は父の介護をしていたので分かります…」

「そうか…助かった」

そう言って部屋のドアを閉め、後ろに立つ輝人に向かい合った

そして言い放った

「お前、隠していることがあるな」

「……!?」

完全に怒りに満ちた形相だった
しかし、それにおののく反応した輝人、図星を突かれてしまった

「話せ 何かあるだろ まぁ大抵は予想できるがな」

急接近して上から見下す

対して下を向いて目を逸らし、口を開こうとしない輝人

真部はため息して少し離れた

「まあいい 俺が今から起こすことの中では隠し事をするなよ」

真部の中で全てが繋がった
そして、確信に確信を重ねて起こすこと

それは隠し事をしている輝人もわかっていた

「会議を発令する」

真部が宣言した瞬間、Mr.クリスマスの声が館内に響く

『8番 真部 仁一 によって会議が宣言された
参加者は速やかに食堂へ集まり、協議し、処刑人オオカミを吊るせ』
















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