Infinity night

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同じ道を奔走した先に得たもの

10.あの人が命をくれたから

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ジィヤが……

絶句だ
目の前で専用執事が死んだ
叫んでから言葉出ない三鷹はその場を逃げ出し、階段をドタドタと上った

千鶴の「三鷹さん!」と止める声も耳を貸すこともなく走り出してしまった

豊代が亡くなった市島を室内にもどした
首と頭の付け根で脈をとるが、その振動はなく、死亡が確定した

豊代が手を合わせて立ち上がる

「申し訳ない 僕のミスです」

豊代が3人に外に出ることとなった経緯を話した
その話を聞いた千鶴が声を上げた

「それでも酷いです!」

Infinity night が始まった時、外は豪雪で逃げることはできないとMr.クリスマスは言っていた
しかし、逃げることはできないのは雪によるものでなく、外に出れば殺されるということを意味をしていたのだ

無慈悲だ
やはりこのゲームは狂っている
人の命を安くみている

音と市島の頭の傷跡から銃弾で撃ち抜かれたのは確かだ
よってここからでは視認できないところに発砲者はいることが推測できるため殺害した者を発見するのは不可能だろう

黒木が不安な声をあげた

「酒村といい、白宮といい、このゲームはMr.クリスマスに協力して人たちが多いんだろうな…」

なぜこんな狂ったゲームに協力しているんだという疑問が全員に浮かぶ

遠藤が苦しい空気を取り直す

「とにかく市島さんを部屋へ送りだしてあげましょう 僕がやるよ」

4人は市島の遺体を遠藤が抱えて3階の部屋へ向かった


3階 8号室

亜久里は真部を余裕な目で見つめる
相手はベッドに座っており、亜久里と詩音は立って話している

「とんでもないことになってるよ容疑者さん」

「今のは俺のせいではないだろ」

「それはそうだな」

一息ついて話を輝人殺害の話に戻す

「で、さっきまでの話をまとめると、、」

真部は会議が終了してからしばらく、自室で待機していたが、8時頃に輝人がやってきてこう強く主張してきた

「あなたの推理は間違っていたということですよね!!」

「それは否定しない だが、あの状況で最も怪しいのはお前の母親だった それは分かってくれ」

「だとしても!無実の人を殺したんですよ!」

「それは反省している」

「だったら反省の意を出してくださいよ!!」

「ここでそれを主張してもお前は俺を信用しないだろ だから次の事件で」

!! 帰ってこないんだよ!あんたが殺した命は帰ってこないんだよ!!」

それからも何度か答弁を繰り返して気が済んだのか輝人は部屋を出ていったという

「それからお前は部屋は殺害報告があるまで部屋を出ていないってことでいいんだろ?」

「あぁその通りだ」

「それ以上に言うことはあるか」

「ない どう弁明しても俺が怪しいことに変わりはないだろ」

聴取は終わった
だが、亜久里にはすることがあった

「この部屋を捜査していいか その間お前には出ていってもらうけどな」

「構わん」

その後、真部は部屋を出て扉の前で待機を指示された
扉の外には最上と千雛がいるため簡単に逃げ出すことはできない

中に残った2人は部屋の調査を開始した


12号室

三鷹の自室だ

三鷹は布団の中にこもり、涙を流していた
つききっきりで世話をしてくれた使用人が目の前で理不尽に撃ち殺されたのだ
計り知れない精神状態にある

「ジィヤ……ジィヤ……」

子供のように泣きじゃくり、目元の敷布団の色が涙で滲むように変色している

「やだよ…ジィヤ…」

私は社長令嬢じゃない…

自分の苦しい過去を振り返る


20年前、私は生まれた
その生まれ落ちた家庭は最悪で母は浮気に浮気を重ね、父は酒とギャンブルに明け暮れていた

私が10歳の頃、父が肝臓ガンで死んだ
母は父の死ぬ少し前から家に帰ってこきてなかった
父が死んでも帰って来ることはなかった

当時、何も分からない10歳の私は父の死体を家に置いて飛び出した

10歳にしてホームレスになった私は盗みを働くようになった

ある程度、インフラが整っている商店街の路地裏に住み着いた私は八百屋においていたむき出しになっている野菜をかすめ取り、スーパーの惣菜コーナーからかすめ取り、その路地裏で食べるという非道な生活な続けていた

最初は盗みも上手くいかず、大人に捕まっては叱られ、後ろ襟を掴まれてまるで子猫のように私を店から投げ飛ばした

「イッてぇな~~~…」

ま、今日は上手くいったしいっか

服の中の脇元に隠したじゃがいもを下から落とし手で取り、口に頬張った

14歳の頃、地獄みたいな生活を始めて早くも4年たった

もう盗みの手口は慣れたもんで店からでなく、すれ違う人からも食べ物や財布をかすめ取るようになった

その日、私は通りかかったある若い男のスボンのポケットから財布を盗んだ

今時、財布ポケットの中に入れるだけとか不用心すぎるだろ

そう思いながらかすめたその財布の金を何に使おうか迷っていたらその男が背後から小柄な私を見下ろしていた

「財布 返して」

「え、、」

私の腕を掴んで私が盗んだ財布を引っ張りとった

「……!」

男はなにかに気づいたような反応を示した

「細いな」

私の体の話だ
4年間、手の着いていない食べ物しか食べてこなかったから肉はついてないし、身長も高くない
それを男は私の腕を掴んでわかったんだ

「君何歳」

「14…」

「中学生じゃん!なんでそんなガリッガリなの」

「うるせえ!お前には関係ねえだろ」

そうそっぽを向いた私に男は軽々とした態度で応えた

「なんか食いもん買ってやるよ 何がいい」

「え、、」

「早く言えよ 俺も時間ないんだ」

そう言って私にコロッケを買ってきてくれた

私はそれを犬のようにバクバクと食べほした

「良い喰いっぷりだな」

男は 結城ゆうき という名でそれから毎日、私に何かしら食べ物を買ってきてくれるようになった

兄貴みたいに甘えたし、あっちも私を妹のように愛でてくれた

「そういえば お前の名前聞いてなかったな」

「覚えてない 生まれた時から親に名前で呼ばれた覚えもないからな」

「なんと未名少女だったとは、」

「別になくたってこの生活じゃ苦労しないぜ」

「俺が呼ぶ時に困る」

「それはそうか、、」

「じゃあ瑠愛るあだな」

「ルア?」

「そうそう これがお前の名前だ」

そして、私がもう少しで15歳の誕生日だと教えるとすぐに欲しいものを聞いてきた
私はいつもより美味しい食べ物を頼んだ

私はその日が楽しみだった
なにをくれるのかと心待ちにしていた

当日、珍しく私はいつもよりも遅く目を覚ました
遠足が次の日で待ち遠しくなっている子供のように私は夜眠れなかったんだ

私が目をこすって商店街の路地裏から顔を出すと

「………!」

地獄絵図だった

数人の刃物を持った人たちが逃げ回る人々を無差別に刺し、拳銃を持った人たちが無闇にやたらに発砲する
商店街の人たちが無惨にも地面に崩れ落ちていく

私は怖くなって路地裏のゴミ袋の塊に身を潜めた

女の人の叫び声や泣き叫んで父を呼ぶ子供の声、実行者の狂気に満ち殺しに快楽を覚えている声

聞きたくもない、耳を捨てたいと思えるほどの声が私の脳に響き続けた

やがてそれは無くなった

私はゴミ溜まりから身を乗り出して路地裏から顔を出した

地面に転がった無数の死体、壁にこびりついた血、賑わっていた商店街には呑み込めば内臓を全て吐いてしまうような空気が充満していた

「え、、」

その言葉しか出なかった
信じたくなかった
過去に戻りたくなった
いっそのこと、全て消えて欲しかった

兄貴結城の哀れな姿がこの目に突き刺さった

血溜まりで服は染め上げられている
彼の手から離れたところにレジ袋のようなものがあった

中身を見た、なにかが入った木製の箱だった
なにかロゴが書かれていた

読めない 

義務教育をほとんど受けてない私にはそこになにが書かれていて何を表しているか分からなかった
ただ、無心のままその箱を開いた

「なにこれ、、」

生魚が米の上に乗ってることはわかった
少なくとも私はこれがどんな食べ物なのかも分からなかったし生魚とか食べたこともなかった

でも、私は口に入れなきゃいけないと感じた

赤い魚が乗った米を口に詰め込むように入れた

感じたことの無い味覚だった
冷たく、甘く、すこし酸っぱい

「なんだよこれ、、なぁ結城、、」

私は動きもしない結城の体を揺さぶった

「なぁ、教えろよ!」

気がおかしくなったんだ
応えて欲しかった
応えてくれなかった

私はそこで泣き叫んだ
親が死んだ時となんら変わらないはずなのに勝手に声と涙が溢れ出た

私はそのなんて名前かも分からない食べ物が入った箱を両手でか弱く握ってその商店街から離れた

私はまた、死体を放置した


数日後、私は目が覚めたら豪華なベッドの上で目を覚ました
驚いて飛び上がるとそこは豪邸だった
ガラス張りの向こうには大きな中庭が広がっていて室内の明かりはシャンデラによるものだったし、眠らされた部屋もかなり広い

服も着た覚えのない真っ白でおしゃれなパジャマだった

ベッドの横にいた老人が言った

「おはようございます お嬢様」

「は?」

どうやら私は拾われたらしい 
この市島一郎という執事に

話を聞いた

企業の後継が生まれなかったらしい

なにそのしょうもない理由

だから私を実子として拾い上げたという

ジィヤから問われた

「お名前は?」

私は吐き気を催した
あの地獄絵図がぶり返したんだ
でもジィヤは私の背を撫でてくれた、頭を揺すってくれた、詰まり詰まり話す私に合わせて聞いてくれた

ここで人生やり直そう
実親はクソだった、楽しくなっていた路地裏生活も地獄に染った

ここなら3
だから自信を持って言った
兄貴から授かった誇れる名前を

「瑠愛!」

それから私は三鷹 瑠愛 としてお嬢様生活を始めた

義務教育がなってない私にジィヤは平仮名から教えてくれた
勉強が嫌になって豪邸を逃げ出して御父様からトラウマになるくらいに怒られた後もジィヤは私に寄り添って肯定してくれた
そんなジィヤが大好きだった

ある日、ジィヤが、

「お寿司をいただきに行きましょう」

「は?スシ?なんだそれ」

「お口が悪いですよ どのようなものですか?です」

「はぁ…どのようなものですか」

「簡易に言えば、酢飯に職人が捌いた新鮮な魚が乗った食べ物ですかね」

「へー」

いまいちピンとこなかった私はなんとなくジィヤについて行った

私とジィヤは板前が目の前で握って提供してくれる寿司屋に入った
その寿司屋のロゴは見たことがある気がした

その違和感はすぐに解消された

板前が1つ目の寿司を出した時、目の前が潤んだ
それは赤身が乗った寿司だった

「結城、、」

涙がこぼれた

この店のロゴはあの時、木製の箱に描かれていたロゴだった
このマグロの味も、味わったことがある

ジィヤが驚いた目で覗いている

泣きながら寿司をはしたなく、頬張る私に異質なものを感じていたんだろう

でも、ジィヤはすぐ笑顔になって

「なにか思い入れが?」

「うるさい、、黙って食え、、」

「お静かに食べなさい ですよ」

こんな時でも敬語の練習はやめさせてくれない

ますます、ジィヤが好きになった
あの時の味に出会わせてくれた、あの食べ物が寿司というものだと教えてくれた

本人は気づかないだろうけど私はここで人生をやり直して良かったと心の底から思った

私も20歳になって御父様から結婚相手を探しにいけと言われた
だからちょうど良かったクリスマスイブから行われる館での宿泊会に行くことを決心した


「もうやだ……」

三鷹はベッドにうずくまって苦しく呟いた

また死んだ…
私が家族だと思った人たちはみんな私の前からいなくなる
前みたいに逃亡もできない、、
このゲームで生き残ったら、また新しい人生を……

「無理…」

彼女に4を始める意思は宿らなかった

自殺しようかな…ここには人殺せるものがいっぱいあるし、、でもそんなに私は心強くない…

彼女は最悪な結論を導き出した

「そうだ、簡単な方法があるじゃん」

それは禁じ手に近く、他の者たちのことを何一つ考慮していない一言を放つこと

「会議、、始め、、、」

まもなく、悪魔の放送が館内に響く

『12番 三鷹 瑠愛 によって会議が宣言された
参加者は速やかに食堂へ集まり、協議し、処刑人オオカミを吊るせ』


すぐに参加者が食堂に集まり、席に着いた
定位置に白宮もついている

1番最後に到着したのが三鷹だった
光ひとつ無い眼が参加者たちを怯えさせる

力無く椅子を引き、席に腰を下ろした

「私に、、投票して、、」


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