Infinity night

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同じ道を奔走した先に得たもの

12.【誤射しちゃったドンッと一髪!真っ赤っか☆】

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「俺は警察官になって悪い奴をたくさん懲らしめてやる!!」

小学生の頃、ある出来事で強い決心をした

両親と弟が買い物に行った
母は俺を誘ったが、俺は意地を張って家に留守番した

一軒家に住んでいた俺はリビングでテレビの大画面で格闘ゲームをしていた

倒せない相手にムカつきながら画面を凝視してコントローラーを両手でカチャカチャしていた

ゲームの中で俺に操作されている剣士はかっこよくて敵を切りつけ、薙ぎ倒す
相手から攻撃されても立ち上がって果敢に敵に向かう姿は憧れだった

現実にこんな奴はいない
現実ではみんな自分が大切で自分の命が脅かされれば人の命を蹴る
それが当然だ
俺だって自分が可愛いし、家族や友達と自分どっちが大切かって言われれば間髪入れずに自分と答えられる気がする

画面から「lose」という低い声が聞こえると俺はコントローラーを前に落とすように離して

「クソが!!」

と叫んだ

だから、俺たちは没頭するんだろう
こんな現実じゃありえない幻想の世界に潜り込んで自分の事のように勝ったら喜び、負ければ悔しがる

もう1回やろうと思ってコントローラーを握った瞬間、玄関からガチャリという音がした

あ、みんな帰ってきたのか結構早かったな…

なんて思いながらそこに視線を向けることせず画面を見たまま「おかえり~」と気だるげに言うと「ただいま」の返答はなかった

珍しいな…

とも思ったが俺は画面から目を離すことはなかった

背後から持ち上げられた

「え、」

訳が分からなかった
急に父が抱き上げて来たのかと思ったが違った

「静かにしろ」

知らない男の声だった
俺は身動きが取れなくなり、恐怖に染った

「両親に連絡しろ」

「電話番号を、、知らない、、」

そう震えながら言うと舌打ちした

「じゃあいいや死ね」

銃口をこめかみに突きつけられた
頭に当てられた拳銃の感覚はもはやなかった
ただ殺される
それだけで頭がいっぱいになった

そして、発砲音が家中に響いた
俺はその瞬間、目を瞑った

死んだ

そう思ったが、生きていた

「ぬ、ぬァァァァア!!」

その男が俺を落とし、自分の肩を抑えて苦しんでいる

リビングの窓ガラスに小さな穴が空いていてその穴からヒビが細かく入っていてその窓ガラスの奥に見えたのは黒スーツを着た男が拳銃を持っていた

「チッ 察かよ!」

男は反対側のガラス戸から逃げ出した

俺は呆然としていた逃げ出した男よりも窓ガラスの奥にいる男のかっこいい姿に見惚れていた

「か、かっけぇぇ」

その時、俺の中のかっこいいが変わった

おかしい
ゲームの中の剣士の方が余程凶悪な敵に立ち向かって仲間を救っているはずなのに現実にいる変哲のない悪人をたった一髪の弾丸で少し怪我を負わせただけの存在に自分の憧れを移されてしまった

窓ガラスの奥から家のチャイムを鳴らして入ってきたその男が俺を心配してくれた

「大丈夫か 少年」

「う、うん、、ありがとう」

その男の顔はシュッとしていてかなり厳つかったが、話す時は優しい表情でまだチビだった俺に視線を合わせるために膝を曲げて背丈を揃えてくれた

一連の手続きが終わるとその男とは別れた

その時、俺は後悔した
名前を聞いていないことに

でもここ周辺の警察署に勤めているはずだと考えた俺はそのかっこいい存在になるために決心したんだ
その決心を小学校の友達に伝えた

「俺は警察官になって悪い奴をたくさん懲らしめてやるんだ!!」

その時の友達は「ガキだなー」と俺を笑ったが俺は強い意志を持ったまま、高校を卒業した

卒業まで一緒にいた笑ってきた友達 南雲 海斗 なぐも かいとはその想いが続いていることを俺に確認すると過去のように笑うことはなかった

「あん時から本気だったんだなお前」

「当たり前だろ 俺は悪人どもを牢屋にぶち込んで有名になって小さかった俺のように現実から目を逸らしている子供たちに現実でも夢見れることを伝えたい」

「うぃーかっけぇ じゃ、がんばれよっ」

そう背中を押された俺は応援してくれた友のため、憧れた存在になるため、夢を叶えるため、ひたすらに努力した

警察学校で優秀な成績を出し続け、ストレート卒業、ある町の交番で治安を守り、順当に昇格した

そして、俺はついに警察庁に捜査二課として勤務することになった
しかもそこはあの時、俺を助けてくれた警察官がいると思われる警察庁だった

配属が決まった時、俺はあの事件がどのようになっているのか調べた

あの時、俺に銃口を向けた男は捕まっていて既に釈放されているらしい
それはどうでもいい
その事件に関与した警察官の名前がただ知りたかった
資料を読み進め、名前が目に止まった

やはりこの警察庁に務めているようだ捜査したのは4人、その4人を全員調べた
あの時の厳つい顔をついに見つけた

九条 修くじょう おさむ…」

当時は捜査一課所属の巡査、、今は、警部か、

警察庁に配属された時、上司に問い詰めた

「失礼ですが巡査部長!捜査一課所属の九条警部をご存知ですか!」

「あー九条先輩か…」

「ご存知ならば!ぜひ!わたくしに会わせていただけないでしょうか…」

「残念だが、それは無理だ」

「それは、、わたくしが未熟な巡査程度だからでしょうか…」

「違う」

巡査部長の一言から脳裏に最悪の可能性が過った

「九条先輩は2年前に亡くなった」

「え、、」

あの助けられた日から15年、25歳になった俺は憧れの存在を失ったことを知った

なぜ亡くなったのか巡査部長に酒の場で親身に聞いた

ある事件で容疑者がビルの屋上まで人質と逃亡し、そいつをを数人の警察官で隅に追い詰めた時、容疑者がそれ以上近づけば人質とここから飛び降りると脅したという

その場にいた九条さんを含めた警察官は容疑者に銃を向けていたという

そして、九条さんとは違う警察官が1歩前に出てしまったという
それに脅えた容疑者が人質共々身を投げようとした瞬間、、

ドンッ!

九条先輩が容疑者を撃った
だが、それは虚しくも人質の頭部を貫いていた

そして、容疑者は人質を屋上に投げ捨てて飛び降りた
グチャリと潰れる音がしてその場は滞った

誤射だった
九条さんが容疑者に向けて放った銃弾が容疑者が身を乗り出したことで標準がズレた結果、人質を捉えてしまったらしい

その罪悪感から九条さんは自宅で首を吊って自殺した


その話を聞いた時、俺はなんとも言えない気持ちになった
俺の憧れは変わらないが、九条さんと同じ道を辿るのはやめようと強く思った


数年後、今からちょうど5年前、俺は捜査一課に転属した

九条さんと同じ課になった俺の最初の事件が商店街での大量殺人事件だった

実行犯は8名でその内、5名は近日中に逮捕された
俺は残る3人の捜査をしていた

容疑者の名前はそれぞれ、

亜久里 刹那 基山 聡きやま さとし 林道 千秋りんどう ちあき

事件から数ヶ月が経っていた
全国的に捜査をしていたがこの3人は見つからなかった
いよいよ海外逃亡も視野に入ってきた頃、付近で基山らしい人物を見たという通報があった

その時俺は一人で現場に直行した

そしてその現場は壮絶としていた

人溜まりができていてその中心で叫んでいる人がいた
基山 聡だった
俺は人混みをかき分けて基山の目の前に立った

「く、来るなァァァァ!!」

基山は人質を抱えていた
その人質を見た瞬間、俺は足を止めて手を上げた

「これ以上近づいたらこいつを刺し殺す!!」

人質の喉元につきつけられた刃物が光の反射で輝く

俺は人質の顔を見た瞬間、体が強ばった

「海斗…!」

高校卒業までの幼馴染の南雲 海斗だった

「仁一…! 助けてくれ!!」

泣きそうな顔でこちらに助けを乞う

「基山 何が目的だ」

冷静に相手を見つめて問う

「う、うるせぇ!!俺は逃げたいだけだ!!早くここにいるヤツら全員どかせよ!!」

「わかった だが、その前に人質を解放してくれないか」

基山の背後に拳銃を構えた交番勤務の警察官がいることを確認した
まだ、基山にバレていない
基山が海斗を手放した瞬間、撃ってくれるだろう
それがこいつをこの場で捕えるチャンス

基山が一歩、一歩と俺に近づく
海斗をこちらに引き渡す時だった抱えていた腕を離す

パァン!!

タイミングは完璧だった
海斗は基山の手から離れ、基山は無防備

だが、基山の背後にいた警察官の標準が合わなかった

銃弾は相手のどこにも当たらず地面に埋まった

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

と叫んだ基山が手放した海斗を強引に服を引っ張って引き戻し、その刃物で喉を切りつけようとした
俺は即座に拳銃を構えた

相手の体制と角度、ここからなら外さない

撃った

現場に凍りついた空気が流れた
血が飛び散った
地面に倒れた人物を見た
俺は信じたくなかった

海斗の胸の中心が赤く染まっていた

「は?」

基山が刃物を大きく振りかぶったせいで体制が崩れ抱えていた海斗ごと倒れかけ、元は基山の頭があった位置に海斗の胸部が置かれた

「海斗ォォォォオ!!!」

死んだ

俺の背中を押してくれた親友は応援した俺に殺された

それからの5年間、俺は裁判にかけられたが弁護士の容疑者を捕らえるために行った仕方の無い結果だという発言によって無罪になった

虚無に仕事を続けていた
捜査にはあまり出ることはせず警察庁で資料をまとめる日々だった

そんなくだらない1日をなんとなくで過ごしていると巡査部長から驚くべき報告が入った

「亜久里 刹那がこの宿泊会とやらに参加するらしい」

俺はその場で口を開けた

「宿泊会の責任者に1人分の席を空けとくよう頼んだ」

「それって」

「行ってこい また一歩あの事件の解決に近づこうじゃないか」

俺は再び使命を持ってその宿泊会の席を取った


この結果がこれか、、

白宮が三鷹に向けていた銃口は違う方向に向けられており、銃弾を放ったことにより発生した煙が天井に昇っている

「8番 真部 仁一の処刑は…」


【誤射しちゃったドンッと一髪!真っ赤っか☆】


真部は薄れゆく意識の中でその処刑名が何を伝えたいのか理解した

誤射か…ははっw 三鷹が処刑されるように見せて俺にそれが移る、、確かに誤射だな

まぁ…俺を撃ち抜いている時点で投票は俺へのものが多かったのだろう

心臓を貫かれた捜査一課の刑事は床に力無く倒れ、傷口から鮮血を流れさせた


憧れた人物は誤射をきっかけに自ら命を絶ち、そうはならないと誓った自分も同じく誤射で人の命を奪った
そして、最後も周りからは誤射に見える形で迎えた

知らぬ男から銃口を向けられ、銃弾に助けられたことで始まった彼の奔走は皮肉にも銃弾によって狂い、さらに狂い、銃弾に貫かれて幕を閉じた


TO 08 真部 仁一

〈罪状〉
無差別大量殺人事件の捜査において一般人を撃ち殺した

銃に囚われ奔走を続けた罪人ヒツジの人生に最高で最適な最後をここに贈る

               By Mr.クリスマス






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