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狂気は時に人を救う
16.会議③
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23:45 会議開始までの猶予 30分
「待て 私が見る」
もう性別なんて考える余裕はなく、亜久里は男子トイレに入り込み、その気を失っている遠藤を見た
大便器にのたれかかるように気を失っている遠藤を注意深く見る
「やっぱりか」
またもや遠藤の服に白い粉の跡が付着している
これは…真部の部屋で見たものとコップに付着していたものとおそらく同じものだな…
いや、それだけじゃない、真部を吊るした会議の前に黒木の服に付着していたものとも多分同じだ…
「これは多分、睡眠薬…だな」
匂いから察した
花束のような匂いだ
睡眠効果のあるラベンダーに近い香りがした
まだ匂いが残っているということは付着してからまだあまり時間が経っていない
「クソガキ こいつのどっかに8号室の鍵があるかもしれねえ 探すぞ」
「え、起こさないんですか」
「起きてからじゃ隠されるかもだからな」
そう言って2人は遠藤の服を調査した
すると、案外すぐに見つかった
ズボンの右ポケットに8号室の鍵があった
それを見つけた最上が亜久里にその鍵を手渡した
「ありました」
「こいつが持ってたか…」
亜久里の中で遠藤の疑いが増した
さらに、亜久里は双子だけでは心配と考え、カフェルーム内に最上が残ることを指示する
「え、僕がですか」
「あぁ 何かあったら会議を発令させて構わない あとは確認をしに行くだけだ」
そう言い残して亜久里は便所から出て上の階に向かう
とりあえず、一応のためにあの部屋の白い粉の跡を確認する…
3階に着いて8号室に向かおうとすると詩音と杉沢と遭遇した
「おぉ、亜久里さん」
杉沢が階段を上ってきた亜久里に声をかける
その横には詩音もいる
この2人は容疑者2人の部屋の捜査をしていた
「なんかあったか」
亜久里が捜査結果を聞くと杉沢が懐から白い粉の入った小さなチェック付きポリ袋を出した
「なんだそれは…」
杉沢がこたえる
「分からないです」
亜久里の中で嫌な予感がする
「それどっちの部屋から出てきた」
「それは、」
その予感は不覚にも当たってしまう
「豊代さんの部屋にありました」
最悪だ…!
白い粉の跡は遠藤が付けたものだと判断していたのに…!
なにせ今までの事実がそう知らしめているからだ…
そう、白い粉の跡は真部の部屋にあったものを除き、ある程度、誰によって付けられたものなのか予想はしていた
そう遠藤だ
遠藤の近くにいた黒木のズボンに付着していたこと、遠藤がすぐそばにいた黒木が飲んでいたコップの中にあったこと、さらに、先程、気を失っていた遠藤の服に付着していたこと
それだけでない、遠藤が気を失っていたのはなにも今回だけでは無い
前の事件でも遠藤は黒木と睡眠薬で眠らされていた
これらの根拠から真部の部屋にあったものも遠藤によってつけられたものだと考えていた
それを確認するために真部の部屋に赴き、確信を持って会議に臨みたかった
しかし、ここにきて似たようなものがもう1人の容疑者である豊代の部屋から見つかった
亜久里の脳はこんがらがった
まじか…またどっちも怪しくなりやがった…!
よくよく考えてみれば、あの遠藤が便所で自分を眠らせる意味がない…!
それに、遠藤が真部の部屋に行った根拠も、動機もない…!
ここで亜久里は気づいた
「待て それは豊代の部屋にあったんだよな」
「は、はい」
不審が晴れた
亜久里の中で全てが結びついた
しかし、これは一刻も早く、会議を始めなければ豊代の近くにいる参加者に危険が及ぶことだ
よって、真部の部屋を確認するのは、なしだ
亜久里が宣言した
「会議開始!」
悪魔の声が館内に響いた
『07番 亜久里 刹那 によって会議が宣言された
参加者は速やかに食堂へ集まり、協議し、処刑人を吊るせ』
まもなくして参加者が全員、食堂に集まる
遠藤も目が覚めたようでしっかりと自席についている
白宮が会議の様子を眺めている
そんな静まった部屋の中で亜久里が口を開いた
そこから発せられる一言は参加者の動揺を生む
「先に言っとく 今回の事件、あの陸上選手を殺したのは処刑人じゃない」
その発言に全員が驚いた
千鶴が机を強く叩いて大口を開く
「え、ど、どういうことですか!!」
その当然の疑問に亜久里は淡々と答える
「そのまんま意味だ 状況証拠から導き出された今回の事件の犯人が今までの事件で死んだ奴らを殺すことができない状況にあったということ」
言っていることはわかる
その意味もだ だが、それはあまりにも罪人側にとって不利な要因でしかない
いわば、自滅状態である
「話をするぞ 今回の事件、まずまず容疑者自体が限定的すぎる」
豊代と遠藤のみだ
「私は用意周到な処刑人がそんなヘマをするとは思えない」
それは確かにと納得する者が多数いた
「次に死因についてだ コップの中に白い粉の塊があった これは睡眠薬⋯」
誰もがそう考える
だが、亜久里が導いた結論は違った
「と思ったんだが、これは薬物、それもコカインだ」
杉沢が鋭く、疑問を投げる
「根拠は?」
「陸上選手が泡を吹いて死んでいたから」
それだけで根拠とするのは一般人にはなかなか難しいことだった、しかし、質問者の杉沢はその言葉で察した
「薬物異常摂取ですね」
「そうだ 普通、違法薬物でのコカインも摂取した程度じゃ死なん だが、奴は大量に飲まされたんだ スポーツドリンクに混ぜられて色で判別もつかなくなったコカインを」
スポーツドリンクは濁った白色をしている
よって、白いコカインはその色に紛れ、飲む者からは見えにくくなる
ペットボトル1本分にまで混ぜられたコカインが黒木の体を襲ったのだ
なんて酷いことだ、、誰もがそう思った
やった人間の精神は尋常でない
もはや一般人の人情ではない
そう人情はとっくに捨てられているのだ
こんなゲームの中で共に抜け出そうとする仲間を手にかけた異常人だ
「私はその白い粉が前の事件で真部の部屋で見つかった白い粉の跡と同じだと思ったんだ だから俺は部屋を確認するために3階に走った だが、そこに鍵はなかった」
死んだ参加者の部屋の鍵はその部屋のドアに刺さっているはずだが、それがなかったのだ
「容疑者が隠し持っていると思った私はカフェルームにいる2人に確認しようとしたら双子のバカが遠藤をトイレに行かせたとか言いやがる」
千鶴は申し訳なさそうに頭を下げたが、千雛は「てへっ」と舌を少し見せただけだった
それを腹立たしく思いつつも話を続ける
「そして、さっき、私はトイレで倒れた遠藤を見た そいつの中に真部の部屋の鍵があった」
最上もその様子は見ていたため、頷きながら話を聞いている
「これは遠藤が犯人だと思い、確認のために真部の部屋に行く途中、容疑者2人の部屋を捜査した詩音と杉沢から、、、」
杉沢が自分に向けられた不名誉なあだ名に不服を感じつつも、先程、亜久里に見せた白い粉の入ったジッパー付きのポリ袋を全員に見せた
「それが豊代の部屋から出てきたとか言うから困惑した でもすぐに合点がいったよ」
その合点にいったのは亜久里だけであり、他の参加者は疑問が増えたようなだけに感じた
「私が見た事のある白い粉やその跡は似て非なる2種類があるってな」
亜久里が見た白い粉やその跡は、
黒木が生きていた時に短パンに付着していたもの、真部の部屋にあったもの、そして、今回の事件で見た、コップの底にこびりついていたもの、トイレで眠っていた遠藤の服に付着していたもの、豊代の部屋から出てきたもの
である
「陸上選手が生きていた時に短パンに着いていたのはコカインじゃない 全員、思い出してくれあの時の黒木の状況を」
輝人が殺された事件の捜査中、黒木は遠藤と共に眠らされていた
つまり、コカインによるものではない、ならばなんなのか
それは、、
「睡眠薬だ」
そうあの時、短パンに付着していたのは白い粉でも他のものとは違う白い粉、睡眠薬だったのだ
「じゃあここで質問だ 三鷹」
「え、あ、はい、」
前回の会議とは違い、市島の真実を知るために積極的になっている三鷹に亜久里がふった
「お前、あの輝人が殺された事件で武器庫で何か見たか?」
前回の会議では三鷹に聞くことのできなかったことをここで問う
「えっと、かなり不審な場所に睡眠薬が置かれていましたわ」
着色ビンが並べられているところにポツンと睡眠薬の入った透明ビンが置かれていた
「ならそれが陸上選手の短パンについてた白い粉の跡の正体だ」
そうなると疑問が出てくる
それを最上が代弁する
「それは誰がやったんですか」
「処刑人だ そいつはあの輝人を殺して、吊るし、遠藤と陸上選手を眠らせる そして、そこで自分がその2人を発見するという形にして人を呼び込み、死体の発見を送らせたかった」
しかし、、
「だが、それは未遂に終わった」
処刑人が眠っている2人がいることを伝える前に輝人の死体が見つかってしまったのだ
「そこで処刑人は睡眠障害を利用して何もなかったことにしたんだ よって、あれはコカインではない」
ここまでは前回の事件で起こったことの推理で、黒木の短パンに付着していたものが睡眠薬であるという証明でしかない
これから亜久里が話すのはこの事件についてのこと
「さらにだ トイレで眠っていた遠藤が含んだのも睡眠薬だ そうでなければ眠りはしないし、薬物異常摂取なら泡を吹いて死んでいるはず、、」
その時、遠藤は誰と一緒にいたか、それは明白だ
一人しかいない
「あの時、遠藤に指示できる位置にいて、さらに薬物知識の豊富な人間…」
亜久里は当てはまる人物を指さした
「お前だ 豊代 竜司」
亜久里は反論が来ると思った
だが、予想外の行動が起きる
「ハハッ」
笑った……!
その異常人物は笑った
「HAHAHAHAHAHA!!」
全員が、このゲームの管理者側である白宮さえ、声も出せずに目を見開いた
豊代は目をガン開きし、口を大きく広げて高揚に話す
「そうだ!!そうだとも!!あの陸上選手は僕が殺した!!なんでって!?理由なんてないよ!!こんな狂った状況で狂った行動をしてみたかっただけだ!!」
こいつは本当に人間なのか……
誰もが思った
尋常じゃない、一般人の領域を超越している
ついに、豊代はその正体を明らかにしたかのように口調も、一人称も、態度も変わる
「でもな!!最初にあの女が言ったとおり!!俺は!!処刑人じゃねんだよ!!」
前回も前々回も豊代にはアリバイがある
豊代は処刑人ではない、それは周知の事実だった
「どうすんだよこの会議!!開いた以上!誰かを殺すまで終わんねぇんだろ!!なぁ!!白宮とかいう奴!!」
白宮は冷酷な表情で頷く
だが、この異常人は、、
生かしちゃダメだ…!
千鶴はその強い思いから挙手する
投票した
もちろん、豊代にだ
それに習うように他の参加者も豊代に投票する
過半数が豊代に投票をし終わる前に詩音が静かにその異常人に問う
「真部さんの部屋に付着していたコカインは、いつ、着けられたのですか」
その異常人がこたえる
「あ~~、、あれはあの日向美が死んだ時の捜査で俺が豊代の部屋に行ったときに着いたんだろうなっ てかそんなのもうどうでもよくね?」
「そうですね、、」
詩音が白宮の耳元で豊代 竜司を指名すると白宮は投票を打ち切った
白宮が高々と声を上げる
「さぁ ぶっ殺しタイムだ」
処刑名
【お薬の時間だ!!狂ったお医者さんの!!お大死にッ☆】
白宮が懐から白い粉の入った透明ビンを取り出し、蓋を回して開ける
誰もがその中身を察した
豊代は席を立って、フラフラしながら白宮の目の前まで行く
「自分から来るとは本当に頭おかしんだな」
「だってそれコカインだろ?ちょうど欲しくなってきた頃なんだよなぁ」
やはり、薬物中毒者だったようだ
「そうか、ならカス野郎を泡吹いた死体みたいにしてやんよ!!」
白宮が豊代の両頬を内側に押さえつけ、強引に口を開けさせる
そこに透明ビンに詰められたコカインを息ができなくなるほどパンパンにぶち込む
ビンが空になると白宮はそのビンを地面に叩きつけ、割れる音が鳴ると同時に両手で顎と頭を抑えて口を閉じさせ、頭を上に向けた
「ゴフッ……!」
鼻に上った少量のコカインが煙のように吹き出す
それを見ても手加減などはしなかった
コカインの塊が豊代の喉を通った
「ガッ……!!」
それを確認した白宮が豊代から離れると豊代は喉を抑えて苦しみ出す
「ナッ……!」
頭が揺れ、眼前も眩み、腹から大量の何かが上ってきた
「ボエェェエエ工ッ!!」
大量の吐瀉物を胃液ごと吐き出す
豊代はそこに倒れ込み、這いつくばる
「ハハッ!」
この状態でも笑う異常者に参加者は皆、心を震わせた
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!ミエル!!ミエルぜ!!ダれモ!!しらネェけシきギャ!!」
その幻の中、苦しむ異常人の中からさらに何かが込み上げてくる
「ナンだ!ハラんナカから!!ホノオが!!」
炎、そんなものは無い
それはコカインによる幻覚作用で感じているだけだ
だが、腹から何かが喉を通ったのは確かだった
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
豊代は最後の叫びをあげ、黒木の時とは比べものにならないほどの泡を口から吹き、白目をむいて静かに頭を床に落とした
「待て 私が見る」
もう性別なんて考える余裕はなく、亜久里は男子トイレに入り込み、その気を失っている遠藤を見た
大便器にのたれかかるように気を失っている遠藤を注意深く見る
「やっぱりか」
またもや遠藤の服に白い粉の跡が付着している
これは…真部の部屋で見たものとコップに付着していたものとおそらく同じものだな…
いや、それだけじゃない、真部を吊るした会議の前に黒木の服に付着していたものとも多分同じだ…
「これは多分、睡眠薬…だな」
匂いから察した
花束のような匂いだ
睡眠効果のあるラベンダーに近い香りがした
まだ匂いが残っているということは付着してからまだあまり時間が経っていない
「クソガキ こいつのどっかに8号室の鍵があるかもしれねえ 探すぞ」
「え、起こさないんですか」
「起きてからじゃ隠されるかもだからな」
そう言って2人は遠藤の服を調査した
すると、案外すぐに見つかった
ズボンの右ポケットに8号室の鍵があった
それを見つけた最上が亜久里にその鍵を手渡した
「ありました」
「こいつが持ってたか…」
亜久里の中で遠藤の疑いが増した
さらに、亜久里は双子だけでは心配と考え、カフェルーム内に最上が残ることを指示する
「え、僕がですか」
「あぁ 何かあったら会議を発令させて構わない あとは確認をしに行くだけだ」
そう言い残して亜久里は便所から出て上の階に向かう
とりあえず、一応のためにあの部屋の白い粉の跡を確認する…
3階に着いて8号室に向かおうとすると詩音と杉沢と遭遇した
「おぉ、亜久里さん」
杉沢が階段を上ってきた亜久里に声をかける
その横には詩音もいる
この2人は容疑者2人の部屋の捜査をしていた
「なんかあったか」
亜久里が捜査結果を聞くと杉沢が懐から白い粉の入った小さなチェック付きポリ袋を出した
「なんだそれは…」
杉沢がこたえる
「分からないです」
亜久里の中で嫌な予感がする
「それどっちの部屋から出てきた」
「それは、」
その予感は不覚にも当たってしまう
「豊代さんの部屋にありました」
最悪だ…!
白い粉の跡は遠藤が付けたものだと判断していたのに…!
なにせ今までの事実がそう知らしめているからだ…
そう、白い粉の跡は真部の部屋にあったものを除き、ある程度、誰によって付けられたものなのか予想はしていた
そう遠藤だ
遠藤の近くにいた黒木のズボンに付着していたこと、遠藤がすぐそばにいた黒木が飲んでいたコップの中にあったこと、さらに、先程、気を失っていた遠藤の服に付着していたこと
それだけでない、遠藤が気を失っていたのはなにも今回だけでは無い
前の事件でも遠藤は黒木と睡眠薬で眠らされていた
これらの根拠から真部の部屋にあったものも遠藤によってつけられたものだと考えていた
それを確認するために真部の部屋に赴き、確信を持って会議に臨みたかった
しかし、ここにきて似たようなものがもう1人の容疑者である豊代の部屋から見つかった
亜久里の脳はこんがらがった
まじか…またどっちも怪しくなりやがった…!
よくよく考えてみれば、あの遠藤が便所で自分を眠らせる意味がない…!
それに、遠藤が真部の部屋に行った根拠も、動機もない…!
ここで亜久里は気づいた
「待て それは豊代の部屋にあったんだよな」
「は、はい」
不審が晴れた
亜久里の中で全てが結びついた
しかし、これは一刻も早く、会議を始めなければ豊代の近くにいる参加者に危険が及ぶことだ
よって、真部の部屋を確認するのは、なしだ
亜久里が宣言した
「会議開始!」
悪魔の声が館内に響いた
『07番 亜久里 刹那 によって会議が宣言された
参加者は速やかに食堂へ集まり、協議し、処刑人を吊るせ』
まもなくして参加者が全員、食堂に集まる
遠藤も目が覚めたようでしっかりと自席についている
白宮が会議の様子を眺めている
そんな静まった部屋の中で亜久里が口を開いた
そこから発せられる一言は参加者の動揺を生む
「先に言っとく 今回の事件、あの陸上選手を殺したのは処刑人じゃない」
その発言に全員が驚いた
千鶴が机を強く叩いて大口を開く
「え、ど、どういうことですか!!」
その当然の疑問に亜久里は淡々と答える
「そのまんま意味だ 状況証拠から導き出された今回の事件の犯人が今までの事件で死んだ奴らを殺すことができない状況にあったということ」
言っていることはわかる
その意味もだ だが、それはあまりにも罪人側にとって不利な要因でしかない
いわば、自滅状態である
「話をするぞ 今回の事件、まずまず容疑者自体が限定的すぎる」
豊代と遠藤のみだ
「私は用意周到な処刑人がそんなヘマをするとは思えない」
それは確かにと納得する者が多数いた
「次に死因についてだ コップの中に白い粉の塊があった これは睡眠薬⋯」
誰もがそう考える
だが、亜久里が導いた結論は違った
「と思ったんだが、これは薬物、それもコカインだ」
杉沢が鋭く、疑問を投げる
「根拠は?」
「陸上選手が泡を吹いて死んでいたから」
それだけで根拠とするのは一般人にはなかなか難しいことだった、しかし、質問者の杉沢はその言葉で察した
「薬物異常摂取ですね」
「そうだ 普通、違法薬物でのコカインも摂取した程度じゃ死なん だが、奴は大量に飲まされたんだ スポーツドリンクに混ぜられて色で判別もつかなくなったコカインを」
スポーツドリンクは濁った白色をしている
よって、白いコカインはその色に紛れ、飲む者からは見えにくくなる
ペットボトル1本分にまで混ぜられたコカインが黒木の体を襲ったのだ
なんて酷いことだ、、誰もがそう思った
やった人間の精神は尋常でない
もはや一般人の人情ではない
そう人情はとっくに捨てられているのだ
こんなゲームの中で共に抜け出そうとする仲間を手にかけた異常人だ
「私はその白い粉が前の事件で真部の部屋で見つかった白い粉の跡と同じだと思ったんだ だから俺は部屋を確認するために3階に走った だが、そこに鍵はなかった」
死んだ参加者の部屋の鍵はその部屋のドアに刺さっているはずだが、それがなかったのだ
「容疑者が隠し持っていると思った私はカフェルームにいる2人に確認しようとしたら双子のバカが遠藤をトイレに行かせたとか言いやがる」
千鶴は申し訳なさそうに頭を下げたが、千雛は「てへっ」と舌を少し見せただけだった
それを腹立たしく思いつつも話を続ける
「そして、さっき、私はトイレで倒れた遠藤を見た そいつの中に真部の部屋の鍵があった」
最上もその様子は見ていたため、頷きながら話を聞いている
「これは遠藤が犯人だと思い、確認のために真部の部屋に行く途中、容疑者2人の部屋を捜査した詩音と杉沢から、、、」
杉沢が自分に向けられた不名誉なあだ名に不服を感じつつも、先程、亜久里に見せた白い粉の入ったジッパー付きのポリ袋を全員に見せた
「それが豊代の部屋から出てきたとか言うから困惑した でもすぐに合点がいったよ」
その合点にいったのは亜久里だけであり、他の参加者は疑問が増えたようなだけに感じた
「私が見た事のある白い粉やその跡は似て非なる2種類があるってな」
亜久里が見た白い粉やその跡は、
黒木が生きていた時に短パンに付着していたもの、真部の部屋にあったもの、そして、今回の事件で見た、コップの底にこびりついていたもの、トイレで眠っていた遠藤の服に付着していたもの、豊代の部屋から出てきたもの
である
「陸上選手が生きていた時に短パンに着いていたのはコカインじゃない 全員、思い出してくれあの時の黒木の状況を」
輝人が殺された事件の捜査中、黒木は遠藤と共に眠らされていた
つまり、コカインによるものではない、ならばなんなのか
それは、、
「睡眠薬だ」
そうあの時、短パンに付着していたのは白い粉でも他のものとは違う白い粉、睡眠薬だったのだ
「じゃあここで質問だ 三鷹」
「え、あ、はい、」
前回の会議とは違い、市島の真実を知るために積極的になっている三鷹に亜久里がふった
「お前、あの輝人が殺された事件で武器庫で何か見たか?」
前回の会議では三鷹に聞くことのできなかったことをここで問う
「えっと、かなり不審な場所に睡眠薬が置かれていましたわ」
着色ビンが並べられているところにポツンと睡眠薬の入った透明ビンが置かれていた
「ならそれが陸上選手の短パンについてた白い粉の跡の正体だ」
そうなると疑問が出てくる
それを最上が代弁する
「それは誰がやったんですか」
「処刑人だ そいつはあの輝人を殺して、吊るし、遠藤と陸上選手を眠らせる そして、そこで自分がその2人を発見するという形にして人を呼び込み、死体の発見を送らせたかった」
しかし、、
「だが、それは未遂に終わった」
処刑人が眠っている2人がいることを伝える前に輝人の死体が見つかってしまったのだ
「そこで処刑人は睡眠障害を利用して何もなかったことにしたんだ よって、あれはコカインではない」
ここまでは前回の事件で起こったことの推理で、黒木の短パンに付着していたものが睡眠薬であるという証明でしかない
これから亜久里が話すのはこの事件についてのこと
「さらにだ トイレで眠っていた遠藤が含んだのも睡眠薬だ そうでなければ眠りはしないし、薬物異常摂取なら泡を吹いて死んでいるはず、、」
その時、遠藤は誰と一緒にいたか、それは明白だ
一人しかいない
「あの時、遠藤に指示できる位置にいて、さらに薬物知識の豊富な人間…」
亜久里は当てはまる人物を指さした
「お前だ 豊代 竜司」
亜久里は反論が来ると思った
だが、予想外の行動が起きる
「ハハッ」
笑った……!
その異常人物は笑った
「HAHAHAHAHAHA!!」
全員が、このゲームの管理者側である白宮さえ、声も出せずに目を見開いた
豊代は目をガン開きし、口を大きく広げて高揚に話す
「そうだ!!そうだとも!!あの陸上選手は僕が殺した!!なんでって!?理由なんてないよ!!こんな狂った状況で狂った行動をしてみたかっただけだ!!」
こいつは本当に人間なのか……
誰もが思った
尋常じゃない、一般人の領域を超越している
ついに、豊代はその正体を明らかにしたかのように口調も、一人称も、態度も変わる
「でもな!!最初にあの女が言ったとおり!!俺は!!処刑人じゃねんだよ!!」
前回も前々回も豊代にはアリバイがある
豊代は処刑人ではない、それは周知の事実だった
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白宮は冷酷な表情で頷く
だが、この異常人は、、
生かしちゃダメだ…!
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投票した
もちろん、豊代にだ
それに習うように他の参加者も豊代に投票する
過半数が豊代に投票をし終わる前に詩音が静かにその異常人に問う
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その異常人がこたえる
「あ~~、、あれはあの日向美が死んだ時の捜査で俺が豊代の部屋に行ったときに着いたんだろうなっ てかそんなのもうどうでもよくね?」
「そうですね、、」
詩音が白宮の耳元で豊代 竜司を指名すると白宮は投票を打ち切った
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処刑名
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白宮が懐から白い粉の入った透明ビンを取り出し、蓋を回して開ける
誰もがその中身を察した
豊代は席を立って、フラフラしながら白宮の目の前まで行く
「自分から来るとは本当に頭おかしんだな」
「だってそれコカインだろ?ちょうど欲しくなってきた頃なんだよなぁ」
やはり、薬物中毒者だったようだ
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白宮が豊代の両頬を内側に押さえつけ、強引に口を開けさせる
そこに透明ビンに詰められたコカインを息ができなくなるほどパンパンにぶち込む
ビンが空になると白宮はそのビンを地面に叩きつけ、割れる音が鳴ると同時に両手で顎と頭を抑えて口を閉じさせ、頭を上に向けた
「ゴフッ……!」
鼻に上った少量のコカインが煙のように吹き出す
それを見ても手加減などはしなかった
コカインの塊が豊代の喉を通った
「ガッ……!!」
それを確認した白宮が豊代から離れると豊代は喉を抑えて苦しみ出す
「ナッ……!」
頭が揺れ、眼前も眩み、腹から大量の何かが上ってきた
「ボエェェエエ工ッ!!」
大量の吐瀉物を胃液ごと吐き出す
豊代はそこに倒れ込み、這いつくばる
「ハハッ!」
この状態でも笑う異常者に参加者は皆、心を震わせた
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!ミエル!!ミエルぜ!!ダれモ!!しらネェけシきギャ!!」
その幻の中、苦しむ異常人の中からさらに何かが込み上げてくる
「ナンだ!ハラんナカから!!ホノオが!!」
炎、そんなものは無い
それはコカインによる幻覚作用で感じているだけだ
だが、腹から何かが喉を通ったのは確かだった
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颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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