公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

文字の大きさ
116 / 142
王都編

116 王都へ

しおりを挟む
 馬車はひたすら王都に向けて走っていく。

 道中はずっとミーチャと王の三人旅だ。

 出来れば、王都までの道のりはミーチャと一緒に色々と見物をしながら、旅をしたかったな。

「ロスティ君はかなり顔に出やすい性格のようだな。まぁ、嘘はつけないということか? ミーチャもその分、楽をしているのではないか?」

「あまりそういうことは言わないで下さい!! それがロスティのいいところでもあるんですから」

「それは済まなかったね。そういえば、公国に行ってきたという話はしたかな?」

 首を横に振る。

「結構傑作だったな。君の父上をバカにするようだが、あの者はダメだな。先祖の威光しかない男のようだ」

 何があったか分からないが、同意だな。

 とはいえ、恨みつらみがあるとは言え、自分の実の父を卑下することは出来ない。

 じっと黙っていると、王は小さく頷いた。

「うむ。まぁ、独り言として話そう。やはりロスティ君の言う通り、代役を立ててきたよ。一見するだけでは分からないほどだった。だが、正体が分かってしまうと公主の狼狽ぶりは大層なものだった。おかげで、大きな利権を引き出すことに成功した」

 利権と言えば、思いつくのは鉱山か。

 前に話したように国境近くの場所だろうか。

「ロスティ君の勧め通り、国境付近を指定つもりだったが、向こうから言ってきたよ。あの場所ならば、鉱石の運搬は容易だし、仮に襲われても王国からすぐに兵を向けることが出来るな。もっとも、あの男にそれだけの度胸があるとは思えないが」

 国境付近の鉱山は本当に王国にとっては、これ以上ないほどの優良なものだ。

 とはいえ、本当に鉱石が算出するかは未知数だ。

 一応、鉱夫達の言葉を信じた形になっているが……

「いや、絶対に出るさ」

 その根拠は?

 と思ってみたが、そんなものは神にしか分からない。

 この言葉を言えるのが、王なのだろうな。いや、王だからこそ、この言葉なのか。

「ところで、その代役の人はどうなったんですか?」

「さあね。おそらくだが、私が看破していなければ、すぐに殺されていただろう。しかし、ミーチャとして振る舞うことを続けなければならなくなったからね。生かしておくだろうけど……公主も頭が痛いだろうな」

 生かしておくくらい、なんてことはないだろうに。

 何が問題なんだ?

「私は本当の姿を見たんだけどね。ミーチャとは似ても似つかない娘だった。だから、あの変身のために相当な費用と魔道具を使っているだろう。そうなると、下手をすれば、それだけで公国は破産するかも知れないな。それに変身の魔道具を秘密裏に作らせて、公国に流すだけで結構な儲けが期待できるんじゃないか?」

 そこまでして、偽物を作り上げていたのか。

 僕が言うのも何だが、一番公国にとって傷が浅く済むは、正直に王国に話すことだったと思う。

 だが、公主にはそれが出来ない理由でもあったのだろう。

 それは多分……

「ロスティ君。祖国を思い出すのはいいが、もっと考えなければならないことがあるのではないか?」

 王はミーチャに視線を送った。

「王国のミーチャ王女が二人いることになる。どちらも同じ容姿だ。騒ぎになると思わないか?」

 それを危惧して、ヘスリオの街で魔道具を揃えようとしたんだ。

 もっとも、こんなに早く魔道具が消耗してしまうとは思ってもいなかったけど。

 ミーチャも驚いていたくらいだ。

 ヘスリオの街にこれから行くという選択肢は出来ない。

 ミーチャの姿を晒すわけにはいかない。

 だったら、僕一人で行く?

 ないな。ミーチャと離れるなんて選択肢はありえない。

「ロスティ。すごく嬉しいことを考えてくれているよね?」

 本当に顔に出てしまっているのか?

 ……まぁいいか。

 そうなると僕達の正体を知っている人から、魔道具を融通してもらうという選択肢しかない。

 僕達の正体……魔道具は高級品……誰でも手に入るわけではない。

 使っている魔道具は国宝級……

 うん。目の前にいる。

「うむ。結論が出たようだな」

「魔道具を譲ってもらえませんか?」

「実に素晴らしい!! では、差し上げよう」

 そういって、対となる指輪を手渡してきた。

「これは?」

 そういってしまうほど、準備が良すぎる。

 まるで魔道具が壊れることを知っていたかのようだ。

「実は、君たちに謝罪をしなければならない。黙っていてもバレない自信はある……が、ミーチャに嘘はつきたいくないのだ。魔道具が壊れたのは、私が原因だ。その理由は……教えられないが」

 もし、それが本当ならば、なんらかのスキルが発動したからなのだろう。

 しかし、魔道具が壊れるスキルか……なんとも凄そうだな。

「だから、必ず困ると思ってな。用意をしていたのだ。間に合ってよかった」

「全然、間に合ってないわよ!! 私達、冒険者から襲われたのよ!? どうしてくれるのよ!!」

 ミーチャの凄い剣幕にさすがの王もたじろいでいるが、いい気味だと思ってしまった。

 もっと言ってやれと思っていたら、王に睨まれてしまった。

 また、顔に出ていたか?

「まぁ、とにかく、これを使ってくれ。ただ、前に使っていたものの劣化版と思ってくれ。効果もそこまで長持ちはしないはずだから、それまでに新しいものを作らねばならない」

 劣化版とは言え、使えれば振り出しに戻ったようなものだ。

 ヘスリオの街に行って……

「それは無理だぞ。ロスティ君。当初の目的を思い出してくれ。君はユグーノの民の娘を救うために、王都に待機していなければならないんだ。ヘスリオは王都からかなりの距離だ。すぐに対応が出来ない」

 そうはいっても魔道具を求めるのなら、ヘスリオしかないのでは?

 たしか、王がそう言っていたはず。

「ヘスリオほどではないが、王都にもそれなりに錬金術師と金細工師がいる。王宮抱えの者もいるから、その者に作らせてみせよう。腕はヘスリオの職人には劣るだろうが……それなりのものを作ってくれるはずだ」

 王宮抱えといえば、本来は王国随一の職人と相場は決まっているはずだが、随分と評価が低いんだな。

「ヘスリオは特別な土地でな。本来であれば、そこの者たちを招聘したいのだが……残念ながらそれが出来ない理由があるのだ。ロスティ君も直に見れば、すぐに分かることだ。まぁ、なかなか難儀な者たちの集まりなのだよ。ヘスリオは」

 そう聞いてしまうと、ものすごく興味が湧いてくるな。

 ヘスリオ。一体、どんな土地なんだろうか。

 ミーチャと旅がしたいな。

「私もよ。ロスティ」

 声に出ていたのかな?

 まぁいいか。

「分かりました。ルーナ救出までは王都で魔道具を探してみようと思います。ちなみに僕達は王都のどこに滞在するのでしょうか?」

 まさか、王宮で寝泊まりするということはないだろう。

 連絡が出来るようにしておかなければならない。

 王宮の人間が出入りしても、あまり驚かない場所が望ましい。

「決まっているではないか。王宮だ」

 そんな……バカな。

 僕もミーチャも今は庶民だ。

 王宮に庶民を入れるなんて、狂気の沙汰だ。

「変かい? 実は私の身辺は物騒になってきているからね。君たちに護衛を頼むのが一番だと思ってね。なにせ、S級冒険者。それにミーチャは勝手を知っている。これ以上の護衛はいないだろ?」

 なんだか、言いくるめられている気もするが。

 いや待て。ミーチャは王宮にはいたくないはず。

「私は大丈夫よ。ロスティが一緒だから。むしろ、ロスティと一緒なら王宮も楽しいと思うの」

 どうなっているんだ?

 これでは断れないじゃないか。

「ロスティ君。どうやら決まりのようだな。まぁ、王宮にいれば便宜を図ってやることも容易い。悪いようにはしないから」

 ……どうやら、王宮で寝泊まりすることが決定してしまいました。
 
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...