追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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ダンジョン

第45話 モンスターの体液は甘いようです

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三人でたどり着いたのは殺風景な空間だった。

なんというか……何かの巣に迷い込んだような……。

「マリアさん、ここは?」

なんで、この人……

さっきから笑っているんだ?

「ええ。ロックハニーというモンスターの巣よ。ちょっと刺激をすると飛びかかってくるわ」

聞いたことのないモンスターだな。

でも、名前からしてもい岩のように硬そうな名前だ。

「僕としては出来れば、一対一で戦いたいんですが……」

プシュ……

何かを掛けられた。

「なにを……」
「これはね。ロックハニーのフェロモンよ」

フェロモン?

何を言って……。

「お姫様にも……」

プシュッ……

「ちょっと、何をするのかしら?」
「これはね、メスにしか反応しないフェロモンよ」

……なるほど。

どうやら、この巣にはメスはほとんどいないらしい。

つまり、このフェロモンを使えば、一対一に持っていけるってことか……。

さすがは博識な冒険者だ。

「ありがとうございます。マリアさん」
「いいえ。どういたしまして……私にも掛けておこうかしら?」

……わざわざ違う瓶にする必要があるのかな?

まぁいいか。

さて……ついに調査か。

「フェリシラ様は見ていてもらえますか?」
「……分かりましたわ。でも、ライルが危なくなったら、助けに行きますね」

頼もしい人だ……。

「マリアさん、すみませんけど……」
「わかっているよ。護衛をしてほしいんだろ? やってあげる」

いい人だなぁ。

僕は『鑑定』メガネを装着した。

これで相手の状態が少しは分かるはずだ。

……ん?

マリアさんの剣って……。

まぁいいか。

さて……じゃあ行きますか。

「こっちよ。この穴の奥に巣があるの」

……怖いな。

これが初めてのモンスターとの戦いだ。

自然と剣を握る手に力が入る。

「あ、あそこに一匹いるわ」

ちょうど巣から飛び出してきた奴だ……。

「さあ、来るわよ!!」
「はい!!」

大丈夫だ……フェロモン剤を使っているんだ。

最悪、逃げられる!

近づいてくるロックハニー……。

ハチのような外見だが、ごつごつとした岩で身を守っている。

それにデカイ。

人の顔くらいはあるだろうか?

おっと……

僕は『鑑定』スキルを使った。


ロックハニー
性別:オス
HP: 300/300
弱点; 火

情報はこれだけか……。

僕は油断をしていた。

「避けて!」

ロックハニーがお尻の針を突き出すように突進してきた。

マリアさんの声がなかったら、危なかった。

横に大きく飛び、なんと回避をする。

思ったよりも動きは早くない……。

これなら……。

ロックハニー目掛けて、走った。

そして……。

「ふん!」

という掛け声と共にロックハニーを切りつけた。

これは鍛冶で剣を鍛える時の掛け声だ。

全身に力が奮い立たせられるんだ。

「きゅっ」

そんな声がしたと思ったら、ロックハニーは絶命していた。

一撃……だった。

「やるじゃない! ロックハニーを一撃で倒せるなんて! これなら、一人でもなんとかなるんじゃない?」

ん?

僕はこの剣が十分にモンスターを攻撃できたことが分かって、すでに満足だ。

もう、モンスター討伐をするつもりは……。

剣の状態を確認する。

■■■■剣
品質:B
耐久度: 98/1500

……やはり、耐久度は下がってしまうか。

だが、これで分かってきた。

僕の剣の欠点が……。

『研磨』はたしかに凄いスキルだ。

品質を一段階上げてくれる。

だが、その代償として耐久度を下げてしまう。

それにモンスター一匹を倒しただけで、少しとは言え耐久度は下がってしまった。

こんな剣ではとても実践的な武器とは言えないよな。

……でも、まぁ、これが分かっただけでも調査に来た甲斐はあったな。

「マリアさん、ありがとうございました。これで……あれ?」

マリアさんが消えていた。

辺りを見渡すと、ずいぶん遠くに移動していた。

どういうつもりだ?

もしかして……トイレか?

これは不用意に追いかけるのは可哀想だろう。

ロックハニーも巣から出てくる様子もないし……

「ライル。とっても格好良かったわ」
「フェリシラ様。ありがとうございます」

こんな美人に格好いいだなんて……嬉しすぎるぅぅ!!

もっと、やっちゃう?

いや、やめておこう……耐久度が心許ないし、僕は戦士ではない。

それにマリアさんも近くにいないしな……。

「……フェリシラ様? 何をなさっているんですか?」
「え? いや、このモンスターから出ている液体からとっても甘い香りがして」

食べた!?

公爵令嬢がモンスターの体液を!?

「甘い!! とっても甘いですわ!! ねぇ、ライルも舐めてご覧なさいよ!!」

なんか、いやだな……。

でも……。

フェリシラ様が液をすくい取った指先を僕の方に向けてきた。

これって……。

「さあ! すごいから! ね?」

……いいのかな?

僕はゆっくりと指に口を近づけていった。

「んっ」

変な声を出さないでくれ。

フェリシラ様の指に絡みつく液を舌で丹念に舐めていく。

……。

「美味しいですね!」
「でしょ!? 見かけに反して、この甘さはある意味卑怯だわ!」

イマイチ、判断基準がわからないけど……。

フェリシラ様の指を舐めてしまった……。

これがこんなに幸せだとは……。

僕にとっては、フェリシラ様の指はある意味卑怯だと思う。

さて……。

「イディア様とアリーシャを探して、皆で帰りましょうか?」
「そうね……でも」

そんなにロックハニーの体液が気に入ったのかな?

でも、残念ながら、持ち帰れる瓶を持ってきていないんだよな。

「今回は諦めましょう」
「ええ……本当に残念だわ」

僕は自然とフェリシラ様の手を取り、出口に向かって足を進もうとした時だった……。

大きな石が頭上を飛び越していった。

これが何なのか、全く分からなかった。

ただ、それが壁にぶつかった時、投げた人だけはすぐに分かった。

「マリア……さん」
「やっと……お前らに復讐を……」

何を言っているんだ?

「お前らはここで死ねばいいんだよ!!」

マリアさんが叫ぶと後ろの壁から嫌な音が聞こえてきた。

……ロックハニーが群れで動く音だった……。
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