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スラム編
種探し
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畑作りは順調に進んでいた。マリアは相変わらず、僕の後ろで息を荒くしている。子供たちの安全が心配で、つい呼吸も忘れてしまうのだろう。その気持ち、よく分かります。
「シスター。子供たちは大丈夫ですよ。危険な道具は使わないですし、あとは収穫まで雑草との戦いですね。だから、そんなに苦しがらないでくださいね」
「苦しいのは抱きつきたい衝動を抑えているだけで……いえ、そうですね。ロラン君は本当に優しいですね。偶々、種が手に入ってのも神の差配でしょう」
種の件は本当に助かった。畑を作ることに意識を集中していたあまり、種を完全に失念していた。そのせいで畑作りは一旦中止となり、しばらく放置することになってしまったのだ。
種なんて……と思うかも知れないけど、意外と見つからないものなのだ。なぜかというと、種は食料をもたらすもので、王国が管理することになっているんだ。種は王国に必要な量を申請することで手に入る仕組みになっている。そんなこと、当然僕が知るわけがない。
マリアに相談して、教会の本部というところに掛け合ってくれたが、より良い返事をもらうことは出来なかったみたいだ。どうやら申請の期限が過ぎていたみたいなんだ。そうなると種を手に入れる手段は、分けてもらうか、盗むかしかない。
だけど、どちらも犯罪になってしまう。分けてもらうのは、もらった方が罪に問われることはないけど、分けた方が罪に問われるんだ。盗むのは、論外かな。
「ロラン君。こうなったら、野草を探してみましょう。野生の果物でも美味しいのがたくさんあるんですから、野菜だってあるかも知れないじゃないですか」
マリア……それは無理がある気がするよ。野菜は何代にもわたって品種改良を繰り返して、美味しくてたくさん穫れるようになるって本に書いてあったんだ。野生にあるもので食べられるものはあるかも知れないけど、多分……期待できるものは手に入らないと思うんだ。
「ああ、諦めかけて落ち込んでいるロラン君もかわいいわ。抱きついてもいいかしら? いいわよね」
最近は有無も言わずに抱きついてくることが多くなってきた気がする。過度な挨拶は相手に嫌われることをそろそろマリアに教えたほうがいいだろうか? でも、この柔らかい感触に包まれるだけで、ちょっと幸せな気分になるから、いいか。
抱きつきながら、マリアが優しい声で話しかけてきた。
「ロラン君らしくないですよ。私はロラン君をどんなに可能性が低いことでもやる子だと思っていました。本に書かれていたから何だというのです? この世界には本に書かれていない未知なことが山ほどあるんですよ。それを知るために人は行動するんです。知識を理由に行動を止めてしまうのは愚かな事なんですよ」
温かい言葉がじんわりと心に染み渡っていく。そうだよね……。
「ごめんなさい。シスター。種を探してみるよ。どうせ、種が手に入る方法がないんだから、探すしかないんだよね。孤児院の子供を借りていくね」
「ええ。でも、あまり遠くには……そういえば!! もしかしたら、あそこならあるかも」
マリアの声色がちょっと明るくなったような気がする。どうやら、種の在り処に心当たりがあるようだ。それはスラムの郊外とも言うべき場所。このスラムはかつての王都として栄えた場所ということだけあって、古びた城壁のようなものが各地に残されている。
マリアがいうには、かつては城壁の近くで畑が耕されていて、旧都の人達の食料を供給していたらしい。そのあたりには、種を保管する倉庫もあるかも知れないというのだ。
話だけ聞く限りでは気の遠くなる話だけど、野生種を探すよりかはマシかも知れない。それにこっちには孤児院の子供たちが手伝いにやってきてくれている。探し物は人数が多いほど有利になるんだ。
「みんな、今日は畑仕事じゃなくて、宝探しをしてもらうことになったんだ。お宝は昔々、王都で作られていた伝説の野菜の種だ。それがスラムの外周のどこかに眠っているかも知れないんだ。誰が一番早く見つけられるか競争だ。あっ、でも一人で行動しないようにね。誰かと行動するんだよ」
子供たちは元気よく返事をして、一斉に城壁に向かって駆け出していった。さて、僕も探さないとな。ここで見つかればいいけど……探す場所はかなり広い。だって、旧都の城壁全部だからね。今日中に見つかればいいけど……。
「ロランお兄ちゃん。一緒に探そう」
「やあララ。ララがいれば心強いけど……どうしちゃったの?」
ララの手がニッジの首根っこを捕まえてのが目に入った。ニッジは諦めているのか、苦しそうな顔をしながら僕に手を上げ挨拶だけしてきた。
「やあ。ロラン。今日もいい天気だね」
ニッジの頑張って済ましている姿が痛ましく感じてしまう。
「ララ。ニッジを離してやってくれないかな? 多分、逃げたりはしないと思うから」
「うん。お兄ちゃんがそう言うなら。ニッジ、逃げちゃダメだからね」
二歳下の子供に説教されるニッジ。サボり癖さえなければ、いいお兄ちゃんとして皆を支えてくれただろうに。
「オレは別にサボりたいわけじゃない。下らないことで動きたくないだけだ。種探し? 馬鹿馬鹿しい。飯なんて、わざわざ畑で作る必要なんてあるかよ。適当にその辺の物を食べてればいいんだよ」
そんなことをいうと、近くにあった木に器用に登って、なにやら木の実をもいで持ってきた。
「な? 食い物なんてその辺にあるんだよ。畑なんて……げっ!! 酸っぱくて食えねぇ」
「それ、食べ物なんだろ? 全部食べろよ。ニッジ」
ニッジは悪びれもなく、採ってきた木の実を投げ飛ばした。
「気が変わった。ロラン‼ 行くぞ。野菜の種を見つけに行くんだ」
ニッジの考えの切り替えの速さは嫌いではないな。空回りしているような気もするけど……。ララはニッジに冷たい視線を送っている。もうちょっとニッジには温かい目線を送ってほしいな。きっと、いい大人になると思うんだ。
三人で近くの倉庫から手当り次第探すことにした。といっても身近なところはすでに子供たちに荒らされた後だけど。もしかしたら、隠されいるかも知れない……本当にあったよ。ちょうど棚が壊れた場所の隙間に小さな麻袋が転がっているのが見えた。開けてみると、黒い粒と文字が書いてある紙が……。
「見つけちゃったよ」
「さすがロランお兄ちゃん!! 一軒目で見つけるなんて、きっとシスターが聞いたら大喜びだね」
するとニッジが喜んでいる二人の間に割り込んできて、袋を奪い取られてしまった。そして、中を覗いたり、手の上で袋を投げたりして何やら考え事をしている。
「なあ、この袋に入っている種を畑に撒くんだよな?」
それ以外に何があるというのかな? ニッジ。
「足りないぞ。全然足りないぞ。オレの感覚が正しければ、畑の半分も撒ければ上出来だろう」
「えっ!? でも結構、量があるじゃないか。畑だってそんなに大きくないし」
ニッジは何故か首を横に振った。
「この種の全部が使い物になるとは思わないほうがいいぞ。これがいつの種か分からないけど、使えるのは……二割がいいところだな。それ以外は撒いても意味がない。たしか教会の図書室で見たことがある。種は古くなればなるほど成長しにくいって」
どういう事だ? いや、それよりも……ニッジがなぜか頼もしく見えてくる。どうやらニッジは野菜の栽培に関して、かなりの知識を持っていそうだ。
「ニッジ。じゃあ、どうすればいいんだ?」
「決まっているだろ? 種を探せばいいんだ。むしろ、色々な野菜が欲しいな」
ニッジの思わぬ一面を発見することになった。非力でサボり癖のあるニッジが一躍、畑に詳しいニッジになった。
実はこの辺りから始めたのは正解だったようで、次々と子供たちが種を持ってやってくるようになった。僕が見つけたような小袋で10袋程度。野菜の種類で言えば、残念ながら三種類程度だった。それらをニッジが調べている。
「ニッジ。どうかな?」
「これだけあれば大丈夫だと思うぞ。ただ……これは使えないな。時期が悪い。もう一つも結構怪しいな。半分だけ種を残して、試してみよう。うまくいけば、儲けものだな」
おお!! 僕も農業の本を熟読したが、種までは詳しく載っていなかった。この辺りはニッジに任せておけば問題なさそうだね。
「ニッジ。これから畑についてはニッジが子供たちに指示を与えてくれないか? 僕より適任だと思うんだ。どうだろう? ララもそれでいいだろ?」
「ロランお兄ちゃんがそういうなら、私は気にしないよ」
「オレは……まぁやってやってもいいぞ。ただし、出来た野菜はオレが先に食べれるっていうのが条件だ」
教会に戻ってから、今日のことを説明して、ニッジに畑を任せることをマリアに告げた。
「さすがはロラン君ですね。たった一日で、いえ数時間で問題を解決してしまうなんて。これも神の差配なのでしょう。神に感謝を」
まぁ、それはいいんだけど。ニッジについては?
「ああ。分かりました」
えっ? 軽くないか? あのサボり癖のあるニッジが仕事を受けたんだよ。これは凄いことだと思うんだけど。それともマリアはあまりニッジに興味がない?
「違いますよ。ニッジはそれくらい簡単に出来る賢い子なのです。人知れず努力家で、勉強家なんですよ。私達の前では、興味が無さそうな態度を取っていますが。それでも、ニッジが変わってくれたことはとても嬉しいんですよ。それも全てロラン君が導いた結果なのでしょう。私はその結果を甘んじて受け入れているだけなのです」
マリアはニッジの能力を見抜いていたってことかな? やっぱり大人はすごいな。僕にはニッジが本気でやる気がないものだと思っていたけど……僕もマリアみたいに人を見る目を養いたいな。もっとマリアを知れば、そのヒントが得られるかも知れないな。
「シスター、お願いがあるんです」
「なんですか?」
「僕、シスターのことを何でも知りたいんです。教えてもらえないでしょうか?」
「えっ⁉ どうしましょう。そんなことを急に言われても……ロラン君はまだ子供なんですから、そんな事はもうちょっと大人になってから……そうしたらロラン君の知りたい私を全部教えてあげます」
子供であることが恨めしい。せっかくのチャンスをあと何年待てばいいんだ。でもマリアは絶対に約束を破ったりする人じゃない。
「絶対ですよ!!」
「ああ神よ。すべてを曝け出したい衝動に駆られている私をお許し下さい。ええ。絶対です。ロラン君も忘れないでくださいね!! 絶対ですよ」
なぜかマリアからの威圧に押されっぱなしになってしまう。マリアの教育熱心さには頭が下がるな。師匠もこれくらい教育熱心だったら……もう少し尊敬できるのにな。
「シスター。子供たちは大丈夫ですよ。危険な道具は使わないですし、あとは収穫まで雑草との戦いですね。だから、そんなに苦しがらないでくださいね」
「苦しいのは抱きつきたい衝動を抑えているだけで……いえ、そうですね。ロラン君は本当に優しいですね。偶々、種が手に入ってのも神の差配でしょう」
種の件は本当に助かった。畑を作ることに意識を集中していたあまり、種を完全に失念していた。そのせいで畑作りは一旦中止となり、しばらく放置することになってしまったのだ。
種なんて……と思うかも知れないけど、意外と見つからないものなのだ。なぜかというと、種は食料をもたらすもので、王国が管理することになっているんだ。種は王国に必要な量を申請することで手に入る仕組みになっている。そんなこと、当然僕が知るわけがない。
マリアに相談して、教会の本部というところに掛け合ってくれたが、より良い返事をもらうことは出来なかったみたいだ。どうやら申請の期限が過ぎていたみたいなんだ。そうなると種を手に入れる手段は、分けてもらうか、盗むかしかない。
だけど、どちらも犯罪になってしまう。分けてもらうのは、もらった方が罪に問われることはないけど、分けた方が罪に問われるんだ。盗むのは、論外かな。
「ロラン君。こうなったら、野草を探してみましょう。野生の果物でも美味しいのがたくさんあるんですから、野菜だってあるかも知れないじゃないですか」
マリア……それは無理がある気がするよ。野菜は何代にもわたって品種改良を繰り返して、美味しくてたくさん穫れるようになるって本に書いてあったんだ。野生にあるもので食べられるものはあるかも知れないけど、多分……期待できるものは手に入らないと思うんだ。
「ああ、諦めかけて落ち込んでいるロラン君もかわいいわ。抱きついてもいいかしら? いいわよね」
最近は有無も言わずに抱きついてくることが多くなってきた気がする。過度な挨拶は相手に嫌われることをそろそろマリアに教えたほうがいいだろうか? でも、この柔らかい感触に包まれるだけで、ちょっと幸せな気分になるから、いいか。
抱きつきながら、マリアが優しい声で話しかけてきた。
「ロラン君らしくないですよ。私はロラン君をどんなに可能性が低いことでもやる子だと思っていました。本に書かれていたから何だというのです? この世界には本に書かれていない未知なことが山ほどあるんですよ。それを知るために人は行動するんです。知識を理由に行動を止めてしまうのは愚かな事なんですよ」
温かい言葉がじんわりと心に染み渡っていく。そうだよね……。
「ごめんなさい。シスター。種を探してみるよ。どうせ、種が手に入る方法がないんだから、探すしかないんだよね。孤児院の子供を借りていくね」
「ええ。でも、あまり遠くには……そういえば!! もしかしたら、あそこならあるかも」
マリアの声色がちょっと明るくなったような気がする。どうやら、種の在り処に心当たりがあるようだ。それはスラムの郊外とも言うべき場所。このスラムはかつての王都として栄えた場所ということだけあって、古びた城壁のようなものが各地に残されている。
マリアがいうには、かつては城壁の近くで畑が耕されていて、旧都の人達の食料を供給していたらしい。そのあたりには、種を保管する倉庫もあるかも知れないというのだ。
話だけ聞く限りでは気の遠くなる話だけど、野生種を探すよりかはマシかも知れない。それにこっちには孤児院の子供たちが手伝いにやってきてくれている。探し物は人数が多いほど有利になるんだ。
「みんな、今日は畑仕事じゃなくて、宝探しをしてもらうことになったんだ。お宝は昔々、王都で作られていた伝説の野菜の種だ。それがスラムの外周のどこかに眠っているかも知れないんだ。誰が一番早く見つけられるか競争だ。あっ、でも一人で行動しないようにね。誰かと行動するんだよ」
子供たちは元気よく返事をして、一斉に城壁に向かって駆け出していった。さて、僕も探さないとな。ここで見つかればいいけど……探す場所はかなり広い。だって、旧都の城壁全部だからね。今日中に見つかればいいけど……。
「ロランお兄ちゃん。一緒に探そう」
「やあララ。ララがいれば心強いけど……どうしちゃったの?」
ララの手がニッジの首根っこを捕まえてのが目に入った。ニッジは諦めているのか、苦しそうな顔をしながら僕に手を上げ挨拶だけしてきた。
「やあ。ロラン。今日もいい天気だね」
ニッジの頑張って済ましている姿が痛ましく感じてしまう。
「ララ。ニッジを離してやってくれないかな? 多分、逃げたりはしないと思うから」
「うん。お兄ちゃんがそう言うなら。ニッジ、逃げちゃダメだからね」
二歳下の子供に説教されるニッジ。サボり癖さえなければ、いいお兄ちゃんとして皆を支えてくれただろうに。
「オレは別にサボりたいわけじゃない。下らないことで動きたくないだけだ。種探し? 馬鹿馬鹿しい。飯なんて、わざわざ畑で作る必要なんてあるかよ。適当にその辺の物を食べてればいいんだよ」
そんなことをいうと、近くにあった木に器用に登って、なにやら木の実をもいで持ってきた。
「な? 食い物なんてその辺にあるんだよ。畑なんて……げっ!! 酸っぱくて食えねぇ」
「それ、食べ物なんだろ? 全部食べろよ。ニッジ」
ニッジは悪びれもなく、採ってきた木の実を投げ飛ばした。
「気が変わった。ロラン‼ 行くぞ。野菜の種を見つけに行くんだ」
ニッジの考えの切り替えの速さは嫌いではないな。空回りしているような気もするけど……。ララはニッジに冷たい視線を送っている。もうちょっとニッジには温かい目線を送ってほしいな。きっと、いい大人になると思うんだ。
三人で近くの倉庫から手当り次第探すことにした。といっても身近なところはすでに子供たちに荒らされた後だけど。もしかしたら、隠されいるかも知れない……本当にあったよ。ちょうど棚が壊れた場所の隙間に小さな麻袋が転がっているのが見えた。開けてみると、黒い粒と文字が書いてある紙が……。
「見つけちゃったよ」
「さすがロランお兄ちゃん!! 一軒目で見つけるなんて、きっとシスターが聞いたら大喜びだね」
するとニッジが喜んでいる二人の間に割り込んできて、袋を奪い取られてしまった。そして、中を覗いたり、手の上で袋を投げたりして何やら考え事をしている。
「なあ、この袋に入っている種を畑に撒くんだよな?」
それ以外に何があるというのかな? ニッジ。
「足りないぞ。全然足りないぞ。オレの感覚が正しければ、畑の半分も撒ければ上出来だろう」
「えっ!? でも結構、量があるじゃないか。畑だってそんなに大きくないし」
ニッジは何故か首を横に振った。
「この種の全部が使い物になるとは思わないほうがいいぞ。これがいつの種か分からないけど、使えるのは……二割がいいところだな。それ以外は撒いても意味がない。たしか教会の図書室で見たことがある。種は古くなればなるほど成長しにくいって」
どういう事だ? いや、それよりも……ニッジがなぜか頼もしく見えてくる。どうやらニッジは野菜の栽培に関して、かなりの知識を持っていそうだ。
「ニッジ。じゃあ、どうすればいいんだ?」
「決まっているだろ? 種を探せばいいんだ。むしろ、色々な野菜が欲しいな」
ニッジの思わぬ一面を発見することになった。非力でサボり癖のあるニッジが一躍、畑に詳しいニッジになった。
実はこの辺りから始めたのは正解だったようで、次々と子供たちが種を持ってやってくるようになった。僕が見つけたような小袋で10袋程度。野菜の種類で言えば、残念ながら三種類程度だった。それらをニッジが調べている。
「ニッジ。どうかな?」
「これだけあれば大丈夫だと思うぞ。ただ……これは使えないな。時期が悪い。もう一つも結構怪しいな。半分だけ種を残して、試してみよう。うまくいけば、儲けものだな」
おお!! 僕も農業の本を熟読したが、種までは詳しく載っていなかった。この辺りはニッジに任せておけば問題なさそうだね。
「ニッジ。これから畑についてはニッジが子供たちに指示を与えてくれないか? 僕より適任だと思うんだ。どうだろう? ララもそれでいいだろ?」
「ロランお兄ちゃんがそういうなら、私は気にしないよ」
「オレは……まぁやってやってもいいぞ。ただし、出来た野菜はオレが先に食べれるっていうのが条件だ」
教会に戻ってから、今日のことを説明して、ニッジに畑を任せることをマリアに告げた。
「さすがはロラン君ですね。たった一日で、いえ数時間で問題を解決してしまうなんて。これも神の差配なのでしょう。神に感謝を」
まぁ、それはいいんだけど。ニッジについては?
「ああ。分かりました」
えっ? 軽くないか? あのサボり癖のあるニッジが仕事を受けたんだよ。これは凄いことだと思うんだけど。それともマリアはあまりニッジに興味がない?
「違いますよ。ニッジはそれくらい簡単に出来る賢い子なのです。人知れず努力家で、勉強家なんですよ。私達の前では、興味が無さそうな態度を取っていますが。それでも、ニッジが変わってくれたことはとても嬉しいんですよ。それも全てロラン君が導いた結果なのでしょう。私はその結果を甘んじて受け入れているだけなのです」
マリアはニッジの能力を見抜いていたってことかな? やっぱり大人はすごいな。僕にはニッジが本気でやる気がないものだと思っていたけど……僕もマリアみたいに人を見る目を養いたいな。もっとマリアを知れば、そのヒントが得られるかも知れないな。
「シスター、お願いがあるんです」
「なんですか?」
「僕、シスターのことを何でも知りたいんです。教えてもらえないでしょうか?」
「えっ⁉ どうしましょう。そんなことを急に言われても……ロラン君はまだ子供なんですから、そんな事はもうちょっと大人になってから……そうしたらロラン君の知りたい私を全部教えてあげます」
子供であることが恨めしい。せっかくのチャンスをあと何年待てばいいんだ。でもマリアは絶対に約束を破ったりする人じゃない。
「絶対ですよ!!」
「ああ神よ。すべてを曝け出したい衝動に駆られている私をお許し下さい。ええ。絶対です。ロラン君も忘れないでくださいね!! 絶対ですよ」
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