スラム出身の公爵家庶子が、スラムの力を使って、後継者候補達を蹴落として、成り上がっていく。でも、性悪王女が可愛くてそれどころではないかも

秋田ノ介

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スラム編

第24話 王国印の肥料

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 ガーフェの屋敷で早速、肥料作りについて話し合いをすることになった。

 「肥料、ですか……なるほど。盲点でしたな。それならば我々でも作ることが出来そうですな。それに嫌な作業と言っても、スラムの人間たちで気にするような者もありますまい。それにしても、肥料ですか……いやはや、恐れ入りました」

 ガーフェは肥料作りに関心を持ってくれたが、問題は色々あると思う。肥料作りはなるほど、王国中で誰も作らないものだから、そこに入り込めればかなりの収入を見込めるだろう。しかし、一方で肥料という性質上、口に入るものに関わっていくため安全性が必要となる。要は、信用だ。

 スラム産の肥料がどんなに優れていても、信用がなければ無駄に終わってしまう可能性が高い。それにガーフェの名前で皆に命令する形になるのだ。失敗すれば、すべてガーフェの責任となる。それだけはなんとか避けたいところだ。

 「肥料づくりについては、ニッジに頼もうと思う。ニッジならその辺りも詳しいだろうし、ガーフェと組んでスラムの人達を使えば、立派な肥料を完成させてくれるだろう。もちろん僕も手伝うつもりだが……」

 「ロラン様は何をなさるおつもりですか?」

 問題点の解決だ。スラム産の肥料になんとか王国のお墨付きを貰いたいところだ。そうすれば、自然と信用もついてまわってくる。

 「シャンドル公に頼んでみようと思うんだ。きっと相談にのってくれるはずだよ」

 「ふむ。普通ではありえない話ですが、ロラン様ならばシャンドル公も耳を傾けるかも知れませんな。シャンドル公はロラン様にご執心の様子でしたから」

 そうなのかな? シャンドル公はそういう人なんではないかな? もしかしたら僕が子供だからというのもあるかも知れないけど……だとしたら、そこは最大限利用しないとね。

 「分かりました。そういうことであれば、我々は肥料づくりに専念したいと思います。ただ問題が……」
 
 なんだろ?

 「原料がありません」

 原料? 貝殻なら大量にあるはずだけど……そういえば、砂金が採れる海岸付近一体はすべて王国の管理下に入ったんだっけ。そうなると貝殻とはいえ、無断で採れば、最悪……処刑だ。なかなかうまくいかないものだな。

 「それについてもシャンドル公に頼んでみるよ」
 「そうですか。そうなると当面は肥料作りは出来そうにはありませんな。とりあえず、ニッジ君を……」

 ちょっと待て。あるじゃないか。貝殻……。

 「ひい!! オレの貝殻がぁ!!」

 本当に溜め込んでいたんだな。まさか、こんな山のような貝殻をスラムの一角でお目にかかるとは思ってもいなかった。何年? いや、十数年は溜め込んでいたんじゃないのか?

 「いやぁ、実は半年で……」

 すごいな。このスキンヘッド、すごいな。え? この山を半年? 一体、どれだけ貝殻が好きなんだ? まぁ、これはスラムのために有意義に遣わしてもらうことにしよう。ただ、無償で没収するのは気が引けるから……砂金で作った貝殻を土魔法で作った物を渡した。

 「これをオレに? 金じゃないですか……でもな、形が違うんですよ。これ!! ここはもう少し曲線になってないと……まさか、金だからって何でもいいというわけではないんですよ!! 特に貝殻に関しては……残念ですがロラン様とは貝殻を語ることはできそうにないです。こんな不出来な貝殻も私のコレクションに入れることはできません。お返しします」

 金の貝殻を投げ捨てるように返されてしまった。喜んでもらえると思ったのに……説教もされて、なんか色んな意味でショックだ。これからはプレゼントは気をつけていかないとな。

 まぁ、なんだかんだで無償で大量の貝殻を手に入れることが出来た。ここからはニッジの出番だな。

 「久しぶりだ。やっとオレの出番が回ってきたんだな。しかも、農業に関することはオレの得意分野だ!!」

 肥料を今後、王国の農業地域に輸出をすることを説明し、スラムを一大肥料生産地にすることを目標にすることを伝えた。材料はスラムで集められるものなら何でも利用していいし、目処が立つならば外から材料を仕入れてもいい。それに場所も広大な場所を使うつもりだ。

 「それはすごいな。その仕事をオレが取り仕切るってことか?」
 
 「ニッジとガーフェだね。ニッジは主に現場を担当してくれればいい。肥料の製造の責任者だ。ガーフェは人とを手配して、指揮をしてもらうことになっているんだ」

 「そりゃあ、いいな!! シャンドル公がオレを評価してくれているんだろ? だったら、肥料づくりも成功させて、もっといい評価を貰いたいところだな」

 ニッジにはシャンドル公と話した内容については全て教えている。僕の評価が高ければ、という全体はあるけどシャンドル公はニッジを領内で雇い、学校まで出してくれるという待遇まで約束してくれた。それを聞いてから、ニッジの興奮が収まる気配がない。

 「本当に騎士になれるかも知れないぞ。オレがシャンドル領に行くときはロランも一緒なんだろ? 一緒に家を興せるくらいに頑張ろうな」

 この言葉を何度聞いたことか。僕には家を興して、貴族になるという夢は今のところまったくない。とりあえず、目の前のスラムの問題を片付けることに専念している状態だ。

 「肥料作りは、とにかく色々なものが使えるんだ。残飯や雑草、木くず、糞……自然にあるあらゆるものが使える。しかし、それらを混ぜたところでいい肥料が作れるというものではない」

 ニッジの講釈が始まった。肥料作りは、様々な物を混ぜ合わせて熟成という過程が必要になるらしい。その先によい肥料として利用されるというのだ。そのため、熟成の成否はとても重要でもっとも神経を使う作業となる。もっとも、条件さえ満たせば、放置しても熟成は進む。

 「条件っていうのは、水分量のことなんだ」

 水分? と思ってしまうが、これがかなり重要なようだ。水分は多すぎると熟成ではなく腐敗が進んでしまう。一方、少なすぎると熟成が進まない。その加減が、よりよい肥料づくりには必要なようだ。

 「だから、混ぜる材料はすべて水分を調整しないといけないんだ」

 ニッジは混ぜる前に材料の段階から調整をするというけど……それよりも混ぜてから調整したほうが簡単じゃないのかな?

 「ロランの言うことは尤もだ。本来はそうしたいところだけど……混ぜてから水分を調整するのは、今は難しいんだ」

 水分が少なければ、水を足せばいい。そう思ってしまうが、実際は水を入れても混ぜるのはかなり難しいらしい。一方、多ければ、乾燥したものをいれればいい。しかし、乾燥したものを大量に入手する手段が今はないのだ。それに天日で干すと言っても、容易なことではない。

 だからこそ、混ぜる前に調整することが重要なのだという。

 「相変わらず、ニッジは凄いな。ところで、ニッジはどれくらい肥料を作ったことがあるの? それだけ詳しいってことは、教会裏の畑でも使っているとか?」

 問いかけにニッジはフッと笑った。

 「ロラン。オレたちは長い付き合いだろ? 肥料づくりなんてしているところ、見たことあるか?」

 うん、ないね。ニッジから肥料という言葉すら聞いたことがないな。ということは……。

 「今回が初めてだ。まぁ、砂金収集の時もなんとかなったし……なんとかなるだろ!!」

 その前向きな考えは嫌いじゃない……けど、不安だ。やっぱり、肥料づくりがある程度軌道に乗ってからシャンドル公に相談したほうがいいのかな? 相談しておいて、失敗しましたった事になったら、言い訳できないもんな。

 だが、そんな事は杞憂だったようだ。ガーフェがとりあえず、話だけでも通しておいたほうがよいと言うので手紙を送ることにした。

 しかし、返事は「肥料づくり? 馬鹿か?」という感じの内容だった。本当はもっと長いし、丁寧な文字で書かれてたよ。でも、取り付く島もないって感じだったかな。ただ、最後に「協力が欲しかったら、行動で示せ」と書いてあった。これがどういう意味なのか、分からなかったけど……とにかく肥料作りを続けることにした。

 時間は流れ、数カ月が経った。その間にもシャンドル公が砂金収集の進捗状況の確認などで赴くことが多く、その時に肥料の宣伝をしっかりとやっていった。おかげで、肥料に対して結構前向きになってきた雰囲気が出始めていった。

 そんな時にニッジから待ちに待った朗報がやってきた。肥料の完成だ。
 「もう少し……あと少しの時間があれば、より完璧な肥料になったはずだけど、今のままでも十分に使えるはずだ。これでシャンドル公に当たってみてくれ」

 不安と自信が入り混じった不思議な表情をニッジはしていたが、僕に不安はなかった。ニッジが大丈夫と言っているのだから、大丈夫だ。それに肥料を見てみたが、素人目には土にしか見えなかった。それだけ良いものということだろうか?

 早速シャンドル公に告げると、「効果を示せ」と返事が来た。つまり、実際に肥料を使って野菜を栽培してみろということか。ちょうど、教会裏の畑では葉物を作っている真っ最中だった。ここに肥料入りの畑とそうでない畑に分けて、実験をすることにした。

 効果は目に見えて明らかだった。

 「ロラン様。こんなに大きな玉になりましたよ。なんて素敵な玉なんでしょうか。ロラン様の方の玉もどうですか?」

 葉物は結球するもので、玉のように大きくなるのが特徴だ。しかし、マリアが玉玉と言っているのに何か卑猥な感じがするのは気のせいだろうか? いや、マリアがそんな意味で言っているわけがないか。

 そんな感じで、成果も十分に示すことが出来た。シャンドル公!! 三度目の正直。今回は絶対に納得してくれるはずだ。

 「うむ。よくぞ、ここまで頑張ったな。肥料が王国内で普及してくれるのは、ありがたいことだ。農業大臣も気にしていた様子だったからな……」

 シャンドル公は供の者から一つの紙を受け取り、僕に手渡してきた。「読め」とばかりの扱いを受けた紙には、スラム産の肥料に関して安全であることを証明すると書かれており、末尾にはしっかりと王の署名がなされていた。

 「やった!! やったぞ」

 一番欲しかったものが手に入った。これで……スラムに仕事を作ることが出来たんだ。肥料は今でこそ規模は小さいが、王国中に運び込もうと思えば何百倍という規模が必要になってくる。これではスラムだけでは人手が足りなくなってくるかも知れないな……おっと、そんな先の悩みは今、する必要はないか。

 だって、目の前にいるシャンドル公の表情が浮かないんだもん。これ、絶対なにかあるよ。もう、不安しか感じないからね。

 「糠喜びをさせてしまって悪いが……この肥料を王国中の農地で使うことは出来ないのだ」

 なぜ……?
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