婚約の署名で前世の記憶が蘇ったので、イケメンとしか結婚したくないと婚約を拒否します

みお悠瑋

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第一章 婚約は致しません!

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目が覚めると日の光がキラキラとレースのカーテン越しに差し込んでいるのが見えた。
すっとベッドから抜け出して、大きな窓に近寄ると、朝のような感じがした。
場内が見渡せる部屋だとわかる。
部屋の中に視線を戻すと、すごく豪華な部屋であることがわかる。
そして、白と金とピンク。なんて可愛い部屋。
猫足の机や椅子、ドレッサー。白い天蓋の垂れ下がったベッド。大きなドアが2つ。ちょうどいい温度の部屋。
ここは、現実なんだな。

整理してみよう。
私、前世の記憶ある。
職業は、デザイナー。
POPとかチラシとか、パッケージとか、そう言うデザインを死にそうになりながらやっていた記憶がある。
夜も遅くまでクライアントの対応をしていた。
過労死だったと思う。享年27歳。
だったろ思うというくらいには、最後の記憶が曖昧だ。
それで死んで、前世は終わったんだと思う。
その後、私はこの世界で生まれたのか……。
この世界のことを考えると、かなり空白がある。記憶が、曖昧だ。
前世を思い出した影響だろうか。

名前は、サーラ・ディ・サヴィオ。

おぼえてる。
年齢、は、17歳。うん。
この国の名前は、サヴィオ王国。
で、私が姫? ということがよくわからない。
そう言う仕事というか、公務をしていた記憶がすっぽりない。
幼少期は、広い庭、薔薇園? のようなところで、遊んだ記憶がある。ブランコに乗ってた。誰が押してくれたんだっけ……?
そのあと、うーん?
小さい頃は両親がいるようだが、顔を思い出せない。
いま、生きているのかいないのか、誰が家族なのか、わからない。
私は姫だとあのイケおじは言っていたけど、王族や、王族として行ってきたことに関する記憶がすっぽりないのかもしれない。
文字は読めるだろうかと、本棚まで歩いて分厚くて重い本を手に取り、ぱらっとめくってみる。日本語ではない文字だが、理解できているので、きっと識字はできる。
書けるのだろうか?
その本を持ったまま机に向かい、ペンと紙で自分の名前を書くと、確かに書ける。
知識は、前世の学生時代に学んだものなら覚えている。
この国に関しては、うーん……。
やっぱり断片的だ。
海に面している国で、近くに大きな国があって、この国は観光で外貨を稼いでいた、はず……?
私ってどんな人だったのだろう?
確か……あ、引っ込み思案で大人しい。だったかも。自信がなくて、周りの意見に流されていた気がする。
……今の私とは正反対だわ。いや、前世の私と言うべきか。
うーん……どうしよう?

コンコン。
「姫様。失礼致します」
1人の侍女が入ってきた。
40代くらいの落ち着いた雰囲気で、ピシッとメイド服を着こなした、細身の女性だ。
起きて机に座る私を見て、少しだけ目を見開く。
「お目覚めでしたか。大変失礼致しました。ご気分はいかがでしょうか?」
「気分……いえ、特には」
「かしこまりました。医者を呼んで参ります」
ドアを閉める音も立てず出ていった。
彼女の名前は思い出せない。
周りの人の認識ができなくなっているのだろうか。
医者と言っていたし、前世のことは伏せて、記憶が抜けていることは話さないとまずいような気がする。
そもそも、誰が味方なのかわからないのが、今一番やばいかも。
記憶を辿ってみても、あの時同じ部屋にいた男性たちのことを、全くわからない。味方っぽそうだったけど、本心がどうかわからない。
王族の周りって嘘をつく人も多そうなイメージあるし。
そもそも私は善なのか、ちがうのか。
はぁっとため息を思わずつく。
神様、もっといい感じの状況にしておいてよ。
いや、イケメンは本当にイケメンだったけどさ。
芸能人だって思うほど整ってたし、そんな人が周りにいる姫ですごいなと思うよ。
でも、どんな状況で前世思い出してんねん。
使えもしない関西弁でツッコミ入れちゃうわ。


よたよたと座っていた椅子から立ち上がると、スルッと緩いウェーヴのかかったベージュの長い髪が視界に入った。
あれ、自分の容姿って……。
慌てて身体を見回すと、まず爪は綺麗に整えられていた。
腕にまとわりつく長いベージュの髪は、日本人とかけ離れたかなり明るい色のようだ。こんなに長いのに髪の先までみずみずしい。枝毛もない。
ほっそりした手足と薄い体は、前世にはなかったもの。
顔! 顔は!?
慌ててドレッサーの前に座り、開き戸を開けて鏡を見る。
……わぁあ。美少女。
え、かわいい。目クリクリだし、綺麗な二重だし、まつ毛なが! 顔もちっちゃい。人中短くて童顔寄りの顔だけど、圧倒的に綺麗。
え、これ私?? 生まれ変わって最高じゃん!
目の色、ヘーゼルだ。虹彩が綺麗。
肌ぷるうるじゃん。
すごーい!
あぁ、でも雰囲気は、優しそう。人に流されやすそう。それはわかる。このタイプは、拒否出来ずに愛想笑いしちゃって、相手が勝手に勘違いしちゃうんだろうな。
この顔かぁ。
こんな顔に生まれたらいっぱい自撮りしてSNSに載せて、インフルエンサーとしても活躍できただろうなぁ。
……嬉しいけど、今なのが嬉しくないような気がする。
はぁ。
深いため息をついて、もう一度よろよろと立ち上がり、今度はベッドに腰掛ける。
ぽふっと横に身体を倒す。
視界に入った腕が真っ白だ。
身体も綺麗だなぁ。
本当にお姫様みたい。

……姫、辞めることってできるのかな。
不意に不安が押し寄せて来る。
記憶が欠けすぎて、このままじゃきっとこの世界にも、この世界の人にも対応しきれない。
どうしよう。
私だけど、私じゃない。
怖い。
ベッドに顔をグッと埋めた。
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