婚約の署名で前世の記憶が蘇ったので、イケメンとしか結婚したくないと婚約を拒否します

みお悠瑋

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第一章 婚約は致しません!

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食事の後、暖かいすっきりとした紅茶が出され、部屋にはリアムさんが残った。
彼はテーブルの横に立ったまま話し始めた。
「まずは、現在の状況をお伝えしますね。半月ほど前、前国王陛下、姫様の御祖父様、が御病気でお亡くなりになりました。こちらは覚えていらっしゃいますでしょうか?」
「いいえ。顔も分からなくて」
お祖父様が前国王陛下ということは。
「私の両親は……?」
「……8年前、姫様が9歳の頃に事故でお亡くなりになりました」
冷静な声をしていても目線を下げる彼。私の両親と仲が良かったのだろうか?
「そう。他に私の血縁者は……?」
「王家直系の方はおられません。ただ、王家の外戚としてはオルドリーニ公爵家がおられます」
ということはつまり、天涯孤独というやつか。
「ちょっと待って。いまこの国の主権はだれなの……?」
すっと目線上げた彼が、じっと熱い目を私に向けた。
「今は空位となっております。前王から次期王へと引き継がれる準備期間となっており、御祖父様から姫様へ、譲位となる1ヶ月ほどの間は、代わりのものが政治を執り仕切っており、いわゆる主権はおりません」
「なるほど……」
今は空位の期間か。
「……え?」
「姫様はあと半月もすればこの国の女王になられる予定です」
爽やかな笑顔とともに、嬉しそうに言われた。
……じょうおう。
女王と言われると、前世のとある国を思い出す。おばあちゃんになってもお洒落なイメージがある。
そんな方と、私が同じ役職名?
「そんな恐れ多い!!!」
「そのようなことはございません。姫様は御立派なお方にございます」
「記憶ないのに!?」
「記憶は、まぁ、どうしようもないものは諦めましょう。これからが大事ですよ」
にっこりと優しい笑顔の彼。ちょいちょい大雑把な部分が出てくる。彼はもともと紳士ではないのだろうか?
「国の主権って、おもいよ……」
「そうですね。大変な御公務だとは思われますが、姫様にしかできないことでもあります」
「……国民はどう思っているの?」
「姫様は、国民の皆様からも大変人気です。新しい王をみな待ち望んでおります」
はぁっと息を吐き、椅子の背もたれに背を預けた。
私は女王として、この国を動かさないといけないのかぁ。
前世思い出す前の私の性格からすると、絶対無理。流されて自分で決められなさそう。
だからといって、いまの自分にどうにかできるとは思えない。
「おもいよ」
ぽつっと発した言葉は思ったより沈んだ音だった。
それでも彼は、静かに、そしていつもそうしてきたかのように言った。
「はい。姫様なら、王国民に愛される女王陛下となられると存じます。そして、姫様を支えんとする臣下も確かにおります」
ふふっと笑う彼はとても綺麗だ。
「あなたも?」
「私は、そうですね。支えることは当然として、その上で私自身が、姫様の息をつける場所になればいいなと思っております」
胸に手を当てながら少し顔に熱を纏い、でも自信があるようにはっきり言う彼の視線はとても甘くてかっこよかった。
「ちょっと考える」
そんな彼に流されそうになるのをなんとか踏みとどまる。
「承知致しました」
笑顔を含んだ彼の言葉とともにすっと伸ばされた手は、私のゆったり流れる髪を一房掴み、すっと口元へ持ち上げちゅっと音を立てて口付けた。
「お慕いしております」
サッと顔が熱くなる。そんな私を彼は楽しそうにヘラッと笑った。
絶対騙されないっ!!

「そういえば、いま空位期間って言っていたけど、誰かが代わりに政治を動かしているの?」
気になっている部分を聞くと、彼はさっきのモードを消して、冷静に答えた。
「はい。政治を現在変わって担っているのが、宰相にございます。先日倒れられる前にも、婚約の席にて同席していたおじさんです」
彼の口からおじさんという単語が発せられたことにびっくり。やっぱり家庭環境がすごくしっかりしているというわけじゃないのかな……?
「おじさん」
ふわっと思い出すイケおじ。
オリーブ色の髪に、色気のあるモノクロメガネ。優しそうに穏やかな笑顔を浮かべる方だった。
「あの人、仕事できそうだもんね」
「宰相を現在勤めているオリーヴェ侯爵様は、前国王陛下からの信頼も厚く、姫様の御父上の御友人であらせられた方でもあります」
へぇ。父親のお友達。じゃあ私の今世のお父さんも、生きていればあれくらいの感じなのかな。
今はおそらく摂政状態という感じかしら。問題なく国を回せてるのであれば、このままずっとやってくれてもいいのに。
そう思ったのにすかさずリアムさんは鋭くつっこんでくる。
「戴冠式後には、徐々に姫様へと主権は移動されますのでご安心ください」
「心配してる訳じゃないわ!」
まったく。
リアムさんって、私の考えが分かるのかなってくらい、聞く前に回答をくれる。
「そういえば、戴冠式って……」
「15日後になります。戴冠式の後は、国民の皆様へのお披露目として、王都にてパレードを予定しております。その次の日の夜には、各国要人をご招待したパーティも開催予定となっております。まず姫様には、戴冠式からパーティまでを滞りなく進めていただくことが、初めての女王陛下としてのお仕事となります」
なるほど。
……パーティ。
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