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第三章 繰り返しの幽霊
第46話 百発百中
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そんなことを言われたとて、正直意味が分からない――というのが正直な感想だった。実際、誰もが聞いたってそんな感想を抱くのが自然だろう? それとも、僕ちゃんだけなのかな、こういった感想を抱いているのは……。自分が異端であることは理解していたけれど、こうも乖離しているとなるとそれはそれで問題なのかもしれない。改善する気はないけれどね。
「改善しない、って……。それはどうなのかしらね? 人間として生きていく以上、社会生活は絶対に成し遂げなくてはいけない。人間は、昔はそうだったかもしれないけれど、今は完全に一人では生きていけないのよ。この時代で生きていく以上、誰かの援助は必然……」
「必然――か。まあ、確かに間違ってはいないかな……。僕ちゃんだって完全に一人で生活しようなんて考えたら一時間も持たないかもしれないな」
「それは流石に怠惰過ぎない? バベルプログラムに参加していた人間が全員変わり者だったからと言っても、大抵の参加者は普通に日常生活ぐらいは送れているものだと思うけれど……」
そうかな?
正直、そこまで否定されるものでもないと思うのだけれどな……。バベルプログラムは、あそこに居た人間であれば分かるかもしれないけれど……、全員何処かが欠けていた。歪な存在だった、とでも言えば良いだろうか。その歪さがそれぞれを補うことで何とか一つの形として成っていたのかもしれなかったけれど、それでもそれらが永遠にくっついている保証などはない……。確かに嵌め込み具合によっては外れにくいなんてこともあるのかもしれないけれど、バベルプログラムにはそんなものは存在せず、辛うじてプログラムの存在そのものが接着剤として存在している――そんな感じだったと記憶している。
つまり、大小はあれど、皆異端だったのだ。
「異端が集まれば、普通に見える……。まあ、どんなことだって言えることだけれど、マイノリティーが集まったらマジョリティーになるのは当然な話であって」
少数派だったのは、あくまでも普通の人間が大量に居る世界だったからだ。
そこから少数派だけを抜き取れば、異端が多数派になるのは当然と言えよう。
「まあ、探偵になるぐらいだから一般生活を遅れないと考えたのかな? 一般人として、サラリーマンとしての生活が出来ないのであれば、個人事業主として生計を立てるしか道筋はないからねえ」
「……その言葉、そっくりそのまま返すぞ」
「あらやだ、怖い」
何を今更。
「ところで……。その鍵を開ける能力とやら、本当に信用して良いんだろうな?」
問題はそこだ。
ハッピーハッピー研究所の訳が分からない存在だと思っていたが、まさかのバベルプログラムの同期で、まるで図ったかのような能力を持っているという――そもそも能力って何なんだよ。何時からこれは異能バトルものにジャンルを変えたんだ?
「ええ、勿論。信用して問題ないよ――何せ、妨害さえなければ百発百中の能力だ」
「妨害……ね。具体的には?」
「そうねえ、例えば……本人からその世界から戻ってきたくない、だとか?」
馬鹿な。
そんなこと、有り得るはずがない……。たーくんにとってよっぽど良い何かがあれば可能性の一つとして挙げられることなのかもしれないけれど、はっきり言ってそんなことはないと言っても良いだろうね。有り得ない。
「でもまあ、何でもかんでも有り得ないという一言だけで片付けるのは間違っている……なんて思うけれどねえ? 別に彼の人となりを知っている訳ではないのだけれど、実際、仮に戻りたくないなんて愚図ってきたらどうするつもり?」
「たーくんがそう思うことは、先ず有り得ない。となると考えられるアイディアは……、その原因を排除すること、かな。何らかの外的要因でそうなっていると解釈する。となれば、それを排除すればたーくんは戻りたく……」
「怖いねえ。君、ヤンデレの素質あるよ?」
「ヤンデレ?」
正直、この占部という女性は、何を言っているのかさっぱり分からない――なんてことがたまにやってくる。困るんだよな、誰だってその発言の意味が分かると思ったら大間違いだ。
「いや、この言葉の意味を分からない方がはっきり言ってマイノリティーだよ……。流石に百人に聞いて八十人ぐらいはヤンデレの意味を知っていると思うけれどね?」
本当か?
そのデータは作為的に編集されたものではないのだろうか……。
「流石にデータの真偽を問われちゃあ、こちらとしても言い返せないのだけれどね。だって証明しようがないし。君が知らないと宣ってしまえば、このデータの整合性はないと評価されてしまう。あんまり、個人の感性はデータの評価には持ち運んで欲しくないものだけれどね……」
「まるでこっちが理不尽なことを言っているようだけれど、流石にそれは違うのでは? そのデータの整合性を問うというのであれば、それは間違いないけれどね」
いや。
今こんな話でわいわい盛り上がっている場合ではないし、そんな暇はないのだ。
「とにかく、その能力を使って欲しい。……それしか今は方法がない、たーくんを救うためには、ね」
「――一応言っておくけれど」
「?」
「さっきも言った通り、この能力は百発百中だ。けれども、それには例外がある……。それは妨害があったパターンだ。有能であることは確かなのだけれどね、融通が利かないのもまた事実。はてさて、それでもなおこの能力を行使するのかな?」
「何を言っている。二言はないよ、助けるためならばどんな能力を使ったって構わない」
「かっくいーねえ。最近そういう台詞を言う人間ってめっきり減ったような気がするし、或いは昔から一切増減していないように見えるけれど、そんなことは別に言わなくても良いか」
占部は手を合わせる。
そして、目を瞑る。
瞑想をするかの如く、占部は深呼吸をした。
そして――何かを見つけたのか、右手を伸ばし、空気を――いや、何かを掴んだ。
「改善しない、って……。それはどうなのかしらね? 人間として生きていく以上、社会生活は絶対に成し遂げなくてはいけない。人間は、昔はそうだったかもしれないけれど、今は完全に一人では生きていけないのよ。この時代で生きていく以上、誰かの援助は必然……」
「必然――か。まあ、確かに間違ってはいないかな……。僕ちゃんだって完全に一人で生活しようなんて考えたら一時間も持たないかもしれないな」
「それは流石に怠惰過ぎない? バベルプログラムに参加していた人間が全員変わり者だったからと言っても、大抵の参加者は普通に日常生活ぐらいは送れているものだと思うけれど……」
そうかな?
正直、そこまで否定されるものでもないと思うのだけれどな……。バベルプログラムは、あそこに居た人間であれば分かるかもしれないけれど……、全員何処かが欠けていた。歪な存在だった、とでも言えば良いだろうか。その歪さがそれぞれを補うことで何とか一つの形として成っていたのかもしれなかったけれど、それでもそれらが永遠にくっついている保証などはない……。確かに嵌め込み具合によっては外れにくいなんてこともあるのかもしれないけれど、バベルプログラムにはそんなものは存在せず、辛うじてプログラムの存在そのものが接着剤として存在している――そんな感じだったと記憶している。
つまり、大小はあれど、皆異端だったのだ。
「異端が集まれば、普通に見える……。まあ、どんなことだって言えることだけれど、マイノリティーが集まったらマジョリティーになるのは当然な話であって」
少数派だったのは、あくまでも普通の人間が大量に居る世界だったからだ。
そこから少数派だけを抜き取れば、異端が多数派になるのは当然と言えよう。
「まあ、探偵になるぐらいだから一般生活を遅れないと考えたのかな? 一般人として、サラリーマンとしての生活が出来ないのであれば、個人事業主として生計を立てるしか道筋はないからねえ」
「……その言葉、そっくりそのまま返すぞ」
「あらやだ、怖い」
何を今更。
「ところで……。その鍵を開ける能力とやら、本当に信用して良いんだろうな?」
問題はそこだ。
ハッピーハッピー研究所の訳が分からない存在だと思っていたが、まさかのバベルプログラムの同期で、まるで図ったかのような能力を持っているという――そもそも能力って何なんだよ。何時からこれは異能バトルものにジャンルを変えたんだ?
「ええ、勿論。信用して問題ないよ――何せ、妨害さえなければ百発百中の能力だ」
「妨害……ね。具体的には?」
「そうねえ、例えば……本人からその世界から戻ってきたくない、だとか?」
馬鹿な。
そんなこと、有り得るはずがない……。たーくんにとってよっぽど良い何かがあれば可能性の一つとして挙げられることなのかもしれないけれど、はっきり言ってそんなことはないと言っても良いだろうね。有り得ない。
「でもまあ、何でもかんでも有り得ないという一言だけで片付けるのは間違っている……なんて思うけれどねえ? 別に彼の人となりを知っている訳ではないのだけれど、実際、仮に戻りたくないなんて愚図ってきたらどうするつもり?」
「たーくんがそう思うことは、先ず有り得ない。となると考えられるアイディアは……、その原因を排除すること、かな。何らかの外的要因でそうなっていると解釈する。となれば、それを排除すればたーくんは戻りたく……」
「怖いねえ。君、ヤンデレの素質あるよ?」
「ヤンデレ?」
正直、この占部という女性は、何を言っているのかさっぱり分からない――なんてことがたまにやってくる。困るんだよな、誰だってその発言の意味が分かると思ったら大間違いだ。
「いや、この言葉の意味を分からない方がはっきり言ってマイノリティーだよ……。流石に百人に聞いて八十人ぐらいはヤンデレの意味を知っていると思うけれどね?」
本当か?
そのデータは作為的に編集されたものではないのだろうか……。
「流石にデータの真偽を問われちゃあ、こちらとしても言い返せないのだけれどね。だって証明しようがないし。君が知らないと宣ってしまえば、このデータの整合性はないと評価されてしまう。あんまり、個人の感性はデータの評価には持ち運んで欲しくないものだけれどね……」
「まるでこっちが理不尽なことを言っているようだけれど、流石にそれは違うのでは? そのデータの整合性を問うというのであれば、それは間違いないけれどね」
いや。
今こんな話でわいわい盛り上がっている場合ではないし、そんな暇はないのだ。
「とにかく、その能力を使って欲しい。……それしか今は方法がない、たーくんを救うためには、ね」
「――一応言っておくけれど」
「?」
「さっきも言った通り、この能力は百発百中だ。けれども、それには例外がある……。それは妨害があったパターンだ。有能であることは確かなのだけれどね、融通が利かないのもまた事実。はてさて、それでもなおこの能力を行使するのかな?」
「何を言っている。二言はないよ、助けるためならばどんな能力を使ったって構わない」
「かっくいーねえ。最近そういう台詞を言う人間ってめっきり減ったような気がするし、或いは昔から一切増減していないように見えるけれど、そんなことは別に言わなくても良いか」
占部は手を合わせる。
そして、目を瞑る。
瞑想をするかの如く、占部は深呼吸をした。
そして――何かを見つけたのか、右手を伸ばし、空気を――いや、何かを掴んだ。
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