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8章 冬市と流行り病
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「まさか! オババ……――手伝いに行っていた村の薬師が作ってました!」
あらかじめ準備しておいた答えを、わざとらしくならないように気をつけながら伝える。
「……国はずれの村の薬師がこれを……?」
「――はい」
「……他国の文化――いや、薬師が作ったのだとしたら、それはやはりポーション……?」
アゴに手を添え考え込むエルベルトさんに慌てて言葉をかける。
「――でも、これ作る時は本当に適当に片手間にパパっとやってましたよ⁉︎ ポーションって作り方にすごい細かい指定があるのが普通なんですけど、これはよく砕くとかひたすら練るとかばっかり! ――……私は後ろから盗み見たり、オババのひとりごとを聞いてただけなんですけどね⁉︎ ――それに本当にたまにしか作らなかったから……材料も手順もちょっとうろ覚えで――だから、独学みたいな感じになってるかもしれないんですけど……」
ポーションだと認定されるのも困るけど、この軟膏のレシピの出所を疑われるのも不味いと、ペラペラと言葉を積み重ねていく。
万が一、あの村にそんな軟膏なんか無かったと分かってしまった時の保険もしっかりかけておく。
――ゼロから独学でこの軟膏作り出しました! よりかはマシなはず……!
「なるほど……?」
「……独学だと問題ですか?」
その質問にエルベルトさんはゆるく首を振り、手に持っていた軟膏が入っている木の実の殻を見つめ――ふと顔を上げた。
「――どうしてこれを作ろうと?」
その質問に思わず身体が固まる。
え、そこ聞く⁉︎
予想もしていなかった質問に私はドキリとしながらも深呼吸をしてから思ったままに答える。
「……きっかけはマチルダたち。 知り合いの人にポーション探せないか? どうにかならないか? ってたくさん聞かれたんだって。 でも私のは今は勝手に売れないから……――コッソリ売って問題になるのは私もマチルダもイヤだったから……」
「よく思いとどまってくれた……」
エルベルトさんの口から漏れ出た言葉に苦笑しながら説明を続ける。
「でもそれだとマチルダたちはずっと聞かれ続けて……――もしかしたらせっかく出来た優しい大人の人を無くしちゃうかもだし……――言うこと聞かないって、怒っちゃったら殴られるかもしれないでしょ?」
私の言葉にエルベルトさんは言葉につまりながらも「まぁ……その、最悪の場合……」と濁すような相槌をうつ。
「それはダメだなって、なにかポーションみたいなでもポーションじゃない薬があったら、売ることもできるしマチルダたちが殴られることもないのかなって……――その時軟膏のこと思い出して……」
……後半は基本ウソですけど、この言葉自体は概ね真実です!
あらかじめ準備しておいた答えを、わざとらしくならないように気をつけながら伝える。
「……国はずれの村の薬師がこれを……?」
「――はい」
「……他国の文化――いや、薬師が作ったのだとしたら、それはやはりポーション……?」
アゴに手を添え考え込むエルベルトさんに慌てて言葉をかける。
「――でも、これ作る時は本当に適当に片手間にパパっとやってましたよ⁉︎ ポーションって作り方にすごい細かい指定があるのが普通なんですけど、これはよく砕くとかひたすら練るとかばっかり! ――……私は後ろから盗み見たり、オババのひとりごとを聞いてただけなんですけどね⁉︎ ――それに本当にたまにしか作らなかったから……材料も手順もちょっとうろ覚えで――だから、独学みたいな感じになってるかもしれないんですけど……」
ポーションだと認定されるのも困るけど、この軟膏のレシピの出所を疑われるのも不味いと、ペラペラと言葉を積み重ねていく。
万が一、あの村にそんな軟膏なんか無かったと分かってしまった時の保険もしっかりかけておく。
――ゼロから独学でこの軟膏作り出しました! よりかはマシなはず……!
「なるほど……?」
「……独学だと問題ですか?」
その質問にエルベルトさんはゆるく首を振り、手に持っていた軟膏が入っている木の実の殻を見つめ――ふと顔を上げた。
「――どうしてこれを作ろうと?」
その質問に思わず身体が固まる。
え、そこ聞く⁉︎
予想もしていなかった質問に私はドキリとしながらも深呼吸をしてから思ったままに答える。
「……きっかけはマチルダたち。 知り合いの人にポーション探せないか? どうにかならないか? ってたくさん聞かれたんだって。 でも私のは今は勝手に売れないから……――コッソリ売って問題になるのは私もマチルダもイヤだったから……」
「よく思いとどまってくれた……」
エルベルトさんの口から漏れ出た言葉に苦笑しながら説明を続ける。
「でもそれだとマチルダたちはずっと聞かれ続けて……――もしかしたらせっかく出来た優しい大人の人を無くしちゃうかもだし……――言うこと聞かないって、怒っちゃったら殴られるかもしれないでしょ?」
私の言葉にエルベルトさんは言葉につまりながらも「まぁ……その、最悪の場合……」と濁すような相槌をうつ。
「それはダメだなって、なにかポーションみたいなでもポーションじゃない薬があったら、売ることもできるしマチルダたちが殴られることもないのかなって……――その時軟膏のこと思い出して……」
……後半は基本ウソですけど、この言葉自体は概ね真実です!
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