これは私の物語

笹乃笹世

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一章 村からの脱出

19

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「まさか! だってこれウィリムが頑張った証なんだよ? 大切に使わせてもらおう? あ……私たちにも貸してね?」
「当たり前だよ。 みんなで使おう」

 いつもならば、私たちの仕事が終わるのは日が暮れてからなのだが、今日はなぜか、私もウィリムも「準備もあるだろ?」なんで言葉でずいぶん早く家に帰されていた。

 ――なに考えてるんだか知らないけど、それが好都合なのはこっちも同じ。 最悪、書類と金だけ持ってれば、着の身着のまま逃げたって構わない。 けど……やっぱり姉さんたちにもらった賄賂は持っていきたいし、食糧も持たないで森に入るのは不安だ。

 ――仕掛けられるのは明日のいつなんだろ? 朝一だとしたら準備の時間的にちょっと厳しい……? 持ちものは少ないけどバッグがなぁ……
 ――とりあえずこの書類とある程度のお金だけは、全員身につけてられるようにしよう。 あとは荷物の分け方……調理器具は私が持つとして、食糧はウィリムに任せられるかな? それとも食べ物だけは全員で分けて持ってた方が……? いや、プリムに多く持たせるのは可哀想だし危険だ。 転んでダメにされた時も後悔しそうだし……

 そんなことを考えながら引越しの準備を進めていくと、小屋の外からタッタッタッという軽やかな足音が聞こえ、ドアが勢いよく開いて、ロランとプリムが駆け込んでくる。

「姉ちゃん見て見て! こんなにたくさん布もらった! ぜーんぶ新品なんだって!」
「プリムももらった! チーズとベーコン! あとお金!」
「あ、俺も金もらった!」
「――そっかあ? すごいね……?」

 私は「なんで⁉︎」という言葉をかろうじて飲み込みながら笑顔を作った。
 初めての出来事に興奮しながらはしゃいでいる2人はキャラキャラと笑いながらウィリムにまとわりついている。

 ……100歩譲って、数匹の山羊や豚を飼ってる家で手伝いをしているプリムが、チーズやベーコンをもらって帰ってくるのは――まだいい。 可能性はゼロじゃない。 布持ってきたロランは、でっかい農園の手伝いじゃん……? どっから布が出てきたのかと……――わざわざ用意してくれたって線も無くはないけど……無いだろ。 どれもこれも「盗まれた!」とか言い出す布石に使われるに決まってる。

「姉ちゃん……」

 不安そうなウィリムに話しかけられハッと顔を上げた。 自分に言い聞かせるように無理やり笑顔を貼り付けて口を開く。

「引越しは3日後になったんだけど――1度予行練習してみない?」
「予行練習?」

 ロランが首を傾げ、それを見たプリムも真似るように首を倒してこちらを見ている。
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