これは私の物語

笹乃笹世

文字の大きさ
182 / 627
4章 街での日々とご近所さん

40

しおりを挟む
 わざわざ仕事の時間使ってやってくれてるわけだから、そんなボーナスぐらい無いとやってらんないのかもなー。
 ――私の常識はちょっとの間、黙っててもらうとして――ダリアしっかり! 絶対この状況に慣れちゃダメ。 贅沢になるのもやめよう。 
 私たちは絶対に恵まれてる。 この街でちゃんとした寄親が見つかるのも幸運なら、あんなにしっかり勉強を見てもらえるのはもっと幸運。 しかも日曜日に当たるいやしの日は、なんだって好きなことをしていられる。 一日中家でゴロゴロしてたっていいし、森に行ったっていい。 兵士たちがたくさんの食料を持ってきてくれるから、そのあまりで充分賄えちゃうし。 いっぱい取れたら売ってお菓子にも変えられる。 ――本当は洋服とかに変えたいんだけど……あのスタンピートでズタボロになったのは私の服だけだから……ちょっと言い出しにくいんだよねー。

「姉ちゃんお風呂空いたよー」
「あ、はーい。 プリム行ける?」
「うん!」

 お風呂は2人ずつ。 お湯はそんなに使えないけど、それでも毎日お風呂に入れるのは、生活に余裕がある証拠。
 ……うち、なんだかんだ1日2回入ってるし、ものすごい恵まれてる。 ただ、森で薪はたくさん拾ってこないと。 ……どれだけ恵まれてたって、薪は買うものじゃない。

「――ふふっプリムいい匂い?」

 身体を洗っているプリムが全身を泡だらけにして聞いてくる。

「うん。 石鹸のいい匂い」

 前の村じゃ髪なんかほとんど洗えなかったけど、今じゃ毎日洗ってるから私たちの髪はずっとサラサラ。 それに毎日身体も洗ってるから、ずいぶん清潔にもなった。
 ……前の家、隙間風だらけだったから、冬場なんか風邪が怖くて髪なんか濡らせなかったし、身体は布でゴシゴシやって終わりだった。
 ――私、あれでよくパン屋で働けてたと思う……村の人たちも似たような生活だったから、こことは常識が違ったんだろうなー。

「見て見て、角ー」

 いつの間にか石鹸で髪まで洗ったプリムが、泡を集めて頭の上に乗せている。
 その姿にクスリと笑って手を伸ばす。

「――きつねー」
「えっきつね? 耳?」
「ウサギー」 
「見えない!」

 自分の頭を手で確認しながらムッと唇を尖らせるプリム。 頭の上ですからねぇ? 頑張っても見えないと思います。

「あはは、似合ってるよ」
「ズルい! プリムも!」

 そう言って手を伸ばしてきたので、好きにさせる。

「ちょっとだけね? 今はあったかいけど、ここはちょっと寒いから」
「はーい――帽子ー!」

 おざなりに返事をして私の髪をいじるプリム。 鏡とか無いから感覚だけだけど……多分、髪の毛ごといってるよね? 泡だけじゃ無いよね?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

隠された第四皇女

山田ランチ
恋愛
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

「愛することはない」と言った冷徹公爵様、やり直しの人生は溺愛が重すぎます!~王宮が滅びるのは記憶を隠した旦那様と幸運な息子のせい?~

ソラ
恋愛
王宮の陰湿な包囲網、そして夫であるアリステア公爵の無関心。心身を削り取られたセラフィナは、孤独と絶望の中でその短い一生を終えた。 だが、彼女は知らなかった。 彼女の死を知ったアリステアが、復讐の鬼と化して王宮へ反乱を起こし、彼女を虐げた者たちを血の海に沈めたことを。そして彼もまた、非業の死を遂げたことを。 「……セラフィナ。二度と、君を離さない。この命、何度繰り返してでも」 気がつくと、そこは五年前――結婚三日目の朝。 セラフィナが「今度は期待せずに生きよう」と決意した矢先、飛び込んできたアリステアは泣きながら彼女を抱きしめた。 前世の冷淡さが嘘のように、甘く、重すぎるほどの愛を注いでくるアリステア。 さらに、前世には存在しなかった息子・ノエルまで現れ、セラフィナを苦しめるはずだった敵は、彼女が知らないうちに裏で次々と社会的に抹殺されていく。 アリステアは記憶がないふりをして、狂気的な執着を「優しさ」という仮面で隠し、今度こそ彼女を檻のような幸福の中に閉じ込めようと画策していた。 知っているのは、読者(あなた)だけ。 嘘から始まる、究極のやり直し溺愛ファンタジー! (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

幸せの在処

紅子
恋愛
自分の命を代償に、私は、私の持つ特殊な固有スキルを使ったのに、なぜか、過去に時を逆行していた。戻った世界は、前とは違う世界のようで・・・・。私の命も、大好きな貴方と一緒に居られる幸せも、貴方が私にくれたもの。だから、この世界の再構築の日まで、大切に丁寧に日々を生きてゆく、貴方の隣で。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

[完結]ヤンデレ・メリバは好きですか?

紅月
恋愛
「ヤンデレ、メリバは好きですか?」 そう聞いて来た白い髪の神様に向かって、私は 「大っ嫌いです。私はハピエン至上主義です」 と、答えたらちょっと驚いた顔をしてから、お腹を抱えて笑い出した。

処理中です...