218 / 614
4章 街での日々とご近所さん
76
しおりを挟む
「ダリアー! 大皿追加2ー!」
「はーい!」
お隣の酒場の――多分裏口を開けての大声でのご注文に、私も声を張り上げて了承を返す。
今日のメニューは牛肉のパイ包み焼きとキノコスープにウインナー、そしてチーズと胡椒がたっぷりのパンだ。
牛肉は大量に仕入れたからまだまだあるんだけど――やっぱりパイ生地があとちょっとだ。
材料の下処理は終わっているので、パパッと準備してかまどに入れる。
……このかまども相当大きいやつなんだけど――こうして毎日料理してると、もっと大きいほうが……とか考えちゃうから慣れって怖い。
パイをかまどに入れたら、庭に出てエルベルに近づく。
「エルベルトさん、メイン多分あと5個は出来ないです」
「こちらで押さえよう」
その言葉に頷き返すのと、酒場のテラス席からブーイングが起こるのは同時だった。
「5個出来んならこっちに回せー」
「兵士の横暴を許すなー!」
「好きなだけ飲み食いしやがってぇー」
酔っていて声は大きめだが、言っている本人も言われている兵士たちもニヤニヤと笑っているので、これは軽口の部類なんだろう。
「うるせー、こっちだって取っておかなかったら遅番の連中にドヤされんだよ!」
「うちの副分隊長から晩飯奪おうってのかぁー?」
……なんでか、同じ料理を食べ始めたぐらいから酒場のお客さんと兵士さんたちの仲がものすごく良くなり始めたんだよねー。 同じもの食べてるとシンパシー湧くのかな?
「勝手なこと言うなー! 注文は早いもん勝ちって話だったろー!」
そんなヤジに混じってレオさんの声も混じる。
「……ちゃんと注文の二皿は確保してますよ?」
「でももう終わりなんだろ?」
「……はい」
「牛肉たくさん仕入れたって言ってたじゃねぇかよー」
「足りなくなったのはパイのほうでしたー」
「……それならいまからでも作れんだろ⁉︎」
「……そうなると、明日のパンが減りますけど?」
「あ……パンの仕込み、これからか……」
「はい。 終い鐘が鳴るまでは頑張りますよー」
「それは頑張って欲しいんだけどよぉ……」
レオさんとそんな会話をしていると、金ジョッキを片手に寄ってきた酒場の客がエルベルトさんに絡み始める。
「よぉ、分隊長様よぉ! こんなに頑張ってる娘っ子にでっけぇ石窯の一つもくれてやれねぇのかよ?」
「――? ダリアは大きな石窯が欲しいのか?」
首を傾げるエルベルトさんに私が答えるより先に、再びその男性が声を上げる。
「そりゃ欲しいに決まってんだろ! さっきっから見てりゃあんなちっけぇ子供に何回パン焼かせてんだ! パン屋ってのは朝焼いたら終わりなんだよ! あんなちっけぇ窯で何回も! オメェんとこの宿舎の釜がどんなもんか知ってんだろうが!」
その言葉に兵士たちがザワリとざわめいた。
「はーい!」
お隣の酒場の――多分裏口を開けての大声でのご注文に、私も声を張り上げて了承を返す。
今日のメニューは牛肉のパイ包み焼きとキノコスープにウインナー、そしてチーズと胡椒がたっぷりのパンだ。
牛肉は大量に仕入れたからまだまだあるんだけど――やっぱりパイ生地があとちょっとだ。
材料の下処理は終わっているので、パパッと準備してかまどに入れる。
……このかまども相当大きいやつなんだけど――こうして毎日料理してると、もっと大きいほうが……とか考えちゃうから慣れって怖い。
パイをかまどに入れたら、庭に出てエルベルに近づく。
「エルベルトさん、メイン多分あと5個は出来ないです」
「こちらで押さえよう」
その言葉に頷き返すのと、酒場のテラス席からブーイングが起こるのは同時だった。
「5個出来んならこっちに回せー」
「兵士の横暴を許すなー!」
「好きなだけ飲み食いしやがってぇー」
酔っていて声は大きめだが、言っている本人も言われている兵士たちもニヤニヤと笑っているので、これは軽口の部類なんだろう。
「うるせー、こっちだって取っておかなかったら遅番の連中にドヤされんだよ!」
「うちの副分隊長から晩飯奪おうってのかぁー?」
……なんでか、同じ料理を食べ始めたぐらいから酒場のお客さんと兵士さんたちの仲がものすごく良くなり始めたんだよねー。 同じもの食べてるとシンパシー湧くのかな?
「勝手なこと言うなー! 注文は早いもん勝ちって話だったろー!」
そんなヤジに混じってレオさんの声も混じる。
「……ちゃんと注文の二皿は確保してますよ?」
「でももう終わりなんだろ?」
「……はい」
「牛肉たくさん仕入れたって言ってたじゃねぇかよー」
「足りなくなったのはパイのほうでしたー」
「……それならいまからでも作れんだろ⁉︎」
「……そうなると、明日のパンが減りますけど?」
「あ……パンの仕込み、これからか……」
「はい。 終い鐘が鳴るまでは頑張りますよー」
「それは頑張って欲しいんだけどよぉ……」
レオさんとそんな会話をしていると、金ジョッキを片手に寄ってきた酒場の客がエルベルトさんに絡み始める。
「よぉ、分隊長様よぉ! こんなに頑張ってる娘っ子にでっけぇ石窯の一つもくれてやれねぇのかよ?」
「――? ダリアは大きな石窯が欲しいのか?」
首を傾げるエルベルトさんに私が答えるより先に、再びその男性が声を上げる。
「そりゃ欲しいに決まってんだろ! さっきっから見てりゃあんなちっけぇ子供に何回パン焼かせてんだ! パン屋ってのは朝焼いたら終わりなんだよ! あんなちっけぇ窯で何回も! オメェんとこの宿舎の釜がどんなもんか知ってんだろうが!」
その言葉に兵士たちがザワリとざわめいた。
3
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
【完結】戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。
そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。
最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。
そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。
上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。
貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。
実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、
上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。
そこで知ったルーカスの秘密。
彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。
元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。
戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。
シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。
所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。
そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。
心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。
けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。
シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか――
※他サイトでも公開しています
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
敏腕SEの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した祭りは、雨の夜に終わりを願う。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります
Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め!
“聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。
グォンドラ王国は神に護られた国。
そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。
そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた……
グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、
儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。
そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。
聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく……
そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。
そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、
通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。
二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど───
一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた……
追記:
あと少しで完結予定ですが、
長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる