これは私の物語

笹乃笹世

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4章 街での日々とご近所さん

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「ダリアー! 大皿追加2ー!」
「はーい!」

 お隣の酒場の――多分裏口を開けての大声でのご注文に、私も声を張り上げて了承を返す。
 今日のメニューは牛肉のパイ包み焼きとキノコスープにウインナー、そしてチーズと胡椒がたっぷりのパンだ。

 牛肉は大量に仕入れたからまだまだあるんだけど――やっぱりパイ生地があとちょっとだ。 
 材料の下処理は終わっているので、パパッと準備してかまどに入れる。
 ……このかまども相当大きいやつなんだけど――こうして毎日料理してると、もっと大きいほうが……とか考えちゃうから慣れって怖い。
 
 パイをかまどに入れたら、庭に出てエルベルに近づく。

「エルベルトさん、メイン多分あと5個は出来ないです」
「こちらで押さえよう」

 その言葉に頷き返すのと、酒場のテラス席からブーイングが起こるのは同時だった。

「5個出来んならこっちに回せー」
「兵士の横暴を許すなー!」
「好きなだけ飲み食いしやがってぇー」

 酔っていて声は大きめだが、言っている本人も言われている兵士たちもニヤニヤと笑っているので、これは軽口の部類なんだろう。

「うるせー、こっちだって取っておかなかったら遅番の連中にドヤされんだよ!」
「うちの副分隊長から晩飯奪おうってのかぁー?」

 ……なんでか、同じ料理を食べ始めたぐらいから酒場のお客さんと兵士さんたちの仲がものすごく良くなり始めたんだよねー。 同じもの食べてるとシンパシー湧くのかな?
 
「勝手なこと言うなー! 注文は早いもん勝ちって話だったろー!」

 そんなヤジに混じってレオさんの声も混じる。 

「……ちゃんと注文の二皿は確保してますよ?」
「でももう終わりなんだろ?」
「……はい」 
「牛肉たくさん仕入れたって言ってたじゃねぇかよー」
「足りなくなったのはパイのほうでしたー」
「……それならいまからでも作れんだろ⁉︎」
「……そうなると、明日のパンが減りますけど?」
「あ……パンの仕込み、これからか……」
「はい。 終い鐘が鳴るまでは頑張りますよー」
「それは頑張って欲しいんだけどよぉ……」

 レオさんとそんな会話をしていると、金ジョッキを片手に寄ってきた酒場の客がエルベルトさんに絡み始める。

「よぉ、分隊長様よぉ! こんなに頑張ってる娘っ子にでっけぇ石窯の一つもくれてやれねぇのかよ?」
「――? ダリアは大きな石窯が欲しいのか?」

 首を傾げるエルベルトさんに私が答えるより先に、再びその男性が声を上げる。

「そりゃ欲しいに決まってんだろ! さっきっから見てりゃあんなちっけぇ子供に何回パン焼かせてんだ! パン屋ってのは朝焼いたら終わりなんだよ! あんなちっけぇ窯で何回も! オメェんとこの宿舎の釜がどんなもんか知ってんだろうが!」

 その言葉に兵士たちがザワリとざわめいた。
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