これは私の物語

笹乃笹世

文字の大きさ
313 / 687
6章 ヘソ曲がりとチョコレート

26

しおりを挟む
 味に関する設定なんか付けた覚えはないけど、あの宝珠は星蒼族の魔力の結晶で、その魔力はチートもので……
 ――もしかしたら旨み成分だって入ってることがあるのかもしれない……?



「……どうですか?」
「――そう言われるとうちのよりスッキリしてるような……?」
「――いや! 俺には分かるね! うちのよりうまい水だ!」

 自信満々な笑顔で言い放つガラス職人だが――多分水に違いは無いかも……
 そっちのお水飲んで無いからなんとも言えないけどさ。
 
 ……だけど、違うと言ってくれるなら好都合! こっちも全力でその話に乗っからせていただきます!

「お水だったんだぁ……! ねぇ、うちのお水美味しいんだって!」

 私は嬉しそうに驚いて見せながら、私たちの会話に聞き耳を立てていた弟たちに声をかける。
 ここぞとばかりにわらわらと集まって来る弟たちと井戸水を飲んでいると、視界の端で「そこまで違うかねぇ……?」と大きく首を傾げる奥さんが見えた。

 ……もう水ってことにしときましょ? 宝珠のおかげって可能性が高くなってしまった以上、私絶対に誤魔化すんで!
 下手にバレて「……で、この宝珠はどこから?」なんて質問受けたく無いんで!
 ――そりゃ私だって、いくら星蒼族だって魔力に旨み成分が入ってるとかは全然信じてないんですけど、星蒼族の魔力はチート級ってふわっと設定は付けちゃったんで――……正直、なにがどう作用するのか私にだって理解出来てません!

 だから……もう、ここは水ってことで決めてしまいましょう!

 ◇

「――これだよこれこれー!」
「……そうだねぇ、こっちだよねぇ?」

 朝ご飯の準備が終わり、大工さんたちと一緒に食べ始めると、ガラス職人がスープを啜って嬉しそうに声を上げ、おかみさんが悔しそうに顔をしかめる。

「――そんなに違うか?」

 そのやりとりに大工の親方が声をかけ、チーズウインナー細長パン、別名チーズホットドッグにかぶりつく。

「違う! ハッキリした違いじゃねぇが、家のとはちげぇんだ」
「そう、なんだよねぇ……? でも絶対ここの方が美味しいんだよ」

 2人の会話に相槌をつくおかみさんだったが、その視線はずっとスープに注がれていたので、大きな独り言だったのかもしれない。

「……まぁ、ここのはうめぇよな」

 そんなおかみさんの様子に戸惑ったのか、大工の親方は困ったように短く返すとまた大口でチーズウインナー細長パンにかぶりつく。

「違いねぇ」
「晩飯も楽しみだ」

 大工のお弟子さんや息子さんも、似たような食べっぷりで頬張り――……なんとか水ってことになったみたいで一安心です……!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

この度、青帝陛下の運命の番に選ばれまして

四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

処理中です...