成り上がり令嬢暴走日記！

１

『ギフト』

　それは神が人に与えた贈り物。

　神が使うような様々な奇跡の力を少しずつお借りしてーー

【貴女】は国の端にある小さな村で平穏な生活を送る、ごく普通の少女だった。
　ーーその日までは……

　その夜突然、村は野盗に襲われた。
　どこからともなく現れた野盗たちは、家や小屋に火を放ち、我が物顔で村を蹂躙じゅうりんし始める。
　そんな野盗たちから逃げ惑う村人たち。

　【貴女】も両親と共に、道を走っていた。
　しかし逃げ惑う人たちにぶつかって、転んでしまう。
　顔を上げた時、両親の姿は逃げ惑う人々に押されて、少しづつ小さくなっているところだった。

「ユリア逃げなさい！」
「こっちよ‼︎」

　両親の言葉を聞き、グッと唇を噛み締めて必死に立ち上がる【貴女】
　再び走り出そうとした瞬間、背後から大きな爆発音と共に人々の悲鳴が聞こえてきた。
　その音に思わず足を止め、背後を振り返る。
　ーーそこで見た光景は、燃え盛る村と野盗から逃げ惑う人々……そして、そんな村人に笑いながら襲いかかる野盗のおぞましい姿だったーー

「なんで……やめてよ……私の、私たちの村に酷いことしないでよーっ‼︎」

　涙を流しながら【貴女】がそう叫んだ瞬間ーー

　奇跡が起こった。

　恐怖に震えながらも野盗に立ち向かう【貴女】のその勇気に、神がその力を少し分け与えたのだ。

　ーー【貴女】の『ギフト』はすぐに発露し、眩まばゆい光が辺り一面を覆おおった。
　しかし、次の瞬間にはその光はかき消え、村からは野盗の姿が消え去っていた。
　消えていたのは野盗だけではなく、あれだけ燃えていた家や小屋からも炎がかき消えていたーー

　そのかわりに現れていたものが一つ。
　ーー【貴女】の頭上には、赤緑青……様々な色に姿を変える、美しいオーロラがゆらゆらと漂っていたのだったーー