成り上がり令嬢暴走日記！

21

「曲がりなりにも教養科の、しかもＡクラスの生徒が、お茶も飲めず、菓子の一つもまともに食べられないってどういうことですの……」

　ビアンカは呆然と、独り言のように言葉を発した。　その言葉はリアーヌに答えを求めるようでもあり、その言葉を聞かせるためだけの文句のようでもあった。

「だって……お茶のカップって触ったら絶対カチャカチャいうじゃん……音立てたらダメなのにだからなるべく触らないようにしてて……ーーお菓子は……一口で食べれば絶対にこぼさないから……」

　リアーヌの答えにビアンカは再び大きなため息を吐きながらリアーヌにチラリと視線を送った。

「……念のために聞くけど、それってボスハウト家の教えなのかしら？」
「ーーその、だって……出来ないと罰があるから……ーー目を盗んで口に放り込んでた……」

（お茶会のお菓子ってどれも小ちゃめだったし……ーーそもそも私ってば、ご褒美もらえなかったのに、罰だけはしっかり受けさせられてたとか、めっちゃ不幸……）

「……そう」
「……今は、よくないことをしたんだなってちゃんと理解してるんで、その蔑さげすむような視線はやめていただけると……私、ご褒美だと思えない側の人間だから……」
「ーーハッキリ言うけど」

　ビアンカはモゴモゴと喋べるリアーヌの言葉を遮るように、座った瞳でキッパリと言い放った。

「……どうぞ」
「次もこんな失態を犯すようでしたら、友人からただの知り合いに格下げしますわよ」
「なっ⁉︎　や、やだあぁぁぁぁっ　見捨てないでぇぇぇっ！」

　隣に座るビアンカの腕に縋りつきながらリアーヌは訴えたが、ビアンカは鬱陶うっとうしそうにリアーヌの腕を振り払って口を開く。

「イヤよ。　あんな食べ方をする人と友人だなんて、私の名誉に関わりますもの」
「ーー勉強する！　もう誤魔化そうとなんかしないからっ‼︎」

　ツンッとそっぽを向いたビアンカに、リアーヌは再度縋りつきながら言った。
　そんなリアーヌの態度に呆れたような顔つきになるビアンカ。

「……通常、そう思うのは受験前でしてよ……」
「そうですね……？」

　ため息混じりに紡がれたビアンカの正論に、リアーヌは大きく肩を落として撃沈した。

（ーーなんとかしなくちゃ！　この上さらにボッチな学園生活とか灰色すぎる‼︎）

　リアーヌは膝の上に置いていた手をぎゅっと握り締めそう決意すると、グッと背筋を伸ばして気合いを入れ直した。

　ーーそんな時だった。