成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ふいぃぃぃぃ……」

 最後のページをコピーし終わったリアーヌは大きく息をつきながら、椅子の背もたれに倒れ込むように寄りかかった。

「ーーお止めなさい。 はしたない」

 ビアンカの言葉に、すぐさま背筋を伸ばして座り直した。

「ーーなかなかに自由なお方のようで……」

 フィリップは動揺したようにそう呟き、そんなフィリップに小さく鼻を鳴らしたゼクスは、ニコリと愛想よく笑ってリアーヌに話しかけた。

「急がしちゃってごめんねー? 疲れちゃったよね⁇ あっ! 帰りうちの馬車に乗ってく?」
「え……いや、そのまで疲れてはいないので……」

 急なゼクスの誘いに、リアーヌは困惑していることを隠そうともせずに答えた。

「ーー……そう?」

 リアーヌの答えを聞き目を軽く見開いたゼクスは、スッと目を細めながら探るように首を傾げた。

「は、い……?」

 疑問符を頭の周りにたくさん浮かべ、キョドキョドと視線を彷徨わせながらも小さく頷くリアーヌ。

(え、なに⁉︎ なんでそんな「ふーん……?」みたいな反応なの⁉︎ そもそもうちだって迎えの馬車くらい来ますけど⁉︎ ーーまさか、このレベルのイケメンは、こんな些細なお誘いも断られた経験が無かったりするの⁉︎ あれ? 私ってば「おもしれー女」認定されちゃう⁉︎ まさかの⁇)

 リアーヌが期待に胸を膨らませてゼクスを伺い見ると、口角だけを引き上げた、目が笑っていない笑顔を浮かべたゼクスが細く長くためいきをついているところだったーー

(あ、こりゃダメだわ。 どっちかっていうと「ありえねー……無し寄りの無しっしょ……」の顔だわー)

「ーー……リアーヌ嬢が本当にまだ平気なのであれば、今日の放課後にでも僕のサロンに招待したいな。 ーー友人たちにも紹介させていただくよ?」

 フィリップがリアーヌを見つめ、しかしゼクスに聞かせるかのように、勝ち誇った顔で言った。

「あ、今そういうのお腹いっぱいなんでーーいだいっ⁉︎」

 フィリップの提案を聞いたリアーヌはほぼ脳死で本心を口にしてしまい、向かいの席に座っていたビアンカに思い切り足を踏まれ、強制的な沈黙を要求された。
 あまりの痛さに涙を浮かべたリアーヌは避難がましい視線をビアンカに向けたが、その視線の先にあったビアンカの笑顔にキュッと唇を引き結んだ。
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