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「……どうかした?」
契約書の表紙を眺めるばかりで、開こうともしないリアーヌを不審に思ったゼクスが恐る恐るたずねる。
「あ、の……実は……」
リアーヌはゼクスの質問にキョドキョドと視線を揺らして何事かを考えていたが、覚悟を決めるかのようにギュッと一度目をつぶると、大きく息を吸い込み、そのまま一気に言い放った。
「給料じゃなくて礼金に変えてくださいっ‼︎」
「……ーー礼金に、なってると思うけど……?」
リアーヌの声の大きさにビクリと身体を震わせたゼクスは、戸惑った顔つきで首を傾げながらリアーヌの質問に答えた。
「え……?」
「……リアーヌは子爵家のご令嬢だから、そうした方がいいと思って、ちゃんとそういう風に書いてもらったよ? 確認、してみて……⁇」
ゼクスはそう言いながら、視線や仕草でリアーヌに渡した契約書を見るように促した。
「あ、えっと……」と、挙動不審になりながらも、リアーヌはようやく渡された契約書を捲るのだった。
(ーーあ、本当だ。 ちゃんと礼金になってる……ーーえ、ゼクスってば有能すぎか……?)
「ーー神すぎる……ありがとうゼクス様……」
契約書がそのまま使えるならば、ゼクスの期限を損ねることもないと、ホッと息をついたリアーヌは少々のよいしょも込めつつ、前世のノリで、ゼクスに向かい両手を組んで頭を下げるという、この世界でのお祈りのポーズをとって見せた。
「うん。 それも止めようか」
ゼクスはいつもの笑顔を貼り付けることも忘れて、リアーヌの頭を上げさせ組んだ両手を強引に下げさせた。
「あ、違くてですね? 神のように素晴らしい人ですねってことの揶揄でしてーー」
「うん分かったよ。 分かってるから止めようね?」
ゼクスがこの言い回しについて理解できていないのだと察したリアーヌが詳しい説明をし始めたが、その説明にも不穏な単語を聞き取ったゼクスは、リアーヌの言葉を遮り、言い聞かせるようにリアーヌがそれ以上喋ることを止めた。
『ギフト』は神からの贈り物ーー
その考えが当たり前のこの世界では、神は唯一無二の絶対神である。
神以外の者にお祈りのポーズをとり「神である」などと口していたと噂になってしまえば、言ったほうだけでは無く言われたほうも、無傷ではいられないだろう。
そのことが容易に想像できてしまえるほどには、この国での神の地位ーー教会の地位は高かったのだ。
「はぁ……」
日本での感覚のみで会話をしているリアーヌは全く理解せず、少しゼクスを不審に思いつつ、曖昧に頷いていた。
(なんか変な反応……ーーもしかして、自分は女の子に「まるで女神のようだ」とか「君が俺の女神さ」とか甘い言葉かけてるくせに、自分が言われるのは恥ずかしかったり⁉︎ ーー待って? もしかして神とか女神って、そっち系の話にしか使わないのか……⁉︎ これは……やっちまいましたね……?)
独自の考えによって、その思考に至ったリアーヌは、申し訳なさそうに背中を丸め身体を小さくしながら口を開いた。
「ごめんなさいゼクス様……あの、これからは気をつけます……」
反省している様子のリアーヌにゼクスは呆れたようなため息を吐くと、ようやくいつもの笑みを貼り付けて「これからは気をつけようねー?」と、返した。
本質的なことは何も理解していないリアーヌだったが、軽々しく口に出して言ってはいけない言葉である。 と認識している今となっては、問題らしい問題は起こることはないのだろうーー
契約書の表紙を眺めるばかりで、開こうともしないリアーヌを不審に思ったゼクスが恐る恐るたずねる。
「あ、の……実は……」
リアーヌはゼクスの質問にキョドキョドと視線を揺らして何事かを考えていたが、覚悟を決めるかのようにギュッと一度目をつぶると、大きく息を吸い込み、そのまま一気に言い放った。
「給料じゃなくて礼金に変えてくださいっ‼︎」
「……ーー礼金に、なってると思うけど……?」
リアーヌの声の大きさにビクリと身体を震わせたゼクスは、戸惑った顔つきで首を傾げながらリアーヌの質問に答えた。
「え……?」
「……リアーヌは子爵家のご令嬢だから、そうした方がいいと思って、ちゃんとそういう風に書いてもらったよ? 確認、してみて……⁇」
ゼクスはそう言いながら、視線や仕草でリアーヌに渡した契約書を見るように促した。
「あ、えっと……」と、挙動不審になりながらも、リアーヌはようやく渡された契約書を捲るのだった。
(ーーあ、本当だ。 ちゃんと礼金になってる……ーーえ、ゼクスってば有能すぎか……?)
「ーー神すぎる……ありがとうゼクス様……」
契約書がそのまま使えるならば、ゼクスの期限を損ねることもないと、ホッと息をついたリアーヌは少々のよいしょも込めつつ、前世のノリで、ゼクスに向かい両手を組んで頭を下げるという、この世界でのお祈りのポーズをとって見せた。
「うん。 それも止めようか」
ゼクスはいつもの笑顔を貼り付けることも忘れて、リアーヌの頭を上げさせ組んだ両手を強引に下げさせた。
「あ、違くてですね? 神のように素晴らしい人ですねってことの揶揄でしてーー」
「うん分かったよ。 分かってるから止めようね?」
ゼクスがこの言い回しについて理解できていないのだと察したリアーヌが詳しい説明をし始めたが、その説明にも不穏な単語を聞き取ったゼクスは、リアーヌの言葉を遮り、言い聞かせるようにリアーヌがそれ以上喋ることを止めた。
『ギフト』は神からの贈り物ーー
その考えが当たり前のこの世界では、神は唯一無二の絶対神である。
神以外の者にお祈りのポーズをとり「神である」などと口していたと噂になってしまえば、言ったほうだけでは無く言われたほうも、無傷ではいられないだろう。
そのことが容易に想像できてしまえるほどには、この国での神の地位ーー教会の地位は高かったのだ。
「はぁ……」
日本での感覚のみで会話をしているリアーヌは全く理解せず、少しゼクスを不審に思いつつ、曖昧に頷いていた。
(なんか変な反応……ーーもしかして、自分は女の子に「まるで女神のようだ」とか「君が俺の女神さ」とか甘い言葉かけてるくせに、自分が言われるのは恥ずかしかったり⁉︎ ーー待って? もしかして神とか女神って、そっち系の話にしか使わないのか……⁉︎ これは……やっちまいましたね……?)
独自の考えによって、その思考に至ったリアーヌは、申し訳なさそうに背中を丸め身体を小さくしながら口を開いた。
「ごめんなさいゼクス様……あの、これからは気をつけます……」
反省している様子のリアーヌにゼクスは呆れたようなため息を吐くと、ようやくいつもの笑みを貼り付けて「これからは気をつけようねー?」と、返した。
本質的なことは何も理解していないリアーヌだったが、軽々しく口に出して言ってはいけない言葉である。 と認識している今となっては、問題らしい問題は起こることはないのだろうーー
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