【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……ーーギフトを持っているのはボスハウト子爵かな? それともーー?」

 ビアンカの質問の意図を正確に読み取ったフィリップは、そんな馬鹿な……という若干の疑いを含んだ眼差しを笑顔で隠しながら、探るようにリアーヌにたずねる。

「全員ですよ?」
「⁉︎」

 フィリップの顔が驚愕に染まったのは、リアーヌがあっさりと答えたことに対してだったのか、両親共にギフト持ち、という事実に対してだったのかーー

「ーー確かリアーヌ嬢には弟君おとうとぎみがおられたと記憶しておりますが……」

 リアーヌがなぜこんなにも情報をポロポロと吐き出し続けのか、未だに理解に苦しんでいるパトリックだったが、もはや少々ヤケになりつつ次の質問を投げかける。

「あー弟が一番凄い……ですかね? 【身体強化】ってギフトで、力使ってれば超人になれちゃいますよ」
「ーーなる、ほどぉ……?」

 リアーヌの答えにパトリックは頭を抱えたくなる衝動を抑え込みながら相槌を打った。

 リアーヌが子爵家のご令嬢であるならば、その弟であるザームは子爵家の嫡男ーー時期ボスハウト子爵ということになる。
 そんな人物のギフトをその名前、そして効果までをも、なんの対価もなしに聞いてしまった場合に起こる問題など、想像すらつかなかったためだ。

 そしてこの思いは同じ席に着いていたフィリップといえども同じであり、最悪の場合、友人たちのギフトを使い無理矢理に聞き出したーーなどという不名誉な噂が出た場合の対策案すら、かすかに痛みを感じる頭の中で組み立て始めていた。

 ビアンカだけは(どうせ(二人のギフトを教えてもらったんだから、私もお返しに教えよー)程度の考えしか持っていないんでしょうね……)などと考えながら、窓の外に見える青い空を眺めていた。

 ーーそしてそれは正しい認識であった。



「あー……ええと……ーーそうだ、ラルフたちのギフトを見てみませんか?」

 しばらくの間、気まずい沈黙が訪れたお茶会の席ーーその空気を無理矢理に変えようと、パトリックはわざとらしいほどに明るい声で言った。

 少々強引な話題変換に、ビアンカはこれからの話題こそが今回の本題なのだとすぐに察した。

「ギフトを、ですか?」
「ええ、見事なものなんですよ!」

 話を振られたラルフとイザークは、なにかを押し込めるかのようにゴクリとツバを飲み込むと、リアーヌに向かってニコリと笑ってみせる。

「見せていただけるなら……見てみたい、です?」

 リアーヌはラルフの反応やビアンカからの指導が入らないか? を確認するように視線を動かしながら、探るように答えた。

「そこまで大したものではありませんがーーでは……」

 そう言いながらフィリップと目配せをしあったラルフは、リアーヌによく見えるように手のひらを差し出すと、スッと目を細めた。
 するとすぐさまその手のひらの上に小さな氷の粒のようなものが出現した。
 その粒はラルフの手のひらの上でくるくると回りながら大きくなっていきながら形を変えていきーーあっという間に精巧なクリスタル細工の如き輝きを放つ、氷の花がそこに咲いていたのだった。

「うわぁ……綺麗……」
「素晴らしいですわ……」

 目の前に出来上がった氷の花に簡単の声を上げるリアーヌとビアンカ。

「触ってもいいですか?」
「構いませんが濡れてしまいますよ?」
「少しだけ……」

 リアーヌは懇願するような眼差しでラルフにたずねた。
 そんな子供のようなリアーヌの態度に、ラルフは毒気を抜かれたかのようにふっ……と小さく笑うと「どうぞ」と短く答えた。

「おー……ひゃっこい! 本物だ‼︎」
「……ちゃんとした言葉でお話しなさいな」

 ビアンカが少々罰が悪そうにリアーヌの言葉遣いを嗜める。
 氷の花に視線を奪われてしまったビアンカは、リアーヌの言葉を止めることに初めて出遅れたようだった。

「あ……とても冷たいですわ」
「もう……」

 リアーヌたちはそう言い合いながらスクスクと微笑み合うと、再び氷の花に視線を移しじっくりと眺めるのだった。
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