成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 珍しく感情をむき出しにするビアンカに目を丸くしながらも(ここまで気を抜いてくれるってことは、ある程度は信用されてる……ってことじゃなーい?)と考えたリアーヌは、ニヨニヨと歪みそうになる唇をグッと噛み締めながら、手で髪や鼻をいじったり、庭を見るように顔をビアンカはから隠しながら、その隣を歩いて行く。
 しかし自分たちが歩いて行く通路に、少しずつ他の生徒の姿が見えてきたところで、リアーヌは不機嫌オーラ全開のビアンカを少しでもなだめようと、楽しい話題を振った。

「ーーでも、さっきの……ラルフ様? の氷の花綺麗だったねぇー」
「……ベルグング様よ。 許可をもらってないのに勝手に下の名前で呼んではいけないし、そもそも殿方の名前を軽々しく呼ぶのもよろしくはないわ」
「ーーえ、マジ……?」
「……ーー分かりやすく答えるならばよ」

 ビアンカは目をグルリと回しながら、わざと乱れた言葉づかいで答える。
 いちいち指摘していては話が前に進まないと判断したようだ。

(……えっ本当に? ーーだって主人公はルートに入ってない攻略対象者の名前普通に呼んでたけど……ーーしかも呼び捨てで……あれ……? もしかしてあの主人公の評判ってあんまり良くないの……⁇ ーーいや……そもそもこの世界がゲームの世界と全く同じでは無いーー?)

「……確かに、あの花だけは素晴らしかったわね」

 神妙な顔つきで俯いてしまったリアーヌが、自分の指摘で落ち込んでしまったと勘違いしたビアンカは、少しだけ気まずそうにリアーヌの最初の話題に対しての答えを返した。

「ーーえ……あっ、だよね⁉︎」

 この世界の根本について考え込んでいたリアーヌはビアンカの言葉に慌てて同意しながら、その考えを一時停止させる。
 今考えるよりも家でゆっくりと考えた方がいいと判断したようだった。

「いいなぁ……」
「あらコピーを持ってるのに、あちらの方がよろしいの?」
「だって綺麗なのもそうだけど……これからどんどん暑くなるじゃん?」
「……まさか」

 隣を歩くリアーヌの発言にある程度の察しがついてしまったビアンカは少しだけ歩みを遅くしながら、片眉を引き上げてリアーヌの顔を見つめた。

「あの力があったらかき氷食べ放題だし、いつでもどこでも涼みたい放題だよ?」
「思った以上のぶっ飛んだ意見だったわね……教会の関係者に聞かれたら大問題よ……」

 そう言いながらビアンカは急に襲ってきた頭痛に耐えるように片手で額を押さえる。
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