81 / 1,038
81
しおりを挟む
「ーーやぁ、ラッフィナート殿。 ずいぶんと楽しそうですね?」
人気が無いと思っていた廊下のはずが、いきなりかけられた言葉に驚き、パッとそちらを見つめるリアーヌたち。
その視線の先にいたのは……ーーフィリップ・パラディール、その人だった。
「ーーこれは時期パラディール公爵様ではありませんか」
ゼクスはそう言いながら顔を歪ませるかのような笑顔を貼り付けると、その視線から守るように、さりげなくフィリップとリアーヌの間に身体を滑り込ませた。
「どうも。 ーーそういえば午後からの授業で姿を見なかったが……ーーもしかしてサロンで話し込み過ぎてしまったのかな?」
フィリップはニコニコと笑いながらそう言って、最後にチラリとビアンカに視線を投げつけた。
「っ……!」
その視線に、フィリップの不興を買ってしまったのだと理解したビアンカは、その肩をビクリ! と大きく跳ね上げた。
「ーーあははー。 お恥ずかしながらそうなんですよー。 リアーヌ嬢とは契約して間もないですから、少しでも仲良くなろうと頑張っちゃって……ーービアンカ嬢もゴメンね? 無理にサロン貸してもらっちゃってさ。 あ、でも約束通りまたいい本借りてくるからさっ!」
ヘラヘラと笑いながらそう言ったゼクス。
最後の言葉だけは手で口元を隠しながらビアンカに向かい声をひそめたが、その言葉自体はフィリップに聴かせるためのものであった。
ビアンカがサロンを貸したのは、自分が無理を言ったせいと希少な本に釣られてのことーーと、フィリップとビアンカの関係性にヒビが入ることを、なるべく最低限で済むように手助けしたのだ。
その意図に気がついたビアンカは少し目を見開いて驚いた表情を見せたが、すぐにニコリと表情を取り繕うと、ゼクスに向かい口を開いた。
「サロンを貸したのはリアーヌが不安そうにしていたからですわ。 ーー安心できて良かったわね?」
そういうと、ビアンカはリアーヌにとってとても馴染み深い笑顔を浮かべて首をかしげた。
その瞬間、反射的にリアーヌの背筋がスッと伸び、言葉を発していた。
「ーーはい!」
(この笑顔でなにかたずねられたときは「はい」一択! リアーヌちゃんと学習してるよっ!)
そんなリアーヌにビアンカは満足そうに微笑むと、ゼクスを見つめ、フッ……と一瞬悪戯っぽく口元を歪ませると、先程のゼクスをマネるように手で口を隠し、声をひそめる。
「ーーもちろんいい本があれば、いつでもお貸ししましてよ?」
そんなビアンカの言葉に、ゼクスは本心から面白がり、ケラケラと笑い声を上げながら何度も頷いて了承の意思を示した。
人気が無いと思っていた廊下のはずが、いきなりかけられた言葉に驚き、パッとそちらを見つめるリアーヌたち。
その視線の先にいたのは……ーーフィリップ・パラディール、その人だった。
「ーーこれは時期パラディール公爵様ではありませんか」
ゼクスはそう言いながら顔を歪ませるかのような笑顔を貼り付けると、その視線から守るように、さりげなくフィリップとリアーヌの間に身体を滑り込ませた。
「どうも。 ーーそういえば午後からの授業で姿を見なかったが……ーーもしかしてサロンで話し込み過ぎてしまったのかな?」
フィリップはニコニコと笑いながらそう言って、最後にチラリとビアンカに視線を投げつけた。
「っ……!」
その視線に、フィリップの不興を買ってしまったのだと理解したビアンカは、その肩をビクリ! と大きく跳ね上げた。
「ーーあははー。 お恥ずかしながらそうなんですよー。 リアーヌ嬢とは契約して間もないですから、少しでも仲良くなろうと頑張っちゃって……ーービアンカ嬢もゴメンね? 無理にサロン貸してもらっちゃってさ。 あ、でも約束通りまたいい本借りてくるからさっ!」
ヘラヘラと笑いながらそう言ったゼクス。
最後の言葉だけは手で口元を隠しながらビアンカに向かい声をひそめたが、その言葉自体はフィリップに聴かせるためのものであった。
ビアンカがサロンを貸したのは、自分が無理を言ったせいと希少な本に釣られてのことーーと、フィリップとビアンカの関係性にヒビが入ることを、なるべく最低限で済むように手助けしたのだ。
その意図に気がついたビアンカは少し目を見開いて驚いた表情を見せたが、すぐにニコリと表情を取り繕うと、ゼクスに向かい口を開いた。
「サロンを貸したのはリアーヌが不安そうにしていたからですわ。 ーー安心できて良かったわね?」
そういうと、ビアンカはリアーヌにとってとても馴染み深い笑顔を浮かべて首をかしげた。
その瞬間、反射的にリアーヌの背筋がスッと伸び、言葉を発していた。
「ーーはい!」
(この笑顔でなにかたずねられたときは「はい」一択! リアーヌちゃんと学習してるよっ!)
そんなリアーヌにビアンカは満足そうに微笑むと、ゼクスを見つめ、フッ……と一瞬悪戯っぽく口元を歪ませると、先程のゼクスをマネるように手で口を隠し、声をひそめる。
「ーーもちろんいい本があれば、いつでもお貸ししましてよ?」
そんなビアンカの言葉に、ゼクスは本心から面白がり、ケラケラと笑い声を上げながら何度も頷いて了承の意思を示した。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
315
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる