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そんな会話をした日の放課後。
ゼクスが叙爵したというのは事実であるという説明を本人から受けたリアーヌは、父ーーボスハウト子爵にきちんと挨拶をしたいというゼクスの申し出を受け、数日後夕食に招くことを約束して別れたーー
そして夕食会当日ーー
なにごともなく、挨拶を済ませ、食事を食べ終えたリアーヌたちは、食後のお茶を楽しみつつ、比較的緩く和やかな時間を、家族全員が楽しんでいたーー
のだったが……
ゼクスが発した言葉により、その場の空気が一瞬にして凍りついたのだったーー
「これを機に家と家の繋がりも強くしていければ、と……ーーもちろんリアーヌ嬢にはすでに了承を受けております」
その言葉にヒュッと息を呑む、母のリエンヌや使用人たち。
父のサージュは「あー……?」と言いつつゼクスを睨むように真っ直ぐに見つめ、その後ろに控えるヴァルムはギリリッと音が聞こえるほどに歯を噛みしめ手を握り込んでいた。
この部屋の中で、この空気に気がついていないのは弟であるザームだけだった。
一人黙々と、お茶請けのお菓子を口に入れ続けている。
(……あれ? 家と家の繋がりを強くって……ーープロポーズってか、うちのとそちらの子を結婚させて、末永く仲良くしましょうねーって意味の言葉だった気が……⁇ ーー業務提携しませんかー? 的な意味合いも含まれてるのかな……⁇)
「ーーえ、うちとラッフィナート商会が業務提携⁇」
思わず口走ってしまったリアーヌに、ゼクスは少し驚いた顔を見せてからニコリと笑って「いや、そんな話してなかったでしょ?」と、猫撫で声を出した。
「ーーなさったのでしょうか?」
困惑したままのリアーヌがなにかを答える前に、ヴァルムが静かにリアーヌにたずね返した。
「ーー業務提携……ですか?」
声をかけられたタイミング的にその話題だろうと聞き返すと、ヴァルムの左の眉だけがゆっくりと引き上がっていき、唇は真一文字に引き結ばれた。
(あ、これ違うやつだな……?)
「ーー婚約の了承をなさいましたか?」
「えっ婚約⁉︎」
(ーーつまり、もしかしなくても、さっきのは婚約の打診⁉︎ ……え、待って? ゼクス様ついさっき、私は了承したって言ってなかった⁉︎)
大きく目を見開いたリアーヌはバッと身体ごとゼクスの方に振り返るが、ゼクスはなにを考えているのか底が見えない、心底胡散臭い微笑みを浮かべ続けるだけだった。
そんなリアーヌの態度に、これには裏があると確信したヴァルムは、もう一度リアーヌに確認を取った。
「ーーなさった記憶が無いのですね?」
「無いですよ!」
ヴァルムの質問にリアーヌは首を大きく横に振って答えるが、大した反論をする前にすぐさまクスクスと笑い出したゼクスによって、その言葉を止められた。
「やだなぁー。 忘れちゃったのー?」
ゼクスが叙爵したというのは事実であるという説明を本人から受けたリアーヌは、父ーーボスハウト子爵にきちんと挨拶をしたいというゼクスの申し出を受け、数日後夕食に招くことを約束して別れたーー
そして夕食会当日ーー
なにごともなく、挨拶を済ませ、食事を食べ終えたリアーヌたちは、食後のお茶を楽しみつつ、比較的緩く和やかな時間を、家族全員が楽しんでいたーー
のだったが……
ゼクスが発した言葉により、その場の空気が一瞬にして凍りついたのだったーー
「これを機に家と家の繋がりも強くしていければ、と……ーーもちろんリアーヌ嬢にはすでに了承を受けております」
その言葉にヒュッと息を呑む、母のリエンヌや使用人たち。
父のサージュは「あー……?」と言いつつゼクスを睨むように真っ直ぐに見つめ、その後ろに控えるヴァルムはギリリッと音が聞こえるほどに歯を噛みしめ手を握り込んでいた。
この部屋の中で、この空気に気がついていないのは弟であるザームだけだった。
一人黙々と、お茶請けのお菓子を口に入れ続けている。
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「ーーえ、うちとラッフィナート商会が業務提携⁇」
思わず口走ってしまったリアーヌに、ゼクスは少し驚いた顔を見せてからニコリと笑って「いや、そんな話してなかったでしょ?」と、猫撫で声を出した。
「ーーなさったのでしょうか?」
困惑したままのリアーヌがなにかを答える前に、ヴァルムが静かにリアーヌにたずね返した。
「ーー業務提携……ですか?」
声をかけられたタイミング的にその話題だろうと聞き返すと、ヴァルムの左の眉だけがゆっくりと引き上がっていき、唇は真一文字に引き結ばれた。
(あ、これ違うやつだな……?)
「ーー婚約の了承をなさいましたか?」
「えっ婚約⁉︎」
(ーーつまり、もしかしなくても、さっきのは婚約の打診⁉︎ ……え、待って? ゼクス様ついさっき、私は了承したって言ってなかった⁉︎)
大きく目を見開いたリアーヌはバッと身体ごとゼクスの方に振り返るが、ゼクスはなにを考えているのか底が見えない、心底胡散臭い微笑みを浮かべ続けるだけだった。
そんなリアーヌの態度に、これには裏があると確信したヴァルムは、もう一度リアーヌに確認を取った。
「ーーなさった記憶が無いのですね?」
「無いですよ!」
ヴァルムの質問にリアーヌは首を大きく横に振って答えるが、大した反論をする前にすぐさまクスクスと笑い出したゼクスによって、その言葉を止められた。
「やだなぁー。 忘れちゃったのー?」
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