成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 ハハハ……と乾いた笑いを漏らすしかないゼクスに、ヴァルムがどことなく楽しそうな空気を纏いつつズイッと近付いた。

「どうなのです?」
「ハハ……ーーあー……話で聞いてたより勝負強いですねー……マジでうちとの縁、強固にしましょうね?」

 ヘラリと愛想笑いを浮かべたゼクスは、ご機嫌を取るようにいまだに鋭い視線を自分に向け続ける子爵をヨイショしてみせた。

「ーーどうぞ、誓いの言葉を」

 はっきりとその口に笑みを浮かべたヴァルムがさらに近付きゼクスに迫った。
 そんなヴァルムとサージュからの圧に、愛想笑いとヨイショだけでは逃げられられないと諦めたのか、ゼクスはおおきなため息をつきながらガックリとその肩を落とした。

「ーーはぁ……正直な所、陛下がなりふり構わず強引に手に入れようとするなら、きっと無理だろうな、とは……ーーたださっきも説明しましたが“今ならば”そうなる確率は低いと考えます」
「……ん? 姉ちゃんを守るかどうかの話じゃねぇの⁇」

 ゼクスの言葉にザームが首を傾げつつ口を挟む。
 これは嫌味でもなんでもなく、ザームはただ純粋に疑問に思ったことを口にしただけだった。
 ザームの中では「誓え」と言われたならば、その答えは「誓う」か「誓わない」かの二択でしかなかったのだ。

 そしてゼクスとしても、それは十分に理解した上で、自分の考えをより正確に伝えるために言葉を尽くすつもりだったのだ。
 ーー結果としては、将来の義弟に不信感を与えることになってしまったが……

「あー……」

 ゼクスはザームの言葉に答えるべきか、それとも自分の言葉を最後まで伝えるのが先か、ほんの少しの時間頭を悩ませた。
 そしてザームの誤解を解くため口を開こうとした時だったーー

「……話の途中で茶々入れるの良くないよ?」

 そう言ってリアーヌがザームを諌めたのだ。

「茶々じゃねーじゃん。 誓うのか誓わないのかって話だろ?」
「そうだけど、貴族ってもっとずっとめんどくさいのー」

 リアーヌの優しさに心がほんわかと暖かくなって居たゼクスだったが、続けられたリアーヌの言葉に(あれ……? 今の話の流れでこの会話はーー俺はめんどくさい男だった……?)と、頬を引き攣らせながら、子爵への話を再開させたた。

「ーーですが、ボスハウト家の皆様……子爵様並びに奥方様、そしてヴァルム殿を始めとした優秀な使用人の方々の助力を借りられるのであれば、例え陛下を相手にしても守り抜く確率はさらに高まるかと……」

 ゼクスはそう言うと、胸と腰に手を添える正式な挨拶をして見せるのだった。
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