成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 そんなゼクスの言葉を聞いたリアーヌは、ザームの学園生活を想像して、むぅ……と顔を曇らせる。

「……リアーヌ嬢?」

 急に大人しくなってしまったリアーヌを疑問に思ったゼクスはそう声をかけながらリアーヌの顔を覗き込む。
 ゼクスと視線があったリアーヌは少し言いにくそうに鼻をいじると、唇を尖らせながらボソリと、呟いた。

「ーーいきなりそんなに作られると、負けた気になってしまうので……ちょっと……」

 そう言ったリアーヌの顔つきがあまりにも子供染みていたことと、つい先程までは弟に友人が出来るのかどうかを親身になって心配していた姿とのギャップに、ゼクスは再びテーブルに肘をつき身体を震わせることになったのだった。

 そんなゼクスの態度が面白いわけもなく、リアーヌはキュッと口をすぼめて顔中で不機嫌さを表現していた。

 やがて身体の震えが治まってきたゼクスはリアーヌの態度に慌てて、追加のスイーツや、家族への土産としてチョコレートの詰め合わせの注文をしてリアーヌのご機嫌を伺った。
 そんなゼクスに(なんて太っ腹! そっか……金持ちとのデートって二度美味しいんだ……)と輝く瞳を向けるリアーヌ。

 ーー好きなもので釣って、婚約者との仲を深めようとしたゼクスの作戦は、見事に功を奏したようだった。

 帰り際の馬車の中。
 甘いものでお腹を満たし、隣の席には沢山のチョコレートが詰められた美しい木箱を眺めては、ホックホクの笑顔を浮かべているリアーヌ。
 よほど満足しているらしく、ゼクスからの「婚約者になったんだし“リアーヌ”って呼び捨てでもいいかな?」という提案に、あっさり「いいですよー」と、返してしまうほどには大満足な初デートだったようだ。



 その日の夜。
 リアーヌは自分の部屋でベッドの中で昼間に食べたフォンダンショコラの素晴らしさに思いを馳せていた。
 そして、ふと思い出す。

「ーーあれ? ゼクスの子供の頃の友達の話って、イベント会話だったような……?」

 そう呟いたリアーヌは必死に頭を回転させて、記憶の中にある情報をかき集め始めた。

(多分、最初の好感度アップで出現するイベントだったハズ……? ーー正直最初の方のデートなんて甘味成分、激低だから回収できるスチル以外、うろ覚えなんですけど……? どの場所の選択肢を選べはいいのか? だけは覚えてるけどーーそれがどんな質問で、主人公にどんな答えを選択させていたのかなんて覚えてないよ……選択肢選ぶのなんか作業でしかなかったもんなぁ……ーーえっ? ってことはつまり……)

「ーー私ってばイベント発生させちゃったの……?」
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