【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ーーもちろん結婚の時期についても、陛下にはすでにお許しをいただいているんですよ?」

 動揺したゼクスは、本来ならばギリギリまで伏せておくと父親に言い含められていた情報をいとも簡単に吐露してしまう。
 ーーしかし、その表情からは後悔も焦りも読み取れず……
 そこにあるのは、商人が客や取引先との駆け引きを始める前のような、ギラギラとしたなにかを腹の底に押し隠しているかのような、独特の顔つきだった。

「ーーただ……」

 先程のゼクスの言葉に視線を交わしあっていた四人は、続けられたこの言葉に再びゼクスを見つめる。
 しかしゼクスは言葉を濁すだけで言葉を続けようとはしなかった。

 ーーその姿を見るものが見ていれば『さながら釣りを楽しむ釣り人のようである』と称していただろう。

「……ただーー?」

 言葉が続かないことにじれたフィリップが、短く繰り返してゼクスに続きを話すように促す。

 どうやら釣り人の持つ釣り竿に、魚が食いついたようだ。

 ゼクスはニヤけそうになる頬を叱咤して、どうにか真顔を貼り付け続けた。
 そして勿体ぶるようにゆっくりとリアーヌのほうへと視線を移すと、にっこりと微笑見ながら口を開いた。

「しばらくは……ーー恋人同士の時間を楽しむんだもんねー?」
「ーーえ?」

 この部屋にいる誰よりも先に、誰よりもポカン……とした表情を浮かべるリアーヌ。

(そんな話は初耳でございますが……? ーーコイビト ドウシノ ジカン、って私が今想像してるのと同一どういつの存在ですか……?)

 誰よりも早く反応したリアーヌにクスリと笑ったゼクスは、素早く視線を走らせて未だにポカン……と口を半開きにしているフィリップたちを眺め、その笑みを深くした。

 ゼクスがフィリップたちに仕掛けたことは、単純で小さな復讐だ。

 今回のお茶会はゼクスから願い出たことであり、それに応じる形で実現したものだ。
 つまり、どれほど理不尽な目に遭わされようとも目的を達成するまでは耐えるしか無い。
 フィリップがここぞとばかりに攻撃してくるのは、それを正しく理解しているせいだった。

 しかし、耐えなければいけないと理解はしていても、腹が立つことは腹が立ち、ストレスだって溜まっていくーー
 ならば、少々からかって溜飲を下げる程度のぐらいしなくては心の健康に悪い。
 だからこそゼクスは仕掛けたのだ。
 幸せな恋人同士のようなことを言い合う自分達に、苦虫を噛んだように顔を歪める四人ーーフィリップの顔が見たくて。
 そんな、ほんの少しの復讐に楽しみを見出さなくてはやっていられないほど、このお茶会はゼクスの心をすり減らしていた。

(ーー言い返せない、やり返せないってのがなぁ……ーーそれが分かってるからコイツの性格も極悪だし……ーーお前が今日のことを忘れても俺は一生忘れてやらねぇからな……その時は、今みたいに間抜まぬづらを披露する間も無く絶望させてやるからな……‼︎)
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