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「なのに税金は五割……?」
「……リアーヌ?」
うつむいて、ぶつぶつと呟きながら考え込んでいるリアーヌに、不穏なものを感じ取ったゼクスは、その注意を引こうとそっと声をかけた。
予想通り暴走してしまうようなら、その前になんとしても彼女の考えを知り、なんとしても止まって欲しかった。
ーー彼女が一人で考え一人で行動すると、多くの場合において混乱が生じるーーそうビアンカから学んでいたからなのかもしれない。
しかしリアーヌはそんなゼクスの声など耳に入らないほどに集中して考え込んでいたわけだがーー
(ーーだって、毎日毎日一生懸命働いてるのに、領主ってだけで給料の半分を持ってっちゃうわけでしょ? しかも余計なものまで買わされてさぁ……ーーうちは給料の中抜きはあったけど、税金自体は三割だった。 それだって父さんも母さんも一日中働いてた。 なのに私がバイトでもしない限り、私たち姉弟の口には甘いお菓子が入ることなんでそうそう無い生活だったわけで……ーーそれなのにここの人たちは税金五割で余計なものまで買わされて……?)
「リアーヌ? ちょっと話聞かせてもらっても⁇」
愛想笑いを浮かべながら必死に話しかけてくるゼクスに、据わった目を向けてリアーヌは口を開いた。
「ーーゼクス様」
そんな態度のリアーヌに、嫌な予感をヒシヒシと感じたゼクスは慌てて話しかけようとするが、ゼクスがなにかを口にする前にリアーヌが短い言葉を発した。
「全カットで」
「ーーんー?」
その短い言葉の意味をゼクスは正しく理解してしまったが、そうすることを拒絶したいゼクスは咄嗟にその言葉の意味が分からないふりをしてしまった。
「税金です。 全カットでお願いします」
リアーヌのその言葉にこの場に集まっていた村人たちから大きなどよめきの声が上がった。
そしてゼクスは自分が最悪の一手を打ったことを理解して顔中に皺を刻みつけるのだった。
「ーーあのね、リアーヌ……」
「いやダメでしょ取っちゃ」
「気持ちはわかるよ? 俺だって気の毒だとは思う。 でも税金が無くてどうやって村を存続させるつもりだ?」
「それでも五割なんて死人が出てもおかしくないレベルですよ」
「……幸いそういった死者は出てないって話だけどねー……?」
大きなため息と共にそう言ったゼクスは机に突っ伏す。
すると前に置かれたクレープのさらに手が当たった。
ゼクスはもう一度大きなため息を吐きながら手を伸ばすと、八つ当たりするかのように乱暴な動作でフォークを突き刺しそれを口に運んだ。
「……リアーヌ?」
うつむいて、ぶつぶつと呟きながら考え込んでいるリアーヌに、不穏なものを感じ取ったゼクスは、その注意を引こうとそっと声をかけた。
予想通り暴走してしまうようなら、その前になんとしても彼女の考えを知り、なんとしても止まって欲しかった。
ーー彼女が一人で考え一人で行動すると、多くの場合において混乱が生じるーーそうビアンカから学んでいたからなのかもしれない。
しかしリアーヌはそんなゼクスの声など耳に入らないほどに集中して考え込んでいたわけだがーー
(ーーだって、毎日毎日一生懸命働いてるのに、領主ってだけで給料の半分を持ってっちゃうわけでしょ? しかも余計なものまで買わされてさぁ……ーーうちは給料の中抜きはあったけど、税金自体は三割だった。 それだって父さんも母さんも一日中働いてた。 なのに私がバイトでもしない限り、私たち姉弟の口には甘いお菓子が入ることなんでそうそう無い生活だったわけで……ーーそれなのにここの人たちは税金五割で余計なものまで買わされて……?)
「リアーヌ? ちょっと話聞かせてもらっても⁇」
愛想笑いを浮かべながら必死に話しかけてくるゼクスに、据わった目を向けてリアーヌは口を開いた。
「ーーゼクス様」
そんな態度のリアーヌに、嫌な予感をヒシヒシと感じたゼクスは慌てて話しかけようとするが、ゼクスがなにかを口にする前にリアーヌが短い言葉を発した。
「全カットで」
「ーーんー?」
その短い言葉の意味をゼクスは正しく理解してしまったが、そうすることを拒絶したいゼクスは咄嗟にその言葉の意味が分からないふりをしてしまった。
「税金です。 全カットでお願いします」
リアーヌのその言葉にこの場に集まっていた村人たちから大きなどよめきの声が上がった。
そしてゼクスは自分が最悪の一手を打ったことを理解して顔中に皺を刻みつけるのだった。
「ーーあのね、リアーヌ……」
「いやダメでしょ取っちゃ」
「気持ちはわかるよ? 俺だって気の毒だとは思う。 でも税金が無くてどうやって村を存続させるつもりだ?」
「それでも五割なんて死人が出てもおかしくないレベルですよ」
「……幸いそういった死者は出てないって話だけどねー……?」
大きなため息と共にそう言ったゼクスは机に突っ伏す。
すると前に置かれたクレープのさらに手が当たった。
ゼクスはもう一度大きなため息を吐きながら手を伸ばすと、八つ当たりするかのように乱暴な動作でフォークを突き刺しそれを口に運んだ。
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