276 / 1,038
276
しおりを挟む
フルーツ農園と薪屋がこの村の主な収入源であり、この二つの経営陣たちがこの村の顔役たちであることをゼクスは知っていた。
そのため、ここ二つが今まで意見を翻し、物納ーー納税自体に反対すれば、今までの話し合いが白紙に帰るということをゼクスは充分に理解していたのだ。
「……物納の話だけではなく、こちらの要望全てをお伝えいたします」
薪屋の代表者と目配せをしたあと、ゼクスに向かって軽く頭を下げながらディーターは言った。
「……答えられるとは限りませんけど、お聞きするだけならば?」
ディーターの言葉に少し眉をひそめたゼクスだったが(本当に要望を全て聞けるなら儲けものか……)と思い直し、唇に弧を描いて話の続きを促した。
「ーー第一に、かかった手間や金に見合うだけの値段で買い取っていただきたいーーもちろん物納に関してもです。 第二に、一部のフルーツをこちらの自由にすることをお認めいただきたい。 それと……加工品にも手を出すことをお許しいただきたい。 私からの要望はこの三点です」
「こっちの要望は一つだ。 俺が納得できる値段で買い上げてくれ」
ディーターの細かな要望の後に続いたのは薪屋の代表者で、こちらの要望は至極分かりやすいものだったが、その言葉にはなんの具体性もなく、ゼクスはにこやかな笑顔の裏で警戒の色を濃くしたのだった。
「……じゃあ先に農園だけどーーおれは構わないと思うけど……リアーヌはどう思う?」
ゼクスはギラリと瞳を輝かせながらリアーヌにたずねる。
(この村で収益を上げようとするなら、この農園は絶対だ。 ーー君だって借金はイヤだろ? いいアイデア期待してるよ⁉︎)
「え、私……? えっと……ーー今の要望って通って然るべき要望だと思うんですけど……?」
急に話を振られたリアーヌは驚き、目を白黒させながらも、感じたことを口にする。
「ーーまぁ……その当然のことが許されなかった人たちだからねぇ……?」
ゼクスは気まずそうに鼻をいじりながら、声をひそめソッと答えた。
「ーー……私、任命責任って少なからずあると思うんですよ、だからやっぱり王さ……」
「ネジの話はもう終わりにするって話になったよね⁉︎」
リアーヌの危険な発言に、ゼクスは慌てて声を張り上げる。
とっさにリアーヌの口を塞ぎそうになった無礼な自分の手を、どうにか気合いで押し押し留め、無理やり愛想笑いを貼り付けている。
「……はぁい」
渋々……という態度を前面に押し出しながら、唇を尖らせるリアーヌの返事に少しの不安を覚えつつも、ゼクスは話を進めるためにディーターに向かって言った。
そのため、ここ二つが今まで意見を翻し、物納ーー納税自体に反対すれば、今までの話し合いが白紙に帰るということをゼクスは充分に理解していたのだ。
「……物納の話だけではなく、こちらの要望全てをお伝えいたします」
薪屋の代表者と目配せをしたあと、ゼクスに向かって軽く頭を下げながらディーターは言った。
「……答えられるとは限りませんけど、お聞きするだけならば?」
ディーターの言葉に少し眉をひそめたゼクスだったが(本当に要望を全て聞けるなら儲けものか……)と思い直し、唇に弧を描いて話の続きを促した。
「ーー第一に、かかった手間や金に見合うだけの値段で買い取っていただきたいーーもちろん物納に関してもです。 第二に、一部のフルーツをこちらの自由にすることをお認めいただきたい。 それと……加工品にも手を出すことをお許しいただきたい。 私からの要望はこの三点です」
「こっちの要望は一つだ。 俺が納得できる値段で買い上げてくれ」
ディーターの細かな要望の後に続いたのは薪屋の代表者で、こちらの要望は至極分かりやすいものだったが、その言葉にはなんの具体性もなく、ゼクスはにこやかな笑顔の裏で警戒の色を濃くしたのだった。
「……じゃあ先に農園だけどーーおれは構わないと思うけど……リアーヌはどう思う?」
ゼクスはギラリと瞳を輝かせながらリアーヌにたずねる。
(この村で収益を上げようとするなら、この農園は絶対だ。 ーー君だって借金はイヤだろ? いいアイデア期待してるよ⁉︎)
「え、私……? えっと……ーー今の要望って通って然るべき要望だと思うんですけど……?」
急に話を振られたリアーヌは驚き、目を白黒させながらも、感じたことを口にする。
「ーーまぁ……その当然のことが許されなかった人たちだからねぇ……?」
ゼクスは気まずそうに鼻をいじりながら、声をひそめソッと答えた。
「ーー……私、任命責任って少なからずあると思うんですよ、だからやっぱり王さ……」
「ネジの話はもう終わりにするって話になったよね⁉︎」
リアーヌの危険な発言に、ゼクスは慌てて声を張り上げる。
とっさにリアーヌの口を塞ぎそうになった無礼な自分の手を、どうにか気合いで押し押し留め、無理やり愛想笑いを貼り付けている。
「……はぁい」
渋々……という態度を前面に押し出しながら、唇を尖らせるリアーヌの返事に少しの不安を覚えつつも、ゼクスは話を進めるためにディーターに向かって言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
315
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる