303 / 1,038
303
しおりを挟む
「ーーその際、生物などは……?」
「ーーハンナ殿もラッフィナート男爵も……及ばすながら私も目を光らせておりましたので……」
「そうですか……」
ヴァルムは心底安心したように、大きく息を吐き出しながら答えた。
「ーーヴァルムの話では本には興味が薄いということだったが……?」
トビアスは言外に「もう少し詳しく話せ」と、にじませながらたずねた。
「どうも、あちらの国に多大なご興味があるご様子でした。 それと……」
と、オリバーはそこで言いにくそうに言葉を濁したが、トビアスからもヴァルムからも続きを促すような目で見つめられ、軽く息をつきながら続きの言葉を口にした。
「ーーこっちのは天使が出しゃばらないから読みやすい、と……」
「ーー天使?」
オリバーの言葉に、トビアスは訝しげに返し、ヴァルムはその言葉に思い当たる節があるのか、苦笑しながらも納得したように数回頷いて見せた。
「どういうことだ?」
話が理解できないトビアスが説明を求めると、ヴァルムは、浮かべた苦笑をそのままに口を開いた。
「ーーお嬢様が当家にやってきた当初は、家に置かれていた恋愛小説にとても興味を示されておりました。 読み書きに不安もなかったので、好きに読んでいただこうとしていたのですがーー……一冊だけ読み終わると、顔をしかめながら他の本を確認し始めーー「どれもこれも天使がうるさい……」そう呟かれてからは、図鑑にしか興味を示されなくなりましたーーどうも話の途中に詩的な表現が混じってしまうのがお嫌いなようです」
「恋愛小説であったならば、それは多かったことでしょうな?」
トビアスも苦笑しながらも納得したように頷いて答えた。
トビアスがそんな態度をとってしまうほどには、この国の本ーー殊更、恋愛小説において、天使の出現率は異常に高かった。
まず、夜の帳を下ろすのは天使の役目でであり、誰かが恋に落ちればその脳内で音楽をかき鳴らす。
嬉しい時は花を咲き乱れさせ、悲しい時は空を曇らせ雨を降らせる。
様々なシーンで悪戯な風を吹かせるのも天使の役目で、最後にキスを交わし合う主人公たちをベールで覆い隠すのも天使の役目なのだ。
ーーつまり日本人の感覚からすると、
話が盛り上がってくると必ずと言って良いほど天使が出しゃばってくることになってしまう。
(天使が気になりすぎて、トキメキもキュンキュンも全く感じないのだが……? ーー読み終わった最初の感想が(天使がウゼェ!)とかいう恋愛小説がこの世に存在してて良いの⁉︎)
これが初めてこの世界の恋愛小説を読んだ時のリアーヌの感想だった。
「ーーハンナ殿もラッフィナート男爵も……及ばすながら私も目を光らせておりましたので……」
「そうですか……」
ヴァルムは心底安心したように、大きく息を吐き出しながら答えた。
「ーーヴァルムの話では本には興味が薄いということだったが……?」
トビアスは言外に「もう少し詳しく話せ」と、にじませながらたずねた。
「どうも、あちらの国に多大なご興味があるご様子でした。 それと……」
と、オリバーはそこで言いにくそうに言葉を濁したが、トビアスからもヴァルムからも続きを促すような目で見つめられ、軽く息をつきながら続きの言葉を口にした。
「ーーこっちのは天使が出しゃばらないから読みやすい、と……」
「ーー天使?」
オリバーの言葉に、トビアスは訝しげに返し、ヴァルムはその言葉に思い当たる節があるのか、苦笑しながらも納得したように数回頷いて見せた。
「どういうことだ?」
話が理解できないトビアスが説明を求めると、ヴァルムは、浮かべた苦笑をそのままに口を開いた。
「ーーお嬢様が当家にやってきた当初は、家に置かれていた恋愛小説にとても興味を示されておりました。 読み書きに不安もなかったので、好きに読んでいただこうとしていたのですがーー……一冊だけ読み終わると、顔をしかめながら他の本を確認し始めーー「どれもこれも天使がうるさい……」そう呟かれてからは、図鑑にしか興味を示されなくなりましたーーどうも話の途中に詩的な表現が混じってしまうのがお嫌いなようです」
「恋愛小説であったならば、それは多かったことでしょうな?」
トビアスも苦笑しながらも納得したように頷いて答えた。
トビアスがそんな態度をとってしまうほどには、この国の本ーー殊更、恋愛小説において、天使の出現率は異常に高かった。
まず、夜の帳を下ろすのは天使の役目でであり、誰かが恋に落ちればその脳内で音楽をかき鳴らす。
嬉しい時は花を咲き乱れさせ、悲しい時は空を曇らせ雨を降らせる。
様々なシーンで悪戯な風を吹かせるのも天使の役目で、最後にキスを交わし合う主人公たちをベールで覆い隠すのも天使の役目なのだ。
ーーつまり日本人の感覚からすると、
話が盛り上がってくると必ずと言って良いほど天使が出しゃばってくることになってしまう。
(天使が気になりすぎて、トキメキもキュンキュンも全く感じないのだが……? ーー読み終わった最初の感想が(天使がウゼェ!)とかいう恋愛小説がこの世に存在してて良いの⁉︎)
これが初めてこの世界の恋愛小説を読んだ時のリアーヌの感想だった。
36
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜
まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。
【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。
三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。
目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。
私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。
ムーンライトノベルズにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
私も異世界に転生してみたい ~令嬢やめて冒険者になります~
こひな
恋愛
巷で溢れる、異世界から召喚された強大な力を持つ聖女の話や、異世界での記憶を持つ令嬢のハッピーエンドが描かれた数々の書物。
…私にもそんな物語のような力があったら…
そんな書物の主人公に憧れる、平々凡々な読書好きな令嬢の奇想天外なお話です。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる