【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ーーその際、生物なまものなどは……?」
「ーーハンナ殿もラッフィナート男爵も……及ばすながら私も目を光らせておりましたので……」
「そうですか……」

 ヴァルムは心底安心したように、大きく息を吐き出しながら答えた。

「ーーヴァルムの話では本には興味が薄いということだったが……?」

 トビアスは言外に「もう少し詳しく話せ」と、にじませながらたずねた。

「どうも、あちらの国に多大なご興味があるご様子でした。 それと……」

 と、オリバーはそこで言いにくそうに言葉を濁したが、トビアスからもヴァルムからも続きを促すような目で見つめられ、軽く息をつきながら続きの言葉を口にした。

「ーーこっちのは天使が出しゃばらないから読みやすい、と……」
「ーー天使?」

 オリバーの言葉に、トビアスは訝しげに返し、ヴァルムはその言葉に思い当たる節があるのか、苦笑しながらも納得したように数回頷いて見せた。

「どういうことだ?」

 話が理解できないトビアスが説明を求めると、ヴァルムは、浮かべた苦笑をそのままに口を開いた。

「ーーお嬢様が当家にやってきた当初は、家に置かれていた恋愛小説にとても興味を示されておりました。 読み書きに不安もなかったので、好きに読んでいただこうとしていたのですがーー……一冊だけ読み終わると、顔をしかめながら他の本を確認し始めーー「どれもこれも天使がうるさい……」そう呟かれてからは、図鑑にしか興味を示されなくなりましたーーどうも話の途中に詩的な表現が混じってしまうのがお嫌いなようです」
「恋愛小説であったならば、それは多かったことでしょうな?」

 トビアスも苦笑しながらも納得したように頷いて答えた。

 トビアスがそんな態度をとってしまうほどには、この国の本ーー殊更、恋愛小説において、天使の出現率は異常に高かった。

 まず、夜のとばりを下ろすのは天使の役目でであり、誰かが恋に落ちればその脳内で音楽をかき鳴らす。
 嬉しい時は花を咲き乱れさせ、悲しい時は空を曇らせ雨を降らせる。
 様々なシーンで悪戯な風を吹かせるのも天使の役目で、最後にキスを交わし合う主人公たちをベールで覆い隠すのも天使の役目なのだ。
 ーーつまり日本人の感覚からすると、
話が盛り上がってくると必ずと言って良いほど天使が出しゃばってくることになってしまう。

(天使が気になりすぎて、トキメキもキュンキュンも全く感じないのだが……? ーー読み終わった最初の感想が(天使がウゼェ!)とかいう恋愛小説がこの世に存在してて良いの⁉︎)

 これが初めてこの世界の恋愛小説を読んだ時のリアーヌの感想だった。
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