310 / 1,038
310
しおりを挟む
◇
ヴァルムが立ち去った後の執事室の扉を、ヴァルムの見送りに出ていたオリバーが再びノックした。
「ーー入れ」
「ヴァルム殿がおかえりになりました」
窓の外に視線を送っていたトビアスは、その言葉にオリバーに視線を移しながら口を開いた。
「そうか。 ……それでお前の見立ては?」
その表情には笑顔の欠片もなく、ただ無表情にオリバーからの報告を待っていた。
ヴァルムの要請により今回の旅にオリバーを同行させたのは、ボスハウト家に恩を売りたいという思惑とは別に、リエンヌやリアーヌ、そしてザームの人となりを確認する意味合いもあった。
ーー殊更、リアーヌに関しては入学当初から問題やトラブルの渦中にあることが多く、王族の一員としての資質があるのかどうか、信頼できる部下に確かめさせたかったのだ。
「ーー立ち振る舞いには難がありすぎるかと……」
「……カーテンに隠れて試験を突破してしまうお嬢様だからな?」
オリバーの言葉に、トビアスはクスリと笑いを漏らしながら答える。
覚えられる頭があるのであれば、今の実力はどうでも良いと思えた。
それよりも肝心なのはその人間性ーーいくら陛下が気に入っていようと、ヴァルムが大切にしていようと、これから先王家に仇となるような人物であるならば、今から対応を考えておかなくてはならないーートビアスはそう考えていた。
「純粋な疑問なんですけど、それって特別な心配りがあったりしたんでしょうか……?」
オリバーは、リアーヌの成績に関して、なんらかの改ざんかあったのか? とたずねていた。
「まさか。 ……しかしその時はすでにリエンヌ様のお顔立ちは知っていたからな、結果次第では心を配っていたやもしれないがーー……行動的でいらっしゃるところはマルガレータ様の血筋やもしれんな?」
トビアスの言葉にオリバーは苦笑を返すと、大きく息を吐きながらしみじみと呟いた。
「ーー本当に突破しちゃったんですねぇ……」
「しかも座学だけで見るならば三位という才女だ」
「なにかの冗談……ーーいや、知識は豊富なのか……」
オリバーはそう呟くと、アゴに手を当てブツブツと独り言を話しながらなにかを考え始めた。
「ーーお前の目から見て、リアーヌ様は王族足りえるか? それとも否か⁇」
トビアスは再び真剣な表情をオリバーに向けると、その答えを静かに待った。
貴き血筋は厳重に保護してゆかねばならない。
例えそれが、公にはならない事実だとしても。
例えそれが、国を捨て、好いた男と駆け落ちするために一芝居打った姫君の孫だとしても。
この国の明るい未来のために、貴き血筋は決して途絶えさせてはならないのだ。
ヴァルムが立ち去った後の執事室の扉を、ヴァルムの見送りに出ていたオリバーが再びノックした。
「ーー入れ」
「ヴァルム殿がおかえりになりました」
窓の外に視線を送っていたトビアスは、その言葉にオリバーに視線を移しながら口を開いた。
「そうか。 ……それでお前の見立ては?」
その表情には笑顔の欠片もなく、ただ無表情にオリバーからの報告を待っていた。
ヴァルムの要請により今回の旅にオリバーを同行させたのは、ボスハウト家に恩を売りたいという思惑とは別に、リエンヌやリアーヌ、そしてザームの人となりを確認する意味合いもあった。
ーー殊更、リアーヌに関しては入学当初から問題やトラブルの渦中にあることが多く、王族の一員としての資質があるのかどうか、信頼できる部下に確かめさせたかったのだ。
「ーー立ち振る舞いには難がありすぎるかと……」
「……カーテンに隠れて試験を突破してしまうお嬢様だからな?」
オリバーの言葉に、トビアスはクスリと笑いを漏らしながら答える。
覚えられる頭があるのであれば、今の実力はどうでも良いと思えた。
それよりも肝心なのはその人間性ーーいくら陛下が気に入っていようと、ヴァルムが大切にしていようと、これから先王家に仇となるような人物であるならば、今から対応を考えておかなくてはならないーートビアスはそう考えていた。
「純粋な疑問なんですけど、それって特別な心配りがあったりしたんでしょうか……?」
オリバーは、リアーヌの成績に関して、なんらかの改ざんかあったのか? とたずねていた。
「まさか。 ……しかしその時はすでにリエンヌ様のお顔立ちは知っていたからな、結果次第では心を配っていたやもしれないがーー……行動的でいらっしゃるところはマルガレータ様の血筋やもしれんな?」
トビアスの言葉にオリバーは苦笑を返すと、大きく息を吐きながらしみじみと呟いた。
「ーー本当に突破しちゃったんですねぇ……」
「しかも座学だけで見るならば三位という才女だ」
「なにかの冗談……ーーいや、知識は豊富なのか……」
オリバーはそう呟くと、アゴに手を当てブツブツと独り言を話しながらなにかを考え始めた。
「ーーお前の目から見て、リアーヌ様は王族足りえるか? それとも否か⁇」
トビアスは再び真剣な表情をオリバーに向けると、その答えを静かに待った。
貴き血筋は厳重に保護してゆかねばならない。
例えそれが、公にはならない事実だとしても。
例えそれが、国を捨て、好いた男と駆け落ちするために一芝居打った姫君の孫だとしても。
この国の明るい未来のために、貴き血筋は決して途絶えさせてはならないのだ。
39
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる