成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 リアーヌは相槌を打ちながらも、その言葉の端々から感じる、パトリックのデートに対する態度のほうに引っ掛かりを覚えていた。

(……どう考えたってとかいう態度の婚約者とのデートなんか楽しく無い気もするけど……ーーでもまぁ、レジアンナがとっても行動的で気が強いってのは身をもって知ってるからなぁ……)

「それに、最近の彼女は少し様子が……」
「……え?」

(その後に続く言葉なんか「おかしくて……」以外ありませんよね……?)

 戸惑うような視線をフィリップに向けると、フィリップは「どうか内密に……」と前置きをしてから事情を説明し始めた。

「突然ーーまるで……舞台女優のようなドレスを好むようになったり、およそ年齢にそぐわないような化粧にしてみたり……」

 リアーヌはフィリップの貴族言葉を脳内で普通の言葉に翻訳していく。

(ーー“舞台女優のようなドレス”を言い淀んだってことは、多分娼婦みたいな胸も背中もドーンと開いてるドレスって意味かな? ……ってことは“年齢にそぐわない化粧”ってのは、ケバい化粧ってことっぽい⁇)

「ーーかと思えば、今度は庶民がやるような行為をしてみたいと言ってみたり……ーー理解に苦しむよ」

 そう言いながらガックリと肩を落とし項垂れてしまうフィリップのつむじを眺めながら、リアーヌはあからさまに動揺していた。

(……え、庶民がやるようなことってなに? 範囲が広すぎるんですけど⁉︎)

 項垂れているフィリップがまだ顔を上げないことを祈りながら隣の大先生に視線を送るが、ビアンカも眉をひそめながら首を横に振って「分からない」と伝える。
 そんなビアンカにギョッと目を剥いたリアーヌは、すがるようにゼクスに視線を移し肩をすくめられ、パトリックやラルフ、イザークに視線を走らせるがスッと視線を外されてしまった。

(全滅とかある⁉︎ お前らお貴族様だろ⁉︎ 私よりもずっと長い間、貴族やって来てるんだろ⁉︎ ……ーーいや、待って? これだけの人数が意味分かんないって言ってるんだったら、今のって隠語とかじゃない? ーーってことは、詳しいことを聞くのって、別にマナー違反じゃない、よね……?)

 そう心を決めたリアーヌは、覚悟を決めーー……しかし足先はビアンカから極力遠ざけながら、伺うようにたずねた。

「あの、庶民のような……というのは……?」
「ーー……その、まともな給仕もいないような場所で食べ物を食べたいと言い張ってみたり、しかもその食べ物を買うために列に並ぶとまで言い始め……挙句の果てには、私に食べさせて欲しいとまで……」

 フィリップは少し言いにくそうにしながらも、大きなため息と共に言葉を吐き出した。
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