成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……もう一声」
「……そもそも私レジアンナがどの派閥に属してるのか知らないんですよねー」
「ーー派閥?」
「気を悪くした時って、ほっといて欲しい派と、ひたすら構って欲しい派がいるじゃないですか?」
「あー……ーー続けて?」

 ゼクスはリアーヌの言わんとしていることの半分も理解出来ていなかったので肯定も否定もできなかったが、とりあえず意見を聞こうと、その話の続きをうながした。

「ほっといてほしい派の中にもちょっとは気にかけて欲しい派や、構うにしても限度があるっていう人もいますし……」
「……ーーちなみにリアーヌはどの派閥なの?」
「私はーー構ってほしい派の全肯定派でしょうか?」

(あ、でもこれって話聞いてくれる人が不機嫌の原因だったら話は変わっちゃうかも……?)

「……奥深い派閥なんだね……?」
「言われてみれば……?」
「ーーこちらの話を進めていただいても?」

 首を傾げあいながら話が脱線し始めた二人に、パトリックが圧をかけながら、にこやかに話しかける。

「あー……っと……?」

 顔を見合わせ気まずげに首をすくめる二人。
 ゼクスは苦笑を浮かべながらリアーヌに視線で話の続きを促す。

(ええと……レジアンナの機嫌を直したいって話なんだから……レジアンナがどこ派閥に属しているかを推測すればいいってことでしょ……?)

「ーーレジアンナは……謝り続けてほしい派……? ーーロマンチックに機嫌をとって欲しい派……?」

 そう言いながら首を傾げるリアーヌの頭の中に、どこかのお屋敷の玄関で、一輪の花を差し出しながらレジアンナに向かい跪いているフィリップの姿が浮かぶ。
 レジアンナはどこか拗ねたようにツンとしているが、頬や耳は赤く色付いていて、どことなく嬉しそうな雰囲気を醸し出している。

(あー……こういう芝居掛かったの好きそー……)

「ロマンチックーーというのは、具体的にどのような……?」

 パトリックはチラリとフィリップの様子を伺いながら、少しでも詳しい話を聞き出そうと動く。

「例えばーー可能であるなら、イブの……深夜とかになってしまってもいいからミストラル降爵家に突撃して「一目でいいから会いたい!」って騒ぎ出すとか……?」

 リアーヌのその発言にその場にいた者全てがーーゼクスまでもがーー眉をひそめ口をつぐんだ。

 常識的に考えてもそんな時間に家を訪ねることはあり得ない。
 そして、貴族には家を訪ねるにも礼儀や作法が存在していた。
 そもそも事前連絡なしで家を訪問することは、家族であってもなかなかやらない行為であり、急を要するような訪問であっても“先触れ”と呼ばれる、使者を三十分前には到着させておくのが最低限のマナーなのだ。
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