476 / 1,038
476
しおりを挟む
「遠慮しねぇでたくさん食えよー?」
「あの……はい……」
(ーー居た堪れないよ! そんな優しさちっとも優しく無いよっ! くぅ……最近、静かにしていると評判だった私の中のモンスターめっ! 今じゃなくて良かったじゃんっ!)
「ーー俺もお腹空いちゃったな? 馬車に長く揺られてると、いつもよりお腹空くの早くなる気がするよねー?」
「……ですね?」
(ーー……そんな話、聞いたことありませんが……? ーーその優しさは確かに嬉しいんだけど、ちょっとほっといて欲しいな、なんて思っちゃったりもしたりして……)
「あふっ……うまっ、はふ……」
「ああもう、丸ごと口に入れたら火傷するって言われただろ?」
たこ焼きを口に入れたまま、はふはふと口を動かすリアーヌに、ゼクスは飲み物を手渡しながら呆れた声を上げる。
しかし結局リアーヌは、そのお茶を飲むことなく口の中のたこ焼きを食べ終わり、ゼクスに向かってキョトンとしながら首を傾げた。
「ーーでもたこ焼きってはふはふ言いながら熱々を食べるのが一番美味しい気がしません?」
「おー嬢ちゃん通だねぇ?」
リアーヌの言葉にケラケラと笑いながら新しい料理を差し出したのは、テオが準備した会場近くで露店を開いていたおばちゃんだった。
「ほれ、これもお食べ」
「ーーイカだ! これイカ焼き?」
「よく知ってるねぇ? ガブっとかぶりつきな」
「分かったぁ!」
「分からないでぇ……」
元気よく答え、出されたばかりのイカ焼きにかぶり付くリアーヌに、ゼクスは頭を抱えながらぼやく。
もっきゅもっきゅと、口の端を汚しながらイカ焼きを咀嚼しているリアーヌの口元を無言で拭うアンナと、苦笑いを浮かべつつも、イカに刺さった串に布を巻き付けリアーヌの手を拭うオリバー。
その心の中では(生で無いのなら大目にみよう……)と、だいぶ広い心で職務に当たっているようだった。
テオが用意した会場の中は、テオが想定していた以上に人が集まり、賑やかになっていた。
最初はテオが用意した者たちがたこ焼きを焼いてリアーヌたちに振る舞っていたのだが、きゃいきゃいと楽しげな声を上げながら、この土地の郷土料理とも呼べるほど浸透している食べ物を食べている女の子に興味を示した者たちが集まり、情報交換をした結果、それがラッフィナート商会の後継とその婚約者だと言うことを知った。
ちょっとでもお近づきになれたならばーーという色気を出し、差し入れを持ち寄った者が一人出たのを皮切りに、これも、それも……と沢山の人々がその店のーーその家、ご自慢の料理を持ち寄り始めた。
そして、そんな料理を美味しい美味しいと、満面の笑みで食べるリアーヌに気を良くした人々が会場に居つき始めーー
いつのまにか宴会会場のようになっていたのだ。
「あの……はい……」
(ーー居た堪れないよ! そんな優しさちっとも優しく無いよっ! くぅ……最近、静かにしていると評判だった私の中のモンスターめっ! 今じゃなくて良かったじゃんっ!)
「ーー俺もお腹空いちゃったな? 馬車に長く揺られてると、いつもよりお腹空くの早くなる気がするよねー?」
「……ですね?」
(ーー……そんな話、聞いたことありませんが……? ーーその優しさは確かに嬉しいんだけど、ちょっとほっといて欲しいな、なんて思っちゃったりもしたりして……)
「あふっ……うまっ、はふ……」
「ああもう、丸ごと口に入れたら火傷するって言われただろ?」
たこ焼きを口に入れたまま、はふはふと口を動かすリアーヌに、ゼクスは飲み物を手渡しながら呆れた声を上げる。
しかし結局リアーヌは、そのお茶を飲むことなく口の中のたこ焼きを食べ終わり、ゼクスに向かってキョトンとしながら首を傾げた。
「ーーでもたこ焼きってはふはふ言いながら熱々を食べるのが一番美味しい気がしません?」
「おー嬢ちゃん通だねぇ?」
リアーヌの言葉にケラケラと笑いながら新しい料理を差し出したのは、テオが準備した会場近くで露店を開いていたおばちゃんだった。
「ほれ、これもお食べ」
「ーーイカだ! これイカ焼き?」
「よく知ってるねぇ? ガブっとかぶりつきな」
「分かったぁ!」
「分からないでぇ……」
元気よく答え、出されたばかりのイカ焼きにかぶり付くリアーヌに、ゼクスは頭を抱えながらぼやく。
もっきゅもっきゅと、口の端を汚しながらイカ焼きを咀嚼しているリアーヌの口元を無言で拭うアンナと、苦笑いを浮かべつつも、イカに刺さった串に布を巻き付けリアーヌの手を拭うオリバー。
その心の中では(生で無いのなら大目にみよう……)と、だいぶ広い心で職務に当たっているようだった。
テオが用意した会場の中は、テオが想定していた以上に人が集まり、賑やかになっていた。
最初はテオが用意した者たちがたこ焼きを焼いてリアーヌたちに振る舞っていたのだが、きゃいきゃいと楽しげな声を上げながら、この土地の郷土料理とも呼べるほど浸透している食べ物を食べている女の子に興味を示した者たちが集まり、情報交換をした結果、それがラッフィナート商会の後継とその婚約者だと言うことを知った。
ちょっとでもお近づきになれたならばーーという色気を出し、差し入れを持ち寄った者が一人出たのを皮切りに、これも、それも……と沢山の人々がその店のーーその家、ご自慢の料理を持ち寄り始めた。
そして、そんな料理を美味しい美味しいと、満面の笑みで食べるリアーヌに気を良くした人々が会場に居つき始めーー
いつのまにか宴会会場のようになっていたのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
315
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる