【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「それとーー従業員に出す食事の調理手伝い、片付け手伝い……ーーうちの倉庫の掃除もやってしまいましょうかね?」

 ディーターの答えに満足そうに頷くゼクス。
 
 薪屋の親方は、ゼクスが多少圧をかけてこようとも、子育て中の女性たちを雇うつもりなどさらさらなかったのだが、今ディーターが言った仕事を女性に手伝ってもらうのは魅力的だと感じていた。

「ーーその斡旋所への依頼ってのは、条件もつけられんですかい?」
「……仕事内容は多岐にわたるだろうと考えているよ?」

 ゼクスは薪屋の親方からの質問に、不思議そうに首を傾げながら答える。

「……若い娘っ子限定って依頼してもいいんで?」

 親方が発した言葉に、その場の空気がギシリッと凍りついた。


「そういうのは……」
「いきなりなにを言い出すんだ⁉︎」

 少しの沈黙の後、いち早く反応を見せたのはゼクスとディーターだった。

 その咎めるような口調に、親方はぶすりと顔を険しくしかめながら反論する。

「人妻だろうと子育てしてようと、若くて小綺麗な娘っ子に料理渡されたり茶の一杯でも注いでもらえば、若ぇのは張り切るんだよ。 ーーもっと言っていいなら未婚の娘っ子がいいんだがな?」

 その言葉に、親方に非難的な視線を向けていた者たちの視線が揺れる。
 それどころか期待がこもった視線をゼクスに向ける者たちまで現れはじめた。

「……そういう斡旋所じゃ無いんですけどねー……?」

 周りの視線が自分なにを求めているのか理解しているゼクスだったが、その要望に応え、リアーヌの思惑とズレてしまうのは避けたかった。
 しかし期待が込められた沢山の視線で見つめられ、困ったように息をつきながら言葉を紡いだ。

「あー……斡旋所を作って、そこに未婚者が登録して、なおかつその人が依頼を引き受けるのなら、未婚の女性が料理作りに行ってくれるんじゃないですかね……?」

 ゼクスの言葉に、集まった者たちは顔を突き合わせながらヒソヒソと言葉を交わし合う。

「登録する奴はいそうか?」
「どうだろうなぁ?」
「ーーお前んトコのはどうなんだよ?」
「ああ……? あんなんでもいいのかよ⁇ おっかあに似て気ぃ強ぇぞ?」
「かまいやしねぇよ。 それに女はちっとぐれぇ気が強ぇほうが、家は安泰なんだ」
「まぁ……うちはおっかぁのおかげで安泰だわな?」
「だろ? 声かけとけよ」
「ーー言ってはみるが……約束はできねぇぞ?」
「ん、分かってる」

 その男性たちの会話に周りの者たちの表情が明るくなる。
 こんな小さな村の話だ。
 あの男に結婚適齢期の娘がいることも、その娘が母親に似て可愛らしい容姿をしていることも、皆きちんと理解していたのためだ。
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