成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

文字の大きさ
上 下
593 / 1,038

593

しおりを挟む
 そんなビアンカの言葉にレジーナを始めとした友人たちも同意するように力強く頷く。

「……うん」

 リアーヌはそう答えると、シャキンッ! と背筋を伸ばした。
 そして少し迷うようにビアンカにたずねる。

「……ずっと見てたらお行儀悪い?」
「……それは、そうねぇ?」

 ビアンカは言いにくそうに頷いた。

「ーー気にはなりますけれどね?」
「……でもこんなことで悪評建てられても……ね?」

 ビアンカと同じように苦笑いを浮かべながら同意する友人たち。
 リアーヌの気持ちもわかるし自分たちも見ていたい……けれど、それをやるには場所も相手も悪い――と、彼女たちも理解していた。

「こう、ふーっと教室全体を見回す感じでそれとなく……」
「やめておきなさい? 貴女にそれが出来るとは思えなくてよ」

 リアーヌの提案を即座に切り捨てたビアンカはそう言いながら肩をすくめる。

「ーーそっすね?」

 その答えとともに脱力したリアーヌは、ガクリと大きく肩を下ろし、シュン……と猫背になって唇を尖らせる。

「まぁリアーヌったら……」

 あまりの態度にレジアンナは目を丸めなて驚き、そしてクスクスと笑い出した。
 ーーそれに釣られるようにその場ににた者たち全員がクスクスと口元を押さえ初めーーこの場をなんとか和ませてくれようとしているのがリアーヌにも理解できた。

(……なんか友達って良いなぁ)

 リアーヌの心がじんわりと暖かくなり、へにょりと照れ臭そうに笑うリアーヌ。
 ーーそんなリアーヌにゼクスが申し訳なさそうに声をかけた。

「リアーヌちょっといいかな?」
「ーーはい?」

 リアーヌは(このメンツで集まってる時に声をかけてくるなんて珍しいな?)と思いながらもゼクスのほうに向き直る。

「ごめんね、盛り上がってたのに……」

 困ったように肩をすくめたゼクスにいち早く言葉を返したのはレジアンナだった。

「まったくですわ? ……すぐに返して下さいませ?」
「もちろんです。 すぐに済ませますので……」

 そう言ってリアーヌに腕を差し出すゼクス。
 略式でもみんなに席を外す時の挨拶しやきゃ……と頭を回転させ始めたリアーヌに、レジアンナがさらに言葉をかける。

「いってらっしゃいな」
「……うん?」

 その言葉に戸惑いながらもゼクスの腕に手を伸ばし立ち上がるリアーヌ。
 このレジアンナの言動を言葉に直すのならば「挨拶なんていいからすぐに行って? ーー負けちゃダメよっ⁉︎」となったのだろう。

 ーーレジアンナや友人たちからは、教室の入り口に立ち、こちらをーーリアーヌを挑戦的に見つめているユリアの姿がハッキリと見えていた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...